2022.06.29
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「国語授業」の説明書〜国語の根本・本質・原点〜(14回)

説明文の授業は難しいです。説明文は、文章を読んでおわりになってしまうことが多いからです。しかし、そのような授業では、子どもの意欲は上がりづらいと考えます。
説明文を指導する上で大切なことは「中身」「仕組み」「読み方」を教えることです。では、どのように授業をすればよいのでしょうか。今回は「説明文の指導法」についてお話しします。

木更津市立鎌足小学校 山本 裕貴

【説明文の指導】

国語で行われる読む活動の文章は大別すると2種類あります。「物語文」と「説明文」です。これらはどちらが優れているということはなく、どちらも子どもの学力形成に必要な教材となっています。

東京都教職員センターが行った調査によると、物語文と説明文では、物語文の学習の方が好きだと答える子どもが多かったそうです。これは、教師にも当てはまるのではないでしょうか。
物語文の授業が大好きという先生とは、数多く出会ったことがあります。しかし、説明文の授業が大好きと答えるのは、今まで1人しか出会ったことがありません。

【説明文の授業は、なぜ不人気なのか】

説明文の指導は、知識の導入に偏ってしまうことがあります。説明文とは「説明をしている文章」ですから、内容も一読すれば分かることが多いです。そもそも、子どもでも分かりやすいように書いているので、当たり前かもしれません。

そのような教材の特性から、説明文の授業に苦手意識を持っている先生が多いように感じます。かく言う私も、その1人でした。初任者の頃は、物語文より説明文の方が好きでした。授業で教えることが明確だからです。
しかし、経験を重ねていくなかで、次第に説明文の授業が苦手になってきました。その理由は、つまらない授業しかできないからです。文章に書かれている内容を教え込んで終わりにしてしまうこともありました。

「このままではいけない」と思い、説明文の指導法を学びました。そこで、出合ったのが、植草学園大学名誉教授である野口芳宏先生の理論です。野口先生は、説明文の授業で教えるポイントは3つとしています。それは、どのようなものなのでしょうか。

【な・し・よ】

端的に表すと以下の3つです。

1  中身
2  仕組み
3  読み方

中身というのは「文章の中に書かれている内容を理解させる」ということです。説明文は、何かを説明しています。書かれている内容を理解することで、知識を獲得することできます。

仕組みというのは「文章の構成を理解させる」ということです。説明文は、はじめ・なか・おわりに大きく分かれます。そして、段落として細分化されています。文章の構成を理解することで、説明の全体像を捉えやすくなります。

読み方というのは「他の教材にも適用できる力を付ける」ということです。授業で扱った説明文のみを読めても、あまり意味がありません。学習用語を教えることで、他の説明文も自力で読むことができる力を付けるのが大切です。

野口先生は、この3つの頭文字を取って、説明文指導は「な・し・よ」だけ教えればよいと仰います。では、実際の授業では、どのようにしていけばよいのでしょうか。

【CASE14 うめぼしのはたらき】

教育出版3年に記載している「うめぼしのはたらき」を例に挙げて解説します。

◯習得学力
1  梅干しの働きに関する知識(中身)
2  説明文を自力読みできる技能(仕組み、読み方)

◯単元計画 全2時間

☆1時間目の流れ 

本時の目的→文章の概要を掴み、文章構成を理解する。

・梅干しについての興味・関心を高める
教師「梅干しについて、知っていることはありますか?」
→児童「お弁当に入っています」「すっぱいです」
※説明文の内容を、読みたいという気持ちを持たせる

・教師の範読を聞く(中身の指導)
教師「梅干しには、どんな働きがあるのか、想像しながら聞いてください」

・段落に分ける(仕組みの指導)
教師「教科書に段落を書いていきましょう」
学習用語「形式段落」を教える(読み方の指導)

・はじめ・なか・おわりに分ける(仕組みの指導)
教師「【はじめ】と【なか】はどこで分かれますか。ノートに書いてください」

→児童「段落1が【はじめ】で段落2からが【なか】だと思います。なぜなら~」
「段落2までが【はじめ】で、段落3からが【なか】です。理由は~~」
​​​​​​​
※正解は【はじめ】①②、【なか】③④⑤、【おわり】⑥である
この説明文は、話題提示、事例説明、結論で分かれている
学習用語「序論・本論・結論」を教える(読み方の指導)


☆2時間目の流れ 

本時の目的→文章の内容を理解する

・本時のねらいを明らかにする
教師「今日の学習は、文章を正確に理解していくことです」

・問いと答えを探せる(中身の指導)
教師「筆者は、どんな疑問を読者に投げかけていますか」
学習用語「問いの文」「答えの文」を教える(読み方の指導)

問いの文→わたしたちは、なぜ、そんなにすっぱいうめぼしを食べるのでしょう
答えの文→うめぼしが、わたしたちの体にとって、いろいろとよいはたらきをするからです

・形式段落の内容を読解させる(中身の指導)
教師「うめぼしの良い働きを、ノートに書きましょう」

良い働き1→食べ物の消化をたすける
良い働き2→塩分を補う
良い働き3→食べ物が悪くなるのを防ぐ

・学習用語「中心となる文」を教える(読み方の指導)
教師「良い働きを説明しているところに、線を引きましょう」

良い働き1→わたしたちの体は、すっぱいものを食べると、たくさんのつばを出します
つばには、食べ物の消化をよくするはたらきがあるので、うめぼしを食べると、食べ物の消化がよくなるのです

良い働き2→わたしたちの体は、塩分が足りなくなると、十分にはたらかなくなってしまいます
あつい時や運動をした時にあせをかくと、体から塩分が出てしまいます
そのような時に、うめぼしを食べると、うめぼしの塩分が、体の塩分のりょうを、 正しくたもってくれるのです

良い働き3→食べ物がわるくなるのは、食べ物の中でさいきんがふえるからです。
うめぼしのすっぱさは、このさいきんがふえるのをふせぎ、わたしたちのおなかをまもってくれるのです。

・内容を要約させる(中身の指導)
教師「大切だと思うところを、短くまとめて書きましょう」

学習用語「要点」「要約」を教える(読み方の指導)

<教師作例>
うめぼしは、なぜ昔からずっと食べられてきたのでしょうか。それは、体にとってよい働きをするからです。   
うめぼしは、体によい働きが3つあります。「消化をたすける」「塩分をおぎなう」「食べ物がわるくなるのをふせぐ」です。
お弁当にうめぼしを入れるのは、これらのよい働きを生かすためなのです。(140字)

以上のような流れで授業を展開することで「梅干しの働きに関する知識」が身に付き、「説明文を自力読みできる技能」が習得できると考えます。少しでも参考になればうれしいです。

というわけで今回は「説明文の指導法」における習得学力を明確にした国語授業についてお話しました。次回は「俳句」についてお話ししたいと思います。ここまでお読みいただき有難うございました。

参考:教育研究員報告書国語 東京都教職員センター 2004

山本 裕貴(やまもと ゆうき)

木更津市立鎌足小学校
千葉大学大学院教育学研究科学校教育学専攻
木更津技法研所属

高校、特別支援学校、小学校算数専科を経て、現在小学校の学級担任をしています。
人を幸せにするには、どうすれば良いのか。たどