2022.06.09
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「国語授業」の説明書〜国語の根本・本質・原点〜(13回)

作文をすることが苦手な子どもが多いです。なぜなら「書く」という行為は高等技術だからです。作文力をつけるためには「型を教える」「何度も書かせる」ことが有効です。では、どのように授業をすれば良いのでしょうか。今回は「紹介文の書き方」を例にお話しします。

木更津市立鎌足小学校 山本 裕貴

【作文はすきですか?】

以前も書かせていただきましたが「書く」という行為は高等技術です。大人だって難しいことです。子どもにとっては、更に難しいのは当然でしょう。しかし、現代社会を生きていく上で「書く」ことを避けることはできません。ならば、小学校段階から書く技術を身に付けさせる必要があります。

通信添削学習サービス「ドラゼミ」が運営する「ドラゼミ教育研究所」では2014年に小学校での作文学習に対して意識調査を行いました。小学生の子どもがいる保護者822人を対象としたものです。子どもの作文に対する意識や作文指導の頻度などについて回答をしてもらいました。では、どのような結果になったのでしょうか。

【2人に1人が作文が嫌い】

「お子さんは作文を書くことがすきですか」という質問に対しては全体の約半数が「嫌い・苦手」と回答しました。理由として「何を書けばよいかわからない」「長文が難しい」などが挙げられました。

「小学校で作文を書く機会は年間でどれくらいありますか」という質問に対しては全体の32%が「年に1~2回」31%が「年に3~4回」と回答しました。この結果から、全体の60%以上は年4回以下しか作文を書いていないということがわかります。

ここから先の回答は、教師にとって大変耳の痛い話です。
「小学校での作文指導についてどのように感じられていますか」という質問に対しては全体の64%が「指導時間がやや不十分に感じる・指導時間が不十分に感じる」と回答しています。理由として「作文を書く授業時間が少なすぎる」「書く機会が少なく、組み立て方、まとめ方をよく理解していない」などが挙げられました。

私たち教師は、このような実態を真摯に受け止め、学力を形成する作文指導をしていくべきです。

【作文力】

私は国語学力とは、語彙力、読解力、作文力であると考えます。今回は作文力を育む授業についてお話しします。作文力を身に付けさせるには「型を教える」「何度も書かせる」ことが必要だと考えます。

先程の調査結果でもあったように、現在の国語授業は「文章を書く学習」が少ないように感じます。書いていないから書けない、書けないから苦手、苦手だから嫌いという負の連鎖が子どもに起きないよう、指導していくべきです。

書くという行為は、本来楽しいものです。私たち人間はコミュニケーションをすることで社会を形成してきました。つまり人間は表現することが好きなのです。だって、文章を書くことが苦手な子も、おしゃべりは好きですよね。おしゃべりは日常生活の中で練習しているから、容易にできます。でも文章を書くことは練習していないから、難しいのです。では、具体的にどのように指導すればよいのでしょうか。

【CASE13 たからものをしょうかいしよう】

今回は教育出版3年に載っている「たからものをしょうかいしよう」を例に解説します。

〇習得学力
1 紹介文の組み立て方に対する知識
2 紹介文を書く技能

〇単元計画 全5時間

☆1時間目の流れ 

本時の目的→単元の予定を知り、紹介したいものを決める

・教師作例を提示し、単元のゴールを確認する。
教師「先生の宝物を紹介します。紹介するために書いた文章を読みますね」

<教師作例>
このおはしは、わたしの宝物です。どうして宝物になったと思いますか。
それは、家族で箱根旅行に行ったときに自分で選んで買ったからです。お母さんと、そうだんしながらえらんだので、とても楽しい思い出がつまっています。
みなさんは、自分でおはしを買ったことがありますか。ちょっとこちらを見てください。
このおはしは、よいところがたくさんあります。まず、すべりどめがついているので、つかみやすいです。つぎに、おすもうさんの絵がかいてあって、かわいいです。そして、自分の名前がほってあるので、ほかの人のおはしとまちがえることがありません。
みなさんも自分でおはしをえらんで、買ってみませんか。きっと自分だけの宝物になると思います。

