2021.10.28
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「国語授業」の説明書(2回)

新聞は学力形成に有効です。 では、どのように授業に取り入れていけばよいのでしょうか。 今回はNIEに焦点を当ててお話しします。

市原市立八幡小学校教諭 木更津技法研所属 山本 裕貴

【NIEってなに?】

NIEをご存じですか。「言葉は聞いたことあるよ」という先生は多いと思います。これは「Newspaper in Education」の略で「エヌ・アイ・イー」と読みます。スペルから分かる通り、新聞を教材として扱う授業のことを指します。
NIEは1930年代にアメリカで生まれました。その後、世界各国で取り組まれていますが、日本では1985年に静岡県で新聞大会が開かれ、そこから広まっていきました。現在、多くの学校で取り組まれている教育活動です。図書室などで「子ども新聞」を閲覧できるようにしてある小学校も数多くあります。
では、なぜNIEが必要なのでしょうか。

【現代の子どもに必要な力】

NIEの公式Webページには現代の子どもたちに必要な力として2点挙げています。

「地域や社会の中で課題を見つけ、解決のために行動する力」
「膨大な情報が行き交うインターネット社会で、正しい情報を取捨選択し、読み解く情報活用力」

つまり「課題解決」と「情報選択」ができる力が必要だということです。しかし、これを身に付けさせるために、なぜ新聞が必要なのでしょうか。
現代はブログやSNSなど、誰でも簡単に情報発信ができる時代です。私が子どもの頃と比べ、アクセスできる情報量は桁違いです。しかし、それらがすべて信頼度の高い情報だとは限りません。情報源が不明確なものや、個人の主観に偏った情報もインターネットにはあふれているからです。
新聞の強みは、あらゆる分野の情報が、精選されて発行されているところです。それが100%正しいとは限りませんが、信頼度が高いメディアと言えます。
新聞を通して、社会への関心を高めることで「課題解決」「情報選択」できる力を身に付けるのがNIEの目的です。

【新聞の閲覧頻度と読解力の相関関係】

私は子どものとき、よく父に「新聞を読みなさい」と言われました。恐らくこれは、我が家だけでなく、多くの家庭で言われていることではないでしょうか。確かに、子どもに日常的に新聞を読ませることは教育効果がありそうです。しかし、実際はどうなのでしょうか。
大変興味深いデータがあります。OECD(経済協力開発機構)が実施したPISA(生徒の学習到達度調査)2018で、新聞の閲覧頻度と総合読解力には相関関係があることが判明しました。
新聞を読む頻度が「週に数回」「月に数回」と回答した子どもの総合読解力は「531点」でした。
しかし、頻度が下がると得点も減少にあります。「月に1回くらい」「年に数回」「まったく、ほとんどみない」は総合読解力が「498点」となりました。
これは、日本の子どものみに見られる傾向ではなく、調査国でもほぼ同様の結果でした。
このことから、新聞に触れさせる経験が、子どもの学力につながることが分かります。では、どのように授業を展開すればよいのでしょうか。

【CASE2 新聞を読もう】

今回は「新聞を読もう」(『国語5年』光村図書)の単元計画をお話しします。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
〇習得学力
1 新聞の構成に関する知識
2 新聞を読もうとする意欲

〇単元計画 全3時間
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☆1時間目の流れ 
本時の目的:見出し、リード文、本文などで作られていることを知ること

・新聞を提示する。
教諭「新聞の一面を見てみましょう」
見出し、リード文、本文、コラム、新聞名、発行者、発行日、目次、面、写真・図などの学習用語の意味を確認する。

・記事の構成について学ぶ。
教諭「どのような構成になっているか確認しましょう」
最重要な事柄を見出しで示し、リード文、本文へとしだいに詳しく書かれていることを気付かせる。

・内容の構成について学ぶ。
教諭「報道記事はどのようにな観点で書かれているでしょうか」
「いつ」「どこで」「だれが」「何を」「なぜ」「どのように」の5W1Hに気付かせる。

☆2時間目の流れ
本時の目的:全国紙と地方紙で書き方が異なることを知ること

・2つの新聞を提示する。
教諭「これは全国紙と地方紙です」
読売新聞、千葉日報など子ども達に身近な全国紙と地方紙を提示する。

・教科書の教材を提示する。
教諭「教科書には毎日新聞と京滋新聞が載っています」
教材は、読み取りやすい教科書教材を使用する。
※事前に宿題で音読させておく。

・段落ごとに要約させる。
教諭「全国紙の1段落には、桐生選手が9秒98を記録したことが書いてありますね」
初めは一緒に要約し、やり方を理解させた後、自分で要約させる。

・要約が難しい子どもには「5W1H」の観点で要約させる。
教諭「この段落は、いつ、だれが、なにをした話ですか」

☆3時間目の流れ
本時の目的:新聞に興味をもつこと

・要約の続きをさせる。
教諭「前回の要約の続きをしましょう」

・全体で確認する。
教諭「毎日新聞と京滋新聞では、書き方が異なりますね」
地方紙では、地元に関する内容が多いことに気付かせる。

・多くの新聞に出合わせる。
教諭「学習したことを生かして、複数の新聞を読み比べてみましょう」
数種類の新聞を用意し、自由に読ませる。

以上が学習の流れになります。少しでも参考になればうれしいです。

【なぜ、新聞を読むのか】

私は現在、3つの新聞を定期購読しています。「産業経済新聞」「朝日新聞」「教育新聞」です。新聞は各社、書き方が違います。同じ全国紙、同じ内容であっても各社の思想によって、全く書かれ方が異なります。同じ情報でも好意的に書いたり、否定的に書いたりします。よって、読者は選択した新聞の思想に偏っていってしまいます。ですから、読み比べることが大切だと思います。
今では毎日、新聞を読み比べる生活をしていますが、以前は全く読みませんでした。ネットニュースがあるのに、新聞を読んでも意味がいないと思っていたからです。しかし、ある日を境に読み始めました。それはこんなことがあったのです。
教員になりたてのときでした。実家の父にこう話しかけられました。
「ISの影響で、ガソリンが高くならなければ良いけどなあ」
当時の私は全く意味が分かりませんでした。ISも知らなければ、中東情勢にも全く無知だったのです。そのとき「教えるべき立場の教員が、こんなことではいけない」と深く反省しました。その日から新聞をとるようにしたのです。
ネットニュースは自分の興味があるものしか見ないことが多いです。しかし、新聞だと多分野にわたり、継続して情報を得ることができます。しかも新聞は一部あたり百数十円です。こんな値段で、質の高い情報に触れることができるのに、読まない手はないと思います。あのときの反省を忘れず、これからも勉強をしていきたいと思います。

というわけで今回は「新聞を読もう」における習得学力を明確にした国語授業についてお話しました。
次回は「たずねびと」についてお話したいと思います。ここまでお読みいただきありがとうございました。

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山本 裕貴(やまもと ゆうき)

市原市立八幡小学校教諭 木更津技法研所属

高校、特別支援学校、小学校算数専科を経て、現在小学校の学級担任をしています。
人を幸せにするには、どうすれば良いのか。たどり着いた答えが小学校の先生でした。
教育の根本・本質・原点を問い続けていきます。

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