2022.08.31
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小規模校で先生方に「ゆとり」を生み出すための校内環境の整備 (7)

校内環境の整備が、小規模校でも先生方に「ゆとり」を生み出していける方法の一つだと思い、取り組みを進めてきました。この夏、印刷室や教材室などの整備にも取り組みましたが、先生方にご迷惑をおかけすることも多々ありました。そのいくつかをご紹介します。

北海道公立小学校 教諭 深見 智一

気を付けてはいるものの…「あれは、どこにいきましたか?」

(左)整理整頓前(中)整理整頓後(右)別教室へ移動した裁断機

「なになにがありません。どこに行きましたか?」と聞かれることがあります。せっかく整理整頓をするのですから、より使いやすくするために、限られたスペースに使用頻度の高いものを効率よく配置するのが重要です。
配置する場所を決めるにあたっては、これを使ったら次はこれをこれも使うだろうと動線も含めて考えていくことになります。そうすると、使用頻度の低いものは、どうしても端に追いやられたり、別の部屋に移動すると言うこともあります。その結果として、冒頭のような質問を受けることがあります。

一例として、印刷室に置いてあった電動裁断機をどうするかのエピソードをご紹介します。一昔前は、学年が終わるごとに学級文集や学級通信集等が発行され、それを帳合するための機械や、端を揃えるための裁断機がよく使われました。
しかし、現在の学校文化ではなかなかそのような機会もなくなってきました。いろいろな事情があるかと思いますが、個人情報の問題や教師の働き方改革、用紙の削減などのコスト的な問題などもあるのでしょう。
本校の印刷室にあった電動裁断機も、使用頻度が低い割には、印刷室の使い勝手の良い場所に置いてありました。そこで、事務職員や他の先生と相談して、段ボール箱にしまっておくと言うことにしました。

しかし、後になって、意外な使われ方をしているがということが分かりました。「電動裁断機、どこに行ったんですか?」と聞かれてきた先生がいらっしゃったのです。こういうことになったんですとお話ししました。
こちらから、「先生、ちなみにどういう時に使われていたんですか?」とお尋ねると、本を裁断するのに使われているということでした。

その先生は、教材研究に使用する図書(私費で購入したもの)を裁断して、スキャナでPDF化しているということが分かりました。そうすることで、タブレット端末やスマホでいつでも見ることができるし、保管場所も必要がないので使いやすいそうです。
担当者の間では、「今時、こんなもの使われないだろう」と思っていたものでしたが、逆に「今風の使われ方」をしていると言うことを聞いて驚きました。その先生も、そんなに使っているわけじゃないと気を遣ってくださいましたが、児童が立ち入ることが少ない教室に置いておくことになりました。

処分する判断が難しいもの

私も学級担任をしていて時折あるのですが、特別教室で個人持ちの教材(私費で準備した教材など)を使用して片付けをし忘れてしまうことがあります。
その後、その教室を使用した別の先生が、気を利かせてくださって、私物をその教室の棚などにしまって片付けてくださいますが、当の本人はすっかり忘れています…。そうすると、教材備品のシールが付いていないグッズがいつの間にか増えてしまっていると言うことがあります。
そういったものがあるときに、整理整頓する側としては、処分していいものなのかどうなのか大変判断が難しいところです。1人で判断する事は色々とリスクが伴いますので、一緒に担当している先生と相談して、「その学校で最も長く勤務しておられる先生に聞いて、ご事情がわからなければ処分する」と言う規準です。
学校に寄贈された品でも、寄贈のシールや教材備品のシールがついていないと、私物なのか寄贈の品なのか全くわからず、処分に困ることがあるので、日頃から、誰の何のものなかが分かるようにしておくのは大切なことです。

また、教室が狭く、個人の教員個人の荷物を置くスペースが狭い場合もあります。教材室などに空きスペースを作っておくことによって、そういった荷物を置けるようにしました。学級担任をもたない専科の先生や時間講師の先生も使うことができるようにしています。
なお、使用する際は、所有者がはっきりとわかるように表示をして頂くこと、そのスペースを使用する際には教務部の担当に伝えると言う仕組みにもしています。

丁寧な説明が大切!

以前の記事でも、移動後の説明が大事と言うお話をさせていただきましたが、説明を十分に行っているつもりでも、整理整頓が終わってからしばらくの間は、先ほどご紹介したような話が職員室で行き交うことがあります。
周知するための連絡をしたり、プリントを作成して配布したり、一緒にその教室に行ってどのように移動したかを説明したりするようにはしています。時間があるときには、先生たちと話し合いながらどこに移動すると言うことを考えることもありますが、事後報告になることの方が多くあります。

整理整頓の実施前に、事前にある程度の了解をいただけていると思いますので、大きな混乱になる事はありませんが、できるだけそうならないように丁寧な説明を心がけていきたいと思っています。
ただ、整理整頓を進めていくことで、先生方にとっても使いやすくなっていると言うのをなんとなくお感じいただけているので、大きな混乱にはなっていないのだとも思います。

次回は、先生方からのアンケートコメントをもとに、小規模校での校内環境の整備がどのように先生方の「ゆとり」につながっているかをご紹介します。

深見 智一(ふかみ ともかず)

北海道公立小学校 教諭


書籍等で取り上げられることがあまり多くない1学年につき1学級の単学級の学級経営、複式学級の学級経営について、これまでの実践や量的調査の結果をもとに、効果的な実践例を発信していきたいと考えています。

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