2023.03.18
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さらに辞書の活用を

担当する3年生では、年度当初より「辞書引き学習」に取り組んできました。GIGAスクール構想の進展により、児童が一人一台のタブレット端末を盛んに使っている昨今ですが、そういう時代だからこそ紙の辞書も積極的に活用しなければならないと感じています。小学生の今こそ、アナログの良さも十分に味わわせる必要があると思い、指導を続けてきました。児童も紙の辞書を喜んで使い、調べた言葉や見つけた言葉にたくさん付箋をつけてきました。児童にとって、辞書が大切な学習道具の一つとなりました。

さいたま市立植竹小学校 教諭・NIE担当 菊池 健一

「辞書引き学習」に取り組んだ成果を生かしたい

辞書の活用の様子

辞書引き学習を始めたころは、引いた言葉に付箋を積極的につけていました。
1カ月ぐらいすると付箋を付ける活動は落ち着いてきます。
これまではここからは児童に辞書の活用はゆだねていました。
児童によっては、継続して辞書に付箋を貼り続ける子もいます。
また、付箋を貼らなくても、辞書を時々眺める子もいます。
しかし、辞書の活用が全くストップしてしまう児童も残念ながら毎年います。
そこで、付箋を貼るという活動は一段落したところで、シフトチェンジをして辞書の活用を継続していこうと考えました。

辞書の活用の場を作る

辞書の活用の場として、これまで通り国語の漢字学習で辞書を積極的に使うことにしました。新出漢字を学習した後にその漢字を用いた熟語を辞書でたくさん調べるようにしました。児童の中には、指示をしてもタブレットパソコンを使って調べている子もいますが、紙の辞書でまずは調べるように再度指示をしています。

児童は、
「先生、漢字ドリルに載っていない読み方があるよ」
「こんな難しい熟語もあるんだね。」
と、いつも興味津々で漢字学習に取り組むことができています。

3年生の1学期に辞書の学習を行い、そこであまり活用しなくなってしまう例が多くあると思います。私も以前はそうでした。そこで、少しの時間でも毎日のように辞書に触れる機会を意図的に作ることが児童が辞書を使いこなせるようにするためには必要だと思います。今年度は大変充実した活動ができました。来年度になって、漢字辞典の学習をした後にも取り組んでもらいたいと思っています。きっと、漢字に対する興味関心が高まり、漢字の力もついてくるはずです。引き続き、4年生でも担当したいとも思い始めています。こればかりは分かりませんが…

辞書があるのが当たり前に・・・

以前、同じ児童を3年生と6年生の時に担任したことがありましたが、辞書引き学習を3年生で十分に行った児童は、6年生になっても(辞書引き学習自体はやめてしまっていても)積極的に言葉の意味だけでなく、自分が知りたいことを自分で調べる習慣がついているように思いました。知りたいことがあったら人に聞くことも大切ですが、自分でまずは調べてみることが何より大切。そして、そのような力が今、求められているのではないかと感じます。

そこで、今後はさらに辞書引き学習を発展させて以下のような活動をしていきたいと思います。まずは、給食の時間に食材やメニューを辞書で調べる活動です。「和え物」や「カルボナーラ」など、普段耳にしない言葉やよく意味が分からない言葉が献立表にあったりします。それらを調べることで、給食の時間に新しい気付きを得ることができますし、食に対しての興味ももてるようになると思います。

また、毎朝の学活で児童に新聞記事の紹介を行っていますが、さらにそこで辞書引きの時間を設けたいと思っています。最近ではトルコの地震などについて取り上げ、いろんな話をしています。ここでも積極的に辞書を活用するようにしました。この時間には、紹介した記事の中に出てくる言葉を辞書で引き調べました。

例えば、
「『倒壊』って何だろう。地震に関係のある言葉だよね」
「トルコとかシリアという国の名前も調べてみよう」と、積極的に辞書を引く姿が見られます。記事に出てくる言葉について関心をもつことは、同時に社会に対する興味関心も高めることにつながると実感しています。

最後に、毎年行っている震災を取り上げた授業実践においても辞書引きの時間を設けたいと考えています。被災地の方について取り上げた記事を見ると、子どもたちにとって難しいと思う言葉がたくさん出てきます。

津波・震災・仮設・風評・原発…

これらの言葉について、辞書を引きながら記事を読むことによって、記事の内容を理解しやすくなるばかりでなく、言葉の力もついてきます。それは、学習している言葉が、社会の事象とダイレクトにつながっているからです。また、これらの言葉を意識することによって、ニュース等でこれらの言葉を耳にする際に関心を持ちやすく、内容を理解しやすくなるはずです。

このような工夫をして、児童の学習ツールとして辞書を活用していきます。

菊池 健一(きくち けんいち)

さいたま市立植竹小学校 教諭・NIE担当
所属校では新聞を活用した学習(NIE)を中心に研究を行う。放送大学大学院生文化科学研究科修士課程修了。日本新聞協会NIEアドバイザー、平成23年度文部科学大臣優秀教員、さいたま市優秀教員、第63回読売教育賞国語教育部門優秀賞。学びの場.com「震災を忘れない」等に寄稿。

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