「国語授業」の説明書〜根本・本質・原点〜(19)
国語科では「言語活動を通して」資質・能力を育成することが求められます。言語活動とは「児童生徒が、単元全体を通して、学習のゴールを意識しながら、そのゴールに向かって、知識及び技能を使って、思考、判断、表現等をする活動」のことです。
では、どのように授業に組み込んでいけばよいのでしょうか。今回は「送りがな」を例にお話しします。
木更津市立鎌足小学校 山本 裕貴
【言語活動】
小学校学習指導要領解説国語編には、国語科における教科の目標が記載されています。
「言葉による見方・考え方を働かせ、言語活動を通して、国語で正確に理解し適切に表現する資質・能力を次の通り育成することを目指す」
ここで大切なことは、資質・能力をどのように育成するかということです。国語科では「言語活動を通して」育成する必要があるということです。
言語活動の充実は、どの先生も努力されているのではないでしょうか。それほど、国語科において重要な要素となっているのが言語活動です。
また「国語科の改定の趣旨及び要点」においても言語活動の重要性が示されています。どのような言語活動を通して資質・能力を育成するかを明確にするため「(4)授業改善のための言語活動の創意工夫」という形で記載があります。
では、言語活動とはなんなのでしょうか。
【言語活動となるもの、ならないもの】
言語活動について理解するためには、大分県教育センターが提示している「言語活動の充実」という資料が適してます。そこには次のように書かれています。
「国語科における言語活動は、児童生徒が、単元全体を通して、学習のゴールを意識しながら、そのゴールに向かって、知識及び技能を使って、思考、判断、表現等をする活動のことである」
つまり、言語活動は「ただ書いたり、ただ話し合ったり」するものではないということです。この資料には具体的な例も取り上げられています。
◯言語活動となるもの
「テーマを決めて、レポートを書く、単元を通して取り組む活動」
◯言語活動とならないもの
「レポートの項目について少人数で話し合う活動」
「レポートの構成メモを書く活動」
このように、私たち教師は言語活動となるものを意識して、授業を考えていく必要があります。では、どのようなどのような言語活動が考えられるでしょうか。
【3人組での話し合い】
本連載でも、何度か紹介していますが、私は「3人組での話し合い」を多く取り入れます。これは、植草学園大学教授である横田経一郎先生の実践を元にしたものです。
話し合い活動というと4人組がオーソドックスだと思います。しかし、国語科における言語活動では3人組が有効だと考えます。理由は以下の2つです。
①発言量が確保できる
こういうことはありませんか。「話し合いを設定したけれど、すぐ話を終えてしまう」「子どもによって話している時間に差がある」。3人組にすることで、これらを解決しやすくなります。
②待ち時間が少ない
こういうことはありませんか。「聞いている時間が長すぎる」「聞いているときに、あきてしまっている」。大人でも、長時間集中して話を聞くことは難しいです。子どもならば尚更です。これも3人組にすることで、解消しやすくなります。
以上のような理由から、私は3人組での話し合い活動をお勧めします。気になった先生は、是非一度試してみてください。
では、この活動を言語活動にするには、どうすればよいでしょうか。
【CASE19 送りがな】
教育出版3年「送りがな」を例にして、説明します。
◯習得学力
1 送り仮名が、漢字の意味や読みを明確にすることを知る
2 送り仮名を使った漢字を、正しく使う力
◯単元計画 全2時間
☆1時間目の流れ
本時の目的→送り仮名の定義を知り、語彙を増やすこと
(学習内容)
・送り仮名と出合う
先生「この文章を漢字に直して書いてみましょう」
『こうちょうせんせいがしゅうかいではなしをはなす』
・漢字に直す
『校長先生が集会で話を話す』
・送り仮名に気付く
先生「『話』と『話す』の違いはなんでしょうか」
児童「『話』は話す内容で、『話す』はしゃべっていることです」
・名詞、動詞を知る
先生「『話』というのは名詞です。『話す』というは動詞です」
・送り仮名について知る
先生「動詞には『送り仮名』がつきます。送り仮名がないと、どうなりますか」
児童「漢字の読み方がわからなくなります」「漢字の意味も伝わりづらいです」
・動詞集めをする
先生「辞書で動詞を探しましょう」
歩く、走る、話す、打つ、遊ぶ、休む、飲む、思う、楽しむ、強める、負ける など
・集めた動詞を伝え合う
先生「3人組になって、集めた動詞を伝え合いましょう」
・全体で情報を共有する
先生「それぞれのチームで集めた動詞を発表しましょう」
☆2時間目の流れ
本時の目的→送り仮名を使った漢字を正しく使うこと
・形容詞に出合う
先生「暑い、広い、強い、暗い。これは動詞でしょうか」
児童「違います。動きを表していません」「様子を表している言葉です」
・形容詞集めをする
先生「辞書で形容詞を探しましょう」
高い、寒い、明るい、狭い、楽しい、等しい、大きい など
・集めた形容詞を伝え合う
先生「3人組になって、集めた形容詞を伝え合いましょう」
・全体で情報を共有する
先生「それぞれのチームで集めた形容詞を発表しましょう」
・送り仮名の練習問題に取り組む
先生「送り仮名に気をつけて、漢字に直しましょう」『手紙をだす(出す)』『結果がでる(出る)』
『服をきる(着る)』『家につく(着く)』など
・送り仮名を使って文章を作る
先生「学習したことを使って、文章を作りましょう」
『ぼくは昨日、重い(おもい)教科書を持って帰った』
『今日はプリントが多くて、ランドセルの中に何枚も重なって(かさなって)いる』など
・作った文章を伝え合う
先生「3人組で、作った文章を発表してください」
・全体で情報を共有する
先生「それぞれのチームで、最も良かった文章を発表してください」
以上のような流れで授業を展開することで「送り仮名が、漢字の意味や読みを明確にすることを知る」ことができたり「送り仮名を使った漢字を、正しく使う力」が習得できたりすると考えます。少しでも参考になればうれしいです。
というわけで今回は「送り仮名」についてお話しました。次回は「詩の鑑賞」についてお話ししたいと思います。ここまでお読み頂き、有難うございました。
山本 裕貴(やまもと ゆうき)
木更津市立鎌足小学校
千葉大学大学院教育学研究科学校教育学専攻
木更津技法研所属
高校、特別支援学校、小学校算数専科を経て、現在小学校の学級担任をしています。
人を幸せにするには、どうすれば良いのか。たどり着いた答えが小学校の先生でした。
教育の根本・本質・原点を問い続けていきます。
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