小規模校で先生方に「ゆとり」を生み出すための校内環境の整備(3)
「とりあえず」始めた理科室の環境整備でしたが、自分の部屋の片づけとは性質的には大きく異なります。公立学校は公共施設であり、学校組織の中で行われる教室環境の整備であることから、慎重さが求められる部分もあります。思い切ってやるためには、そのための段取りも重要と言えます。理科室の環境整備をすすめるにあたって気を付けたポイントをご紹介します。
北海道公立小学校 教諭 深見 智一
「どこにあるか分からない!」から「すぐに見つかる」理科室に
理科室の整理整頓をしているときに、私も含めて多くの先生方が、「理科室のどこに何が入っているかわからないから、とにかく片っ端から棚を開けていった」「開けたはいいけど、何も入っていないときのがっかり感が半端ない」「探すのに時間がかかるから、理科の授業準備を後回しにしたくなる」と備品の置き場所に関する悩み事を話しておられました。
理科以外の授業準備もあり、その他の校務分掌等の仕事もあるので、放課後の時間を有効に使いたいのはみんな同じ気持ちです。
そこで、理科室の工夫として、安全に配慮しつつ、戸棚の扉の一部を取り外すことにしました。
100円ショップで売られているかごを購入し、できるだけ同じ用途のものを一つのかごに入れ、扉を取り外した戸棚に置き、すぐに取り出しやすいようにしました。ただし、安全面を考慮して、地震などがあった時に落下して、児童がけがをしたり破損したりする危険性がある備品(ビーカーなど)は、透明な扉がついている戸棚の中に収納しました(写真1)。
かごを置く場所を決めるときには、「目につくところにはすぐに使うものだけを置いておく」という規準をもとに判断しました。すぐには廃棄などの処分ができないものの、日常の使用頻度が極端に低いものは、理科準備室に集積しました。
準備室は、児童だけで立ち入ることができない場所になっていることから、戸棚を外して置いておいても安全上の問題は軽減されますし、何が置いてあるかもはっきり分かるようにもなっています。
校内で整理整頓をスムーズに行うポイント
第一に、教職員に進捗状況を説明・確認することです。
今回は、処分したり、段ボール箱に収納したりする前に、「これを処分する(or収納する)予定です」と連絡をし、期間を設定して展示しておくことにしました。担当者が処分しようと思っている備品でも、もしかすると、発展的な内容で使いたい先生もいるかもしれません。
そして、備品管理上、自治体の予算で購入したものを備品から外す(処分する)場合には事務職員に確認する必要があるので、事務職員との連携も重要です。あらかじめ事務職員に「これを処分しようと考えている」ということを伝えておくことで、その後の処分の見通し(廃棄物としての処理や保管場所、用務員との確認)も持ちやすくなり、スムーズに事が運びました。
また、先生方からの意見で、「今すぐ処分と決めるのは、早いのではないか」という意見があった備品もありました。たしかに、理科によく通じた先生が異動して来れば、より活用されるという備品もあるかもしれません。しかし、「いつか使うかもしれない」だけでとっておくと、管理する手間はいつまでたっても省くことができません。それで、理科準備室に「処分まで1年猶予」のスペースを設けておき、使用の実績がなければ処分するということにしました(写真2)。このように、教職員に確認しながら、柔軟性をもたせた進め方も大切であると私自身も学びました。
第二に、整理整頓が終わったことを周知するということです。片づけが終わりましたので、何か質問があれば聞いてくださいと打ち合わせなどで伝えておくと、「じゃあ、どんなふうになったか見に行こう」というような話になり、その際に変わった点などを先生方に説明することができます。
やってみると波及効果も…
捨てる前にどんなものがあるかを見るのはおもしろく、経験のある先生が、「これは、昔はこういう授業で使っていたんだよ」というように、ちょっとした理科の教材研究の場になることもありました。
また、一つの教室を整理整頓することが、ほかの教室にも波及する場合もあります。実際、今度の長期休業では理科室以外の教室にも手がつけられることになりました。
そして、一度整理整頓をすると、その状態がキープされることが多いように思います。きれいに片付いた教室は、きれいに使おうという意識は児童も教職員もおそらく同様で、大がかりな整理整頓が行われた教室がまた元に戻ってしまった、ということはあまり聞きません(写真3)。
ただ、単学級の小学校のように小規模の学校は、備品購入の仕組みがあまりしっかりしていないことが不要なものが多くなることの原因の一つになっているのではないかと思います。
その都度必要なものを購入していくことで、中期的なビジョンがなく、思いつきで増えていってしまったのかもしれません。そういった仕組みも同時に見直していけるように提案していければと思っています。
深見 智一(ふかみ ともかず)
北海道公立小学校 教諭
書籍等で取り上げられることがあまり多くない1学年につき1学級の単学級の学級経営、複式学級の学級経営について、これまでの実践や量的調査の結果をもとに、効果的な実践例を発信していきたいと考えています。
同じテーマの執筆者
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大阪大谷大学 教育学部 教授
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