地図帳の活用
今回はこれまで5回継続していました「書籍からの学びの具体」は一旦お休みし、社会科授業の一工夫という趣旨で「地図帳の活用」について述べたいと思います。地図帳は今回の学習指導要領改訂に伴い、3年生から使用することになりました。私たち(大人)の日常生活においても実はけっこう地図は活用されています。そういった意味でも、「地図が大好き!」とまではいかなくとも、「地図を見ることには抵抗がない」「地図はよくわかる」という大人になることは必要ではないでしょうか。そのためにも初等教育段階において地図に慣れておくことは重要だと考えます。
大阪市立野田小学校 教頭 石元 周作
地図とは?
地図帳の活用の前にまず、そもそも地図とは何でしょうか?
みなさんならどう答えるでしょうか。子どもたちに聞いてみたらどう答えるでしょうか。おそらく3年生でも「地図って知っていますか?」と聞くとほとんど全員知っていると答えるでしょう。なぜなら生活科の学習でもかなり地図は活用されていますし、日常の生活でも目にすることが多いからです。では、「どういうものを地図というのでしょう?」と聞くとどうでしょうか?なかなか難しいのではないでしょうか?
以下、自分が手持ちの書籍で確認してみました。
「実際の地形をあるわりあいにちぢめて平面上にあらわしたもの」金田一京助編著『例解学習国語辞典』小学館
「その地域の山・川・海などの状態や都市の分布などを、縮尺して平面に表した図」見坊豪紀他編著(1988)『新明解国語辞典 第三版』三省堂
「どこ(where)の情報を図で示したもの」羽田康祐(2021)『地図リテラシー入門』ベレ出版
「地球表面の全体または一部を縮小して、記号や文字を用いて平面に表現することで可視化したもの」若林芳樹(2022)『地図の読み方 作り方』ちくまプリマ―新書
「上から見た土地のようすをわかりやすくえがいたもの」次山信男監修(2020)『楽しく学ぶ 小学生の地図帳』帝国書院
どの説明も言葉にすると「なるほど」と思うと同時に、「だからどういうものなの?」とも思ってしまいます。場所の情報を可視化しているからこそ、言語化するのが難しいのかもしれません。ただ、地図帳の説明にある「上から見た」という視点はとても大切だと思います。日常生活の中で、「上から土地を見る」ことはあまりないからです。子どもたちが地図を見てもよくわからないのは、「この上から見る」実体験が少ないからだと思います。だからこそ、校舎の屋上や高いビルなどにあがる体験的な活動があるのでしょう。
もうひとつは縮尺の感覚です。これはかなり難しいと思います。これを無理やり言葉で説明するよりは、十分に地図に親しむことと「土地を上から見ているときにその高さの違いによって見え方が変わる」ということを感覚で理解することで十分だと考えます。
地図帳の活用
最初にいろいろと述べましたが、とにかく地図帳を使うことからわかってくることも多いので、まずは使ってみることです。読者のみなさんも様々活用されていると思います。そういった活用法を集めると面白いと思います。私が有効だと思ってよくやっていたことを紹介します。
(1)探す活動
ただ単純に地図帳の中のものを探しだす活動です。地図帳での活用法はこの「探す」活動がほぼ8割を占めるような気がします。シンプルな活動ですが、活動としては一番やりやすく、子どもにとっても楽しい活動だったようです。この「探す」活動を様々な方法で持続させていました。私は授業の最初の5分とか、授業が早く終わってしまった時などの隙間時間でやっていました。
①地図を閉じたままスタート。教師が言った地名を探す。索引を使用しても構わない。
→見つけたら挙手をします。これは主に索引の使い方を覚えるためにやっていました。もちろん索引を使わずにすぐに探し出す強者が現れるでしょう。
②ページを指定。教師が言った地名を探す。
→子どもの実態に合わせて5秒問題、10秒問題、30秒問題・・・などと言って難易度を変えてやっていました。全員挙手のために「2秒問題」と言って「日本はどこ?」などと若干ふざけながらやることもありました。授業に出てくる地名を選択することで授業との関連も作りだすことができます。
③ページを指定。子どもが言った地名を出す。
→子どもは問題を出すことが好きです。順番に出題していくのも良いかもしれません。子どもは難しい問題を出すのが好きなので、一番小さな字で書かれた地名を出題する傾向が高いです。これで面白い呼び方の地名に子ども自身が気づくことが多いです、
④ページを指定。地図帳に描かれた絵を探す。
→地図帳に描かれた特産物(農産物・海産物)や工業製品や動物などを探します。教師の出題、子どもの出題のどちらでも良いでしょう。各地の特徴を自然と覚えていったりします。シンプルに楽しい活動です。
⑤ページを指定。地図帳に描かれた歴史に関係する遺産を探す
→私が使用していた地図帳は歴史に関係する遺産等は青文字で掲載されていました。そのため、その青文字を探すということです。6年生で地図帳の活用が減るからこそ、できる活動だと思います。これも子どもたちが自然と探すようになります。
(2)指でなぞる活動
地図帳を活用する活動として昔から実践されている活動です。ある地名を指定し、そこに指を置きます。道路や川をなぞっていきます。「では、そこから東に向かいます。東へどんどん進みます。海にぶち当たってそこから北に向かいます。そうすると○○山脈の麓につきました。さて、今どこにいますか?」などと聞いて場所を当てます。方位と地名の学習になると思います。「指旅行」と言われている実践です。これもシンプルですが、子どもは楽しかったようです。子ども同士での活動も可能です。
(3)旅行の計画を立てる
自分が行きたい場所を決め、地図帳を見ながら旅行の計画を立てます。寺本(2020)は観光資源を6つに分類すれば(自然・歴史・食・生活文化・イベント・施設)考えやすいと述べていますが、大変参考になります。地図帳で「生活文化」(方言・生活習慣・年中行事など)に関するものは少ないでしょうが、あとの5つの分類は地図帳からも探すことが可能でしょう。これは大人でも(のほうが?)楽しいかもしれません。自分が知らない土地のことに興味を持たせるきっかけにもなりますし、あえて旅行場所を限定しても面白いかもしれません。
地図帳の活用方法については、様々な書籍がありますので、参考にできるものはどんどん取り入れて子どもが楽しめるものを探っていったら良いと思います。子どもの学力差があまり関係ない活動も多い印象があります。休み時間に子ども同士で地図帳を開きだすくらいになれば・・・と思います。
参考資料
石元 周作(いしもと しゅうさく)
大阪市立野田小学校 教頭
ファシリテーションを生かした学級づくりと社会科教育に力を入れて実践してきました。
最近は、書籍からの学びをどう生かせるかや組織開発に興味があります。
統一性がない感じですが、子どもの成長のために日々精進したいと考えています。
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