・単元計画を考えさせる
教師「皆さんにも紹介文を書いてもらいます。何を学習すれば、書けるようになりそうですか」

<単元計画>
1 宝物を決める
2 構想メモを作る
3 紹介部文の下書きをする
4 紹介文の清書をする
5 宝物の発表会をする

・宝物を決めさせる
教師「次回から構成メモを書くために、宝物を決めましょう」
※紹介する宝物の条件として
「学校で発表するにふさわしいもの」→ゲームなどはだめ
を子どもと確認した

☆2時間目の流れ 

本時の目的→構成メモを作り、紹介の概要を決める

・構成メモの教師作例を提示し、本時の学習活動を明確化する
教師「先生が紹介文を書く前に、このような構成メモを作りました」

※学習用語の確認をする
話の中心→一番伝えたいこと
順序を表す言葉→はじめに、まず、そして、つぎに、さらに、さいごに
呼びかけ→〇〇してみませんか

<構成メモ>
①宝物
「名前入りのお箸」
②宝物に選んだ理由
「家族で箱根旅行に行ったときに、自分で選んで買ったから」
③宝物の説明
「良いところを紹介します」
「まず、すべり止めがついていて、すべりづらい」
「次に、名前が彫ってあるので、他の箸と間違えない」
「そして、絵が描いてあるので、かわいい」
④呼びかけ
「みなさんも自分で選んだお箸を使ってみませんか」

・構成メモを書かせる
教師「1つ書けたら、先生に見せにきてください」
①を書く→教師がチェックする→②を書く→教師がチェックする→③を書く→教師がチェックする→④を書く→教師がチェックする
※教師が小刻みに指導、評価することが大切である

☆3時間目の流れ 

本時の目的→下書きをすることで、書く内容を精選する

・教師作例を提示し、構成を確認する
<教師作例>
【第1ブロック】宝物の紹介を示すブロック
このおはしは、わたしの宝物です。どうして宝物になったと思いますか。

【第2ブロック】宝物になった理由を伝えるブロック
それは、家族で箱根旅行に行ったときに自分で選んで買ったからです。お母さんと、そうだんしながらえらんだので、とても楽しい思い出がつまっています。

【第3ブロック】宝物の良さを伝えるブロック
みなさんは、自分でおはしを買ったことがありますか。ちょっとこちらを見てください。
このおはしは、よいところがたくさんあります。まず、すべりどめがついているので、つかみやすいです。つぎに、おすもうさんの絵がかいてあって、かわいいです。そして、自分の名前がほってあるので、ほかの人のおはしとまちがえることがありません。

【第4ブロック】呼びかけをするブロック
みなさんも自分でおはしをえらんで、買ってみませんか。きっと自分だけの宝物になると思います。

※全4ブロックに分かれ、それぞれのブロックで何を書けばよいか確認する

・教師作例を視写させる
→視写することで、構成が理解できるようになる

・下書きをする
→1つのブロックが書けるごとに、教師が添削をする

教師「1ブロック書けるごとに、先生のところに持ってきてください」
※このとき、誤字・脱字、内容について教師が確認する

☆4時間目の流れ 

本時の目的→紹介文を清書し、発表ができるように練習する

・下書きを元に、清書をさせる
→前時で下書きが終わらない子は、朝自習などを活用し終わらせておく

・清書が終わった子は、発表練習をする
→どのタイミングで、宝物を見せるか
抑揚、間の取り方をどうするか
などを考えさせる

☆5時間目の流れ 

本時の目的→紹介文を元に、みんなに宝物を紹介する
・学級で宝物を紹介する
→聞いている子にワークシートを配付し、友達の発表をメモさせる

<メモ内容>
宝物はなにか、どんな内容だったか、話し方はどうだったか

・単元を振り返り、できるようになったことを確認する

以上のような流れで授業を展開することで「紹介文の組み立て方に対する知識」が身に付き、「紹介文を書く技能」が習得できると考えます。少しでも参考になればうれしいです。

というわけで今回は「紹介文の書き方」における習得学力を明確にした国語授業についてお話しました。次回は「説明文の指導法」についてお話ししたいと思います。ここまでお読みいただき有難うございました。

山本 裕貴(やまもと ゆうき)

木更津市立鎌足小学校
千葉大学大学院教育学研究科学校教育学専攻
木更津技法研所属

高校、特別支援学校、小学校算数専科を経て、現在小学校の学級担任をしています。
人を幸せにするには、どうすれば良いのか。たどり着いた答えが小学校の先生でした。
教育の根本・本質・原点を問い続けていきます。

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