2022.07.20
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「国語授業」の説明書〜国語の根本・本質・原点〜(15回)

俳句は日本が誇る伝統文化です。俳句を楽しむためには、俳句に対する知識と、鑑賞するために必要な技能を身につけることが大切です。というわけで今回は「俳句」に焦点をあててお話しします。

木更津市立鎌足小学校 山本 裕貴

【俳句という言葉】

俳句は十七音であらゆるものを表現するという高度な言語技術です。だからこそ、時代が変わっても愛され、多くの人に親しまれているのだと思います。ちなみに私は、俳句を作るのは得意ではないですが、鑑賞するのが大好きです。

ところで、俳句という言葉は、誰が初めに唱えたかご存知でしょうか。これは正岡子規が大正時代に提唱した言葉です。よって、松尾芭蕉や与謝蕪村などの有名な俳句も、江戸時代には俳句と呼ばれていなかったのです。では、なんと呼ばれていたのでしょうか。

【発句・俳諧】

当時の俳句は発句(ほっく)や俳諧(はいかい)と呼ばれていました。発句というのは、連句と呼ばれる長い詩の冒頭部分のことです。その冒頭部分は五・七・五のリズムでした。そして、そこのみを独立させて発句(現在の俳句)として人々は楽しんでいました。

俳諧とは室町時代後期から江戸時代にかけて大流行した連句の一部です。俳諧は和歌などの格調高いものとは違い、身近なものを題材にしたり、滑稽な要素を加えたりしたものです。その親しみやすさが当時の人々に大ヒットしたのです。

このように、俳句とは日本が誇る伝統文化です。それを授業で扱うには、どのようにすればよいのでしょうか。具体例を挙げて、説明していきます。

【CASE15 俳句に親しむ】

教育出版3年に記載している「俳句に親しむ」を例に挙げて解説します。

◯習得学力
1  俳句についての知識(十七音、季語、切れ字)
2  俳句を鑑賞できる技能(様子を思い描くこと)

◯単元計画 全3時間

☆1時間目の流れ 

本時の目的→俳句のルールを理解する。 

・俳句を提示する

『せみの声遊べ遊べと聞こえる日            山崎  早希子』

・俳句のルールを確認する

教師「俳句がリズム良く聞こえるのはなぜでしょうか」
児童「五・七・五になっているからです」
※学習用語「十七音」「上五」「中七」「下五」を教える

教師「季節はいつでしょうか」
児童「夏です。せみの声が聞こえるからです」
※学習用語「季語」を教える

・季語に合わせた俳句を提示し、季語を確認する

教師「季語は春・夏・秋・冬・新年の5つがあります」

『雪とけて村いっぱいの子どもかな        小林  一茶』
教師「この俳句の季節は、冬ですか、それとも春ですか」
児童「雪が溶けているので春です」
※季語は「雪解け」だと気付かせる

『さじなめて童たのしも夏氷                  山口  誓子』
教師「楽しんでいるのがわかる部分は、どこですか」
児童「なめてです。スプーンをなめるしぐさや表情が伝わってきます」

『名月や池をめぐりて夜もすがら          松尾  芭蕉』
『かきくえば鐘がなるなり法隆寺          正岡  子規』
教師「や、なりなどは強調するための言葉です」
※学習用語「切れ字」を教える

☆2時間目の流れ

本時の目的→俳句を鑑賞する観点を知る

・教科書記載の俳句を提示する

『せきの子のなぞなぞあそびきりもなや      中村  女』

・鑑賞するために、語彙を確認する

せきの子→かぜをひいて咳をしている子ども
なぞなぞあそび→なぞなぞをしている
きりもなや→きりがない
※季語は「せき」で冬 

・発問をする

教師「風邪を引いているのに、ずっとなぞなぞ遊びをしている理由はなんでしょうか」
→風邪を引いているから、外で遊ぶことができない

子どもは甘えて、大人になぞなぞ遊びをずっとしてもらっている

・教科書外の俳句を提示する(野口芳宏先生の実践)

『桐一葉日当たりながら落ちにけり           高浜   虚子』

・鑑賞するために、語彙を確認する

桐→木の種類
桐一葉→秋の季語

・発問をする

教師「この場面は、風が吹いていると思う人はA   吹いていないと思う人はB  ノートに書いてください」
→正解はB
風が吹いているならば、桐の葉は「落ちる」ことはない  「舞い散る」でないとおかしい

・発問をする

教師「桐の葉は、大人の掌より大きいと思う人はA  小さいと思う人はB ノートに書いてください」
→正解はA
    桐の葉の写真を見せると良い   相当な大きさである
    大きいから日に当たっている姿が、美しく見える
また、大きいから「散った」のではなく「落ちた」と表現されている 


☆3時間目の流れ 

本時の目的→俳句に親しむ

・教科書の俳句を声に出して読む

教師「今日は、気に入った俳句を決めて発表しましょう」

・作例を提示する

『さじなめて童たのしも夏氷    山口   誓子』

【選んだ理由】
スプーンをさじと表現したり、かき氷を夏氷と言い換えたり、読み手が想像を膨らませることができる作品だと思いました。何度も声に出して読んでいるうちに、響きが気に入りました。子どもが嬉しそうにかき氷を食べているのを見て、作者も嬉しくて、この句をよんだのではないでしょうか。

・俳句カードに視写する

・俳句カードの裏に選んだ理由を書く

・自分が選んだ俳句を発表する

以上のような流れで授業を展開することで「俳句についての知識」が身に付き、「俳句を鑑賞できる技能」が習得できると考えます。少しでも参考になればうれしいです。

というわけで今回は「俳句」における習得学力を明確にした国語授業についてお話しました。次回は「生活作文の指導」についてお話ししたいと思います。ここまでお読みいただき有難うございました。

参考資料

山本 裕貴(やまもと ゆうき)

木更津市立鎌足小学校
千葉大学大学院教育学研究科学校教育学専攻
木更津技法研所属

高校、特別支援学校、小学校算数専科を経て、現在小学校の学級担任をしています。
人を幸せにするには、どうすれば良いのか。たどり着いた答えが小学校の先生でした。
教育の根本・本質・原点を問い続けていきます。

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