2022.11.16
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小規模校で先生方に「ゆとり」を生み出すための校内環境の整備(11)

ある時、「教室に置いてある『ビデオデッキ』っていつ使うんですかね?」と若い先生に尋ねられました。この問題には、学校が備品管理で抱える様々な問題が凝縮されていると思いますが、今回は、「学校予算」に関わる視点から考えてみたいと思います。

北海道公立小学校 教諭 深見 智一

学校予算への関心って…

学級担任をしていると、正直なところ、学校予算について意識するのは、「学年や学級に配当される消耗品費はどれくらいか」や、時折、事務職員から発せられることがある「(プリントなどの)印刷費の予算が足りなくなりそうなので、印刷物を減らしてください!」という悲しい!?お知らせの時ぐらいかもしれません。
年度初めの職員会議で大まかな学校予算が提案されますが、詳細に高い関心を持っている教員はそれほど多くないのが現状ではないでしょうか。

教材整備に関わることで、学校予算についても意識するようになる

教室にある使われていないスクリーン。その後ろには、Wi-Fiルーターもあり、新旧混合の教室。

私自身の経験ですが、学校の教材整備に関わる業務を行うようになると、限られた予算を効果的に活用するために、事務職員が緻密に動いてくださっていたのだということをより実感するようになり、学校予算への意識が高まりました。
一方で、その活用方法の難しさも知ることとなりました。例えば、教室環境を整えるために、古いテレビを処分したいと思ったとしても、なかなかすぐにはそうすることができません。本連載の9回目にも掲載した「箱型テレビ」は、40年近く前のもので、もう10数年以上も使われていないものですが、未だに放送室に置かれています。
家庭にあるテレビを処分する際にもリサイクル料金がかかるのと同じように、学校のテレビも処分するための費用が必要となります。その予算をどのように捻出するかは難しい課題です。

学習する内容の変化に対応したり、時代に合わせたアップグレードをしたりすることが教材備品に関して必要です。ただ、「新たに必要なものを購入すること」と「古いものを処分する費用を払うこと」を天秤にかけなければなりません。そうすると、やはり、目の前の子供たちにより役立つ新規の物品の購入を優先するということになることが多いと思います。その結果、使われなくなったものは、大きな支障がない限りはそのまま置いておかれる…ということも往々にしてある訳です。
小規模校の場合、学級数減で使われていない教室やスペースが多くある場合、「とりあえず、あの教室へ」というような場所があることも、処分が進まない一因かもしれません。自治体によっては、廃棄物の処理に関して、教育委員会が予算措置をしたり、一括して回収してくださったりするところもあるようですが、処分の手続きのプロセスがいまひとつ周知されていないことも処分が進まないことに関係しているかもしれません。

事務職員との連携で、より使いやすい学習環境の整備を

かつて勤務していた学校で教務主任をしていた際、事務職員が教務部に所属し、一緒に仕事をしたことがありました。当然、すべての業務を教員と同様に行うわけではありませんが、2017年3月の学校教育法の改正により、事務職員の職務は「従事する」から「つかさどる」へと変更され、教育活動への関わりにおいて教員との連携がしやすくなりました。
これまでも、教務部の業務である教材整備について実務面で仕事をしてくださっていました。しかし、同じ分掌になることで、子ども達のより良い学びを保障するために、実際に児童の指導に当たっている教員のニーズを汲んだ取組や方法に変更したり、分掌内での話し合いの際に、教員には実はあまり知られていなかった教材購入や教材管理の実務面での難しさや制約を知ることができたりと、相互にメリットがあったと私は考えています。

事務職員との連携で、その学校(自治体)でのルールを、すべての教職員に分かりやすく周知する取組は効果的でした。教員も自治体により異なるローカルルールが分からなく、理解するまでに時間がかかることがあります。
そこで、例えば、「翌年度に教材備品として購入を希望するものは、〇月までに教育委員会に要望を出す」とか、「教材備品の購入の予算は約〇万円で、カタログに付箋をつけておく。希望理由はあとでヒアリングをする」など、具体的なプロセスを書面で作成して頂きました。異動してきた教員が概ね理解できるようになっていれば、目標達成なのではないかと思います。教員があまり得意ではない分野を事務職員の力で「見えやすく」して頂くことが、より良い学習環境の整備につながっていく効果的な方法の一つだと感じました。

深見 智一(ふかみ ともかず)

北海道公立小学校 教諭


書籍等で取り上げられることがあまり多くない1学年につき1学級の単学級の学級経営、複式学級の学級経営について、これまでの実践や量的調査の結果をもとに、効果的な実践例を発信していきたいと考えています。

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