2021.12.07
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「国語授業」の説明書~国語の根本・本質・原点~(4回)

学習指導要領の中で「我が国の言語文化に関する指導」が重要視されています。古典作品の授業は、読んでいて楽しいものにすることが重要です。では、どうすればよいのでしょうか。
今回は「秋の夕暮れ」を例にお話しします。

木更津市立鎌足小学校 山本 裕貴

我が国の言語文化

私たちの国には多様な言語文化が醸成されています。それは誇りに思うべきであり、守っていくものだと感じています。小学校学習指導要領解説国語編では「我が国の言語文化に関する指導」の改善・充実が求められています。また中央教育審議会答申では、次のような内容が示されました。

「我が国の言語文化に親しみ、愛情を持って享受し、その担い手として言語文化を継承・発展させる態度を小・中・高等学校を通じて育成するため、伝統文化に関する学習を重視することが必要である」

これらを踏まえ、「知識及び技能」の項目では「(3)我が国の言語文化に関する事項」が位置づけられました。

読んで楽しいもの

学習指導要領には次のような記述もあります。

「声に出して読むことで、心地よい響きやリズムを味わうとともに、読んで楽しいものであることを実感させるようにすることが大切である」

全くその通りだと思います。古典作品は音が美しい。だから読むことが楽しい。私は俳句が大好きです。それは響きが心地よいことも理由の1つです。しかし、内容を理解することも楽しみ方の1つだと考えます。内容について考え、読み解き、理解していくことも「読んで楽しいもの」にするために必要です。では、どのように授業すればよいのでしょうか。

CASE4 秋の夕暮れ

今回は光村図書5年『秋の夕暮れ』の単元計画をお話しします。

 【習得学力】
1 古典についての知識
2 読解力

【単元計画】
全2時間

☆1時間目の流れ 
本時の目的→古文の現代語訳や季語について知る。

教諭「枕草子の秋を音読しましょう」
・音読し、響きやリズムに親しませる。

教諭「現代語にしてみましょう」
・古典的表現を教える。

いと……大変
あわれなり……しみじみとする
をかし……風情がある
言ふべきにあらず……言うまでもない

教諭「秋の季語について調べましょう」
・辞書やタブレットを使用し、季語を調べさせる。

望月、十六夜、弓張月、星月夜、暮秋、秋おしむ、秋の名残   など

☆2時間目の流れ
本時の目的→根拠を基に、俳句を鑑賞する

「星月夜夜空の高さよ大きさよ 江左 尚白」

教諭「ノートに視写しましょう」
・俳句を視写させる

教諭「音読しましょう」
・前回学習した季語の意味を想起させる

教諭「作者はどちらに感動したのですか。A夜空の高さ広さ B夜空の明るさ ノートに書きましょう」
・自分の立場と根拠をノートに書かせる
・立場に基づき、全体で議論する

※ちなみに正解はAです。

尚白は、星月夜つまり、ものすごく明るい夜に空を見上げました。明るいことで、「こんなにも空は高く、広かったのか」ということに気付きます。そこに感銘を受けてこの句を作りました。ですから作者が感動したのは「夜空の高さ広さ」です。

「戸を叩く狸と秋を惜しみけり 与謝 蕪村」

「ノートに視写しましょう」
「音読しましょう」
「戸を叩いたのはだれですか。ノートに書きましょう」

※私の学級では「狸」「風」「作者」が回答として出ました。みなさんはどれが正解だと思いますか。

正解は「風」です。蕪村は秋風が戸をガタガタとさせる音を聞いて、秋を惜しんでいます。その音を「戸を叩く狸」と表現している非常にユーモアのある句です。

これは俳句の中に「戸を叩く狸」と書いてあるので、子どもは読み間違えやすいです。私の学級でもほとんどの子は狸を選んでいました。そこを教師が問うことによって、子どもの読みの不備・不足を補う必要があります。

というわけで今回は「秋の夕暮れ」における習得学力を明確にした国語授業についてお話しました。次回は『大造じいさんとガン』についてお話したいと思います。ここまでお読みいただきありがとうございました。

山本 裕貴(やまもと ゆうき)

木更津市立鎌足小学校
千葉大学大学院教育学研究科学校教育学専攻
木更津技法研所属

高校、特別支援学校、小学校算数専科を経て、現在小学校の学級担任をしています。
人を幸せにするには、どうすれば良いのか。たどり着いた答えが小学校の先生でした。
教育の根本・本質・原点を問い続けていきます。

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