2022.08.30
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「国語授業」の説明書〜根本・本質・原点〜(17回)

夏休み明け、最も大切なことは、教師が「子どもを歓迎する」ことです。国語を楽しいと思ってもらえるような授業が「2学期最初の国語授業」に求められます。
では、どのようにすればよいのでしょうか。今回は「2学期最初の国語授業」についてお話しします。

木更津市立鎌足小学校 山本 裕貴

【夏休み】

「夏休み」という言葉を聞いて、皆さんはどんなことを思い浮べるでしょうか。私は、この言葉を目にするだけで「心がうきうき」します。それはきっと子どもの頃、夏休みは楽しかったという経験によるものだと思います。

さて、夏休みはいつ頃から始まったのかご存知でしょうか。日本では、明治時代から公立学校で夏休みが制度として確立しました。その法的根拠は「小学校教則綱領第7条」にあります。そこには次のように書かれています。
『小学校二於テハ日曜日、夏季冬季休業日及大祭日、祝日等ヲ除クノ外授業スヘキモノトス』

うーん。私たちには、少し読みにくいですね。読みやすく変えると次の通りです。
『小学校では日曜日、夏季・冬季・休業日・大祭日・祝日などを除き、授業を行う』

この夏季・冬季というのが夏休みや冬休みとなっているのですね。なぜ夏休みを実施するのかについては、実は明確な理由は示されていません。
一般的な解釈として「暑いので授業実施が難しい」「長期休みを利用して、多くの体験ができる」
などが考えられます。

【子どものやる気がなくなるのはいつ?】

そんな夏休みですが、終わりが見えてくると、少し切なくなってきます。これは、子どもも大人も同じではないでしょうか。

2021年に(株)やる気スイッチグループが、興味深い調査を行なっています。子どもと保護者を対象とした「やる気」に関するインターネット調査です。
質問項目の中に「やる気がなくなる時期はいつですか?」というものがあります。小学生の回答で最も多かったのが「夏休み明けの授業」です。実に38.9%を占めていました。

つまり子どもの多くは、「夏休みが終わるのが嫌だな」「夏休み明けはやる気が出ないな」と 思いながら登校してくるということです。私たち教師は、まずこのことを念頭に置く必要があります。
では、どうすればよいのでしょうか。

【子どもを歓迎する】

上越教育大学教授の赤坂真二先生は、夏休み明けに教師が取り組む最優先事項として「子どもを歓迎する」ことを主張しています。
そうです。子どもは「やる気が出ない」中、一生懸命学校にくるのです。私たち教師が歓迎することで、子どもは心理的安全を感じることができます。そして、学校生活のリズムを取り戻していくと考えます。

国語授業において「子どもを歓迎する」とは「知的好奇心を喚起する授業を行う」ことだと考えます。初日から、いきなり教科書に入るより、子どもが「やっぱり国語はおもしろい」と感じる授業をすることが大切ではないでしょうか。
では、どのような国語授業をすれば良いのでしょうか。

【CASE17 俳句の鑑賞】

今回は東京未来大学非常勤講師である山中伸之先生の実践を元にしています。
◯習得学力
1  国語に対する関心
2  俳句を鑑賞できる技能
◯単元計画 全1時間

☆1時間目の流れ 

本時の目的→国語の楽しさを知り、今後の授業に期待感を持つこと

・教材を提示する
「雀の子   そこのけそこのけ   御馬が通る     小林一茶」

・語彙を確認する
教師「読めなかったり、意味を知らなかったりするものはありますか?」
雀→すずめ
そこのけ→其処退け、その場所をどきなさい
御馬→おうま、「御」は尊敬や丁寧なときにつける

・音読をする
教師「先生のあとに続けて、音読しましょう」

・学習用語を教える
教師「音読をして気付いたことはありますか?」
児童「5・7・5のリズムになっていません」

学習用語「破調」
※5・7・5のリズムを破ることで、俳句のインパクトを強める方法
この俳句は5・8・7になっている
破調にも関わらず、口ずさみやすいリズムになっていることに気づかせる

・季語を確認する
教師「季語は『A  雀』『B  雀の子』どちらですか?」
※正解はB   雀は、年間を通して見かけるので、季語にならない
雀は3月から4月にかけて雛が生まれるので、雀の子が春の季語となる

・発問する
教師「『そこのけ』と言っているのは『A  馬に乗っている人』『B  周りの人』どちらですか?」
※正解はB
馬ではなく御馬となっている
自分の乗っている馬に「御」はつけない
よって、周りの人が雀の子に言っている

以上のような流れで授業を展開することで「国語に対する関心」が高まり、「俳句を鑑賞できる技能」が習得できると考えます。少しでも参考になればうれしいです。

というわけで今回は「2学期最初の国語授業」についてお話しました。次回は「物語文の指導」についてお話ししたいと思います。ここまでお読み頂き、有難うございました。

山本 裕貴(やまもと ゆうき)

木更津市立鎌足小学校
千葉大学大学院教育学研究科学校教育学専攻
木更津技法研所属

高校、特別支援学校、小学校算数専科を経て、現在小学校の学級担任をしています。
人を幸せにするには、どうすれば良いのか。たどり着いた答えが小学校の先生でした。
教育の根本・本質・原点を問い続けていきます。

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