2022.08.10
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小規模校で先生方に「ゆとり」を生み出すための校内環境の整備(6)

長期休業を利用して行っている整理整頓(教材点検、教材整理)ですが、担当者だけが頑張っているのではただの「整理整頓好き」になってしまいます。担当者が変わると続かなくなりますし、組織的な取り組みとも言えません。整理整頓の先にたどりつきたいゴール地点について紹介したいと思います。

北海道公立小学校 教諭 深見 智一

整理整頓の先にたどりつくゴールは?

夏休み中に整理整頓された理科室。左側の写真がbeforeで、右側の写真がafterです。

私自身としては、きれいになっていく過程がbefore/afterではっきりと分かって楽しいと思っていますし、たくさんの先生と教材のことや教育観などについてお話ししながら片づけるのも楽しいです。また、片づけ終わった後に周りの先生から感謝の言葉をかけて頂くことで嬉しい気持ちになるということもあり、取り組み自体はとても楽しんで行っています。しかし、整理整頓の先にあるものはもっと大きいのではないかと考えています。そのゴールの先の一つは、教育課程の見直しにつなげていくことだと考えています。

きっかけは、学習環境の改善でしたが…

例えば、学習発表会の劇の道具を整理していく中で、どのように教育課程の見直しにつなげていったのかの一部をご紹介します。きっかけは、教務主任として、学校全体の児童の学習環境を考えたときに、ごちゃごちゃとした環境で学習するのは決してプラスにはならない、だから整理整頓をしましょう、という提案をしたのがはじまりでした。その学校では、校内のいろいろな教室(準備室も含めて)に、何年前、中には何十年も前のものと思われる劇の小道具や大道具、衣装が置かれている状況でした。そこで、長期休業中や授業の空き時間を利用して、私を含む担任外の教員や事務職員、学習支援員やスクールサポートスタッフの協力を得ながら、行っていきました。

整理整頓をしていくなかで、教育課程の見直しにつながる雰囲気づくりを

あるものは使いやすく、有効に活用していくことが大切です。でも、使えるか使えないかの判断が難しいのです…。

不要なものを処分していく中で、「たくさん時間をかけて作ったのに、もったいないですね」「これって、何に使ったのでしょうかね?」「なんか同じようなものが、何回も作られて取っておかれています」などの声が聞かれました。確認しておきたいのは、私は学習発表会の劇の教育的効果を否定しているわけではありません。劇を通して達成したい目標が各学校で設定されており、先生方はそれを達成するためにどのような指導・練習・準備が必要かということを考えて取り組んでいるはずです。しかし、十分に有効活用されていたとは言えない道具類を片づけていくなかで、「そもそも、学習発表会の劇の目的は何だろう?」と改めて考えるに至りました。有効に活用されていない1度きりしか使われなかった道具は、もしかすると、教師が発表の完成度をあげたり、それらしい雰囲気を出したりする「教師の見栄」のようなものが優先されていたのかもしれません。限られた時間を使ってできる発表をするというよりも、「学習発表会で劇をする」ということ自体が目的となっていて、もしかすると子どもの成長、目的の達成は隠れてしまっていたのかもしれないと、自らの実践も振り返る機会となりました。もちろん、「こういう小道具があったほうが、子どもたちはもっとやる気になる」というような良い動機もあると思うのですが、それは目標を達成するのに本当に必要なのか?他の方法はないのか?今の学校や学級、教職員の状況でそれが必要なのか?優先されるべきことなのか?と考えることは大切だと思います。

一通りの確認をした後、スクールサポートスタッフの方にお願いをして、すべての道具を写真に撮り、リストにして頂きました(写真)。A4の用紙に12枚ずつ掲載し、それが20枚近くありました。どれだけあるかを先生方にも知っていただくために、校内で回覧をしたところ、「こんなにあるんだ」「もったいないけど、いつか捨てないといけないね」という声と同時に、「こんなに作らなくてもいいような発表にしないと」「もっとシンプルなスタイルでいいと思う」という声も出て、これはチャンスと思いました。

後日、校務分掌内で検討を行い、次年度以降、学習発表会の演目(劇を含めて)は、学校の年間指導計画に記載されている範囲内(時数、内容)での発表にしましょうという確認をしました。あわせて、大道具や小道具、バック絵の作成などは通常の業務に支障のない程度に留めましょうという確認も行いました。発表の見直しをするためには、年度ごとに各教科の年間指導計画の見直し作業を確実に行うことも必要になります。どの学習を学習発表会の発表にすると良いのか、どれくらいの時間がかかったのかを次年度に引き継げるようにしておくことが、学習した成果を発表するという学習発表会本来の趣旨に沿うからです。そのためには、年度末に各学年で検討するための時間を確保する(担保する)ことも求められます。そして、それを学校全体で調整する教育課程編成委員会(休眠状態でした)も実施することにしました。それらも含めて、教育課程を担当する教務主任として予定を調整し、実行に移していくことができました。

あるものは整理整頓で使いやすく→処分する目安の期間を設定

長期的な見直しと同時に、今あるものを有効に活用できるように整えていくことも重要です。今回の事例では、校内のいろいろな教室にあった学習発表会(学芸会)の劇に関わる小道具や衣装などのグッズを一つの特別教室にまとめました。学級数減で空き教室も比較的ある学校だったので、教室も棚にもゆとりがありました。本来の学習に支障のない範囲で、空き教室の棚を利用し、種類ごとに分けて棚に表示をつけました。ただし、3年を目途にして使用されていないと判断したものは捨てましょう、という提案も同時に行いました。見やすく置かれていても使われていないということは、学校にとっては必要ないという考えをもとにしています。別の教室にも、たくさんストックのあったバック絵を写真付きで表示して保管するようにしました。プロジェクタの性能の向上で使用頻度が減っていくことと思いますが、こちらも保存期間の目安を設定しました。あるものは効果的に活用して先生方の負担を減らせるように、それと同時に、長期的に教育課程の見直しも行っていく「ツートラック」路線がうまくいった事例だと考えています。

一方で、整理整頓をして失敗し、先生方にご迷惑をおかけしたこともたくさんありました。次回、そのエピソードをご紹介します。

深見 智一(ふかみ ともかず)

北海道公立小学校 教諭


書籍等で取り上げられることがあまり多くない1学年につき1学級の単学級の学級経営、複式学級の学級経営について、これまでの実践や量的調査の結果をもとに、効果的な実践例を発信していきたいと考えています。

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