2022.10.26
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小規模校で先生方に「ゆとり」を生み出すための校内環境の整備(10)

学校の整理整頓をすすめていくと、思わぬものがたくさん出てくることが...。ある若い先生に、「教室に置いてある『ビデオデッキ』っていつ使うんですかね?」と尋ねられました。これがベストという答えには至っていませんが、この問題には、学校が備品管理で抱える様々な問題が凝縮されているように思います。

北海道公立小学校 教諭 深見 智一

ICT機器のベテランと新人が混在する私の教室

古くから使われてきたICT機器と最新機器が混在する教室

教室を見回すと、ICT機器の歴史を垣間見ることができます。かつて使われていたテレビを固定するための台、オーバーヘッドプロジェクタの名残のスクリーンがあります。そして、DVDデッキにビデオデッキ、液晶テレビの後ろには室内用テレビアンテナがあります。タブレット端末の導入で使用する機会が減った実物投影機もあります。一方で、同じ教室に、iPad(タブレット端末)の画面をテレビなどの画面上にワイヤレスで映し出せるApple TVがあり、いまや授業では欠かせません。タブレット端末を置くためのタブレットスタンド、タブレット端末の音をワイヤレスで聞けるスピーカーなど、ここ数年で導入されたICT機器もあります。学校の推移を数十年間に渡って見守ってきた「ベテラン機器」と新参者の「最先端機器」が新旧混合で混在している状況です。

一度も授業では使ったことがないビデオデッキ

思い返してみると、教師になってから「授業中にビデオテープを使って映像を提示した」という記憶がありません。小学校では、6年生の社会科の学習で、テレビ放送が開始された当時の生活の様子を知る場面がありますが、その当時のテレビと関連付けた写真として、ビデオテープやDVDなどが掲載されているのを見たことがある程度です。授業とは関係がありませんが、教職員用図書を整理している途中に、著名な実践家のビデオテープがたまたま見つかり、長期休業期間中にビデオデッキを放送室から引っ張り出してきて、教材研究として視聴したことはありました。それで、私が若い先生に尋ねられた「教室に置いてある『ビデオデッキ』っていつ使うんですかね?」という問いに対する答えは、「使ったことがないよね…、たしかに。」というものでした。ここで問題となるのは、「あまり使われていないものが、なぜずっと教室にあるのか?」ということです。

使われないものが「風景」として残り続ける原因は:あるからといって深刻な問題が起きるわけではない

「あれば、いつか使う時に便利」「あっても、別に邪魔ではないから困らない」と思うことってないでしょうか?この原稿を作成している私自身の机の上がまさにそうです。ずっと置いていると、がっちりスペースを占有して、そこに置いてあるのが当然という感じになります。例えば、私のペン立てを誰かに見られたとしたら、「これ、何年分のボールペンを置いているんですか?しかも、その詰め替えまで…」と言われると思います。でも、それで困っていることもない、ということでなかなか現状が変わらないということは往々にしてあります。

教室でも、置いてあるのが当たり前だから「気にならない」、学校の備品だから仕方ないという「あきらめ」、この教室を使うのは1年間だし…「先送り」などの気もちが先生方にあるのは、私自身も含めて事実だと思います。ただ、学級担任として同じ教室を何年も使うとなると、もしかすると先生方も本気になっていろいろとチャレンジすることがあるかもしれませんが…。いずれにしても、「気になることはあるけれど、困っているというほどではないから、このままでも…」としておかないと、毎日の学級経営に関わる準備や緊急性の高い事案に手が回らなくなってしまうという側面が大きいというのが現実な気がします。

まして、小規模校においては、学級担任をしながら全校のICTの担当をしていたり、ICT担当が全校のプログラミング教育に関わっていたり、市町村のICT担当者会議の委員を務めていたりと、複数の業務を担わなくてはならない状況もあります。備品のアップデートをマネジメントする「余力」(←「やる気」ではないのがポイントです)が、学校には十分にあるとは言えないのが現状です。タブレット端末の導入も十分な研修の機会があったわけではありませんが、試行錯誤しながら軌道に乗せているという現状だと思います。

もう一つの原因として、「学校予算」に関わる問題が存在すると思っています。紙幅の関係で、次回ご紹介したいと思います。

深見 智一(ふかみ ともかず)

北海道公立小学校 教諭


書籍等で取り上げられることがあまり多くない1学年につき1学級の単学級の学級経営、複式学級の学級経営について、これまでの実践や量的調査の結果をもとに、効果的な実践例を発信していきたいと考えています。

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