「国語授業」の説明書〜国語の根本・本質・原点〜(16回)
夏休みの宿題といえば、読書感想文を思い浮かべる方も多いのではないでしょうか。しかし、多くの子どもや保護者は、読書感想文の抵抗感があると考えます。それはなぜでしょうか。
今回は、読書感想文の指導に焦点をあててお話しします。
木更津市立鎌足小学校 山本 裕貴
【夏休みの宿題といえば】
夏休みが始まりました。子どもにとって、待ち望んでいる長期休業ですが、そこには夏休みの代名詞といっても過言ではないものがあります。それは「夏休みの宿題」です。小学生にとって、約40日間というのは、とてつもなく長いものです。しかし、小学生にとって、夏休みの宿題というものは、とてつもなく多いものでしょう。
夏休みの宿題の内容については、各学校もしくは各学年に裁量権があります。ですが、全校の殆どの学校で取り入れられているのが「読書感想文」ではないでしょうか。読書感想文と聞いて、みなさんは、どのような印象を受けますか。
私は夏休み前の保護者面談で、必ず宿題の内容を保護者の方に伝えます。子どもたちにも、もちろん伝えています。しかし、保護者の方にも伝えることで、応募方法などの間違いを減らすことできるのです。
面談で「夏休みの宿題は◯と◯と◯です」と伝えたときに、最も保護者の方のリアクションが大きいのが「読書感想文」です。大体の場合「ああ~うちの子、文章書くの苦手なんですよね~」というような反応が返ってきます。保護者の方も読書感想文に対する抵抗感があることがわかります。
【夏休みの宿題に関する調査】
パステル総研が2021年に、「夏休みの宿題に関する調査」をしています。保護者を対象として、136人にアンケート調査を行なったものです。
「お子さんは夏休みの宿題を1人でやりきることができますか」という質問項目で、「苦手な部分でサポートが必要」「ほとんどの部分でサポートが必要」と回答したのは、全体の86%でした。多くのご家庭が、なんらかの形で子どもの宿題をサポートしているということです。
冒頭で述べた通り、子どもにとって夏休みの宿題は負担が大きいものです。それは、保護者の方にとっても同様でしょう。では、数ある宿題の中で、何が最も負担なのでしょうか。
「宿題の中で、お子さんが最も負担に感じているものは何ですか」という質問項目の中で、最も回答の割合が高かったのは「読書感想文」で34%でした。
さらに「宿題の中で、保護者の方がサポートする際もっとも負担に感じるものは何ですか」という質問項目も「読書感想文」が35%で負担の1位を占めていました。
このことから、読書感想文という宿題は、子どもにとっても、大人にとっても、大変なものであるということが読み取れます。
【読書と感想と文】
では、なぜ読書感想文は、こんなにも大変なのでしょうか。それは、読書感想文という文章の性質にあると思います。
読書感想文とは、分割すると「読書」「感想」「文」になります。つまり、読書感想文を書くには、まず読書をすること、そして感想を持つこと、さらに文章化するという3つの作業が求められるのです。これは、大人にとっても大変な作業です。子どもなら、尚更でしょう。
ですが、よくよく考えてみると、国語授業において、読書することも、感想を持つことも、文を書くこともしているはずです。なにも新しいことをするわけではありません。それでも、子どもが読書感想文に抵抗感がある理由はなんでしょうか。
【2つの理由】
子どもが読書感想文に、抵抗感がある理由は大きく2つあると考えます。
(1)読書感想文の型を知らない
(2)読書感想文を書く練習をしていない
(1)は、単純に読書感想文の構成が分からないということです。それもそのはずです。夏休みの宿題で求められる読書感想文は、学校の授業では殆ど書かないからです。書き方を教わっていないのに、書けといわれても書けないのは当然です。
(2)も同様です。読書感想文を書く機会というのは、夏休みの宿題くらいです。年1回しか書かないのに、得意になれというのは無理があります。
読書感想文は、全学年で夏休みの宿題にするという学校が多いと思います。しかし、私は読書感想文の指導は、学校の授業で行い、学校で書くべきだと考えます。学校で殆ど指導せず、宿題で書いてきてねというのは、無責任だと思うからです。
では、読書感想文の指導は、どのようにすれば良いのでしょうか。
【CASE16 読書感想文の指導】
今回は、読書感想文の書き方についてお話しします。なお、私の実践は岩下修先生の作文指導を元にしています。
◯習得学力
1 読書感想文の構成に関する知識
2 読書体験と自分の経験を結びつける技能
☆指導の流れ
(1)教師作例を見る
・読書感想文を音読し、見通しを持たせる
(2)読書感想文の構成を確認する
・教師作例を見ながら、どこに何が書かれているか理解させる
<1ブロック>
この本を読んだきっかけや、作品の要約を書く
例「題名が今のぼくの状況と重なっていると感じ、不思議と手が伸びた」
「◯◯だった主人公が、△△というピンチに出会い、◻︎◻︎という成長をした物語である」 など
<2ブロック>
自分が一番印象に残った場面の登場人物の行動を書く
例「◯◯のときに、主人公の△△という行動には、心が揺さぶられた」
<3ブロック>
2ブロックで書いた登場人物の行動と似ている自分の経験を書く
例「主人公は◯◯ということをしていたが、ぼくも△△をしたことがある」
<4ブロック>
登場人物と自分の経験の違いや、そこから学んだこと、考えたことを書く
例「主人公は◯◯できたが、ぼくはそのとき◯◯できなかった」
「主人公の◯◯を見て、これからは△△していきたいと感じた」
(3)読書する
・授業内に時間を確保し、じっくりと読ませるのが大切
(4)構成メモを書く
・ブロックごとに書きたいことを簡単に書かせる
・1つのブロックが書けるごとに、教師に見せにくるよう伝える
→その話題で、どれくらいの分量が書けるか子どもに聞いてみることが大切
(5)下書きを書く
・原稿用紙を使用する
・1つのブロックが書けるごとに、教師に見せにくるよう伝える
→誤字、脱字、文のつながりなどを添削する
※下書きが全て描き終えたら、題名を書かせる
→初めに題名を書かせると、文章と題名の不整合が起きる場合があるので、最後に決めるほうがよい
(6)清書する
・精一杯の綺麗な字で書かせる
・この段階では教師の添削はしない
→清書の場面で添削すると、書く意欲が下がってしまう
以上のように指導することで「読書感想文の構成に関する知識」と「読書体験と自分の経験を結びつける技能」が身につくと考えます。
読書感想文の指導において、なにより大切なのは、子どもと話し合いながら進めることです。読書感想文は自分の経験と結びつけることが重要です。どの場面なら、自分の経験と結びつけて考えられるか、よく子どもに聞いてみてください。少しでもお役に立てれば嬉しいです。
というわけで今回は「読書感想文の指導」についてお話ししました。次回は「2学期最初の国語授業」についてお話しします。ここまでお読み頂き、有難うございました。
参考資料
山本 裕貴(やまもと ゆうき)
木更津市立鎌足小学校
千葉大学大学院教育学研究科学校教育学専攻
木更津技法研所属
高校、特別支援学校、小学校算数専科を経て、現在小学校の学級担任をしています。
人を幸せにするには、どうすれば良いのか。たどり着いた答えが小学校の先生でした。
教育の根本・本質・原点を問い続けていきます。
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