小規模校で先生方に「ゆとり」を生み出すための校内環境の整備(5)
夏休みが近づいています。皆様、どのような過ごし方を計画されているでしょうか。私は、夏休み明けに予定されている集団・宿泊的行事や秋の学習発表会の準備を少しずつ練りながら、学校内の環境整備に取り組んでいこうと思っているところです。環境整備にあたって校務分掌(教務部)の担当者として気をつけているポイントをご紹介したいと思います。
北海道公立小学校 教諭 深見 智一
「こちらの教室も、整理整頓が必要!」という前向きな声があった時
前回までの記事でご紹介した理科室の環境整備の後、伝え方やニュアンスはそれぞれ異なりますが、「〇〇教室も片づけが必要ですよね…」という声が私のもとに聞こえるようになってきました(写真1)。
なかには、「次は、どこやるんですか?」という声も寄せられるようになりました。多くの先生方の力をお借りして理科室の整理整頓をしたことで、校内に環境整備についての意識の高まり、片づけようという雰囲気が高まったことをとても嬉しく思います。
しかし、ここで気をつけなくてはならないと思う点が二つあります。一つは、先生方の声を受けて、私がすべて行ってしまうということは避けたいという点です。
たしかに、校内の学習環境や教材に関する校務分掌(教務部)の担当者ではありますが、私自身も学級担任をしていますので、作業まですべて行うということになると、自分自身の学級業務が立ち回らなくなってしまうということが考えられます。
先生方が教材研究をしやすい環境を作っているのに、自分は教材研究が十分にできないと言うことでは、児童にとって本当に幸せなことなのか、何か本末転倒の気がします。
もう一つは、担当としてどのように役割を果たすかと言う点です。担当だから作業の全てをやらなくてはいけないと言うことではありません。担当は、あくまでも状況や問題を把握し、決策を提案する立場と考えます。
このような業務分担については、学校によっていろいろな考え方があるので、その状況に合わせる必要があると思いますが、私の勤務する学校ではそのように考えられています。
担当が決まったら、まずは「お任せする」
私の勤務校では、夏休み期間中に、教材点検日が設定されています。各教室の担当を決めた上で(ペアにしています)、夏休み期間中にそれぞれの担当教室の整理整頓や備品の点検を行うことになっています。
何か問題があれば、教務部の担当に報告していただき、また改めて解決策を提案していきます。その後、必要に応じてさらに役割分担を行い、仕事を割り振ることもあります。
担当が決まったら、その決まった先生に「任せる」ことが大切です。そのほうが効率的ですし、教務部の担当者(or 担当者の感覚)だけではなく、たくさんの先生方の視点で見ることで、その教室のいろいろな課題も見えてくるようになります。
また、担当者が変わったとしても、このような整理整頓の仕組みをしっかりと維持していけるようになるので、学校組織にとっても良いと考えます。
ただし、難しいと思うこともあります。それは、先生方の役割分担です。
例えば、低学年の担任に家庭科室の担当をお願いしても、普段使用することがないので、どうすれば使いやすいのかという改善の視点は持ちにくく、当事者意識も高まりにくいものです。そうすると、「まあ、大体きれいだからいいか…」ということになってしまいがちです。
使用する頻度が高い学年ほどいろいろなことに気づくのも事実ですが、そうすると上の学年の先生方ばかりに負担が偏ってしまうと言う課題もあるので、その調整が難しいなと思っているところです。
想像以上に多くある行事グッズ→教育課程の見直しへつなげていきたい
ある学校に勤務していた時、校内のいろいろな場所に学習発表会で使われる用具(グッズ)が置かれていることに気づきました。「あ、この教室にもあるんだ」と言う感じです。
風景の一部となっていたのであまり違和感はなかったのですが、一度気づいてしまうと、「どうしてこの教室にあるのだろう?」「教科で使う用具より、一等地の場所にしまわれているのなぜ?」と疑問に感じるようになりました。
使う期間は一年のほんのわずかなのに、たくさんの場所を占有し、しかも便利の良い場所に置いてあるのです。保管リストが存在していたようですが、古いままだったので使われることなくそのままになっていました。
たとえば、写真2は、体育館の器具室の一部です。本来であれば、体育の用具を収納する場所で、しかも比較的児童が取り出しやすい場所にある器具室でした。しかし、学習発表会の用具が置かれていることで、体育用具を出すためには、一度学習発表会の用具をすべて出さないといけない状況でした。
その時も私は校内の教材管理を担当する校務分掌(教務部)でしたが、その時に気を付けたことは、「自分の守備範囲はどこまでかを考える」ということでした。
学習発表会の用具を片づけるのは教務部の仕事ですが、「その場所にどの体育備品を収納すれば、児童や先生方が使いやすいか?」を考えるのは体育関係の校務分掌(体育部)の仕事でした。
ですから、私の仕事は、「体育館器具室にある学習発表会の用具を移動させるので、その空いたスペースにどの用具を置くかを体育部で考えておいてください」とバトンを渡すことでした。なんでもかんでもやってしまえばいい…ということではないように思うのです。
それでも、学習発表会で使われる「劇」の小道具や大道具、ステージに飾るバック絵などは、とても多くの場所を必要としていました。毎年作るもの(使うもの)と私自身普通に思っていましたが、本当に学習発表会に小道具や大道具は必要なのでしょうか?代替するものはないのでしょうか?
そもそも、それらは何のために準備するのでしょうか? 発表の見栄えのためでしょうか? なんとなくその発表にあった雰囲気を出すためでしょうか? それとも、児童のやる気を出させるためでしょうか?
その頃から、整理整頓を教育課程全体の見直しにつなげていきたいと考えるようになっていました。そのプロセスは、次回にご紹介したいと思います。
深見 智一(ふかみ ともかず)
北海道公立小学校 教諭
書籍等で取り上げられることがあまり多くない1学年につき1学級の単学級の学級経営、複式学級の学級経営について、これまでの実践や量的調査の結果をもとに、効果的な実践例を発信していきたいと考えています。
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大阪大谷大学 教育学部 教授
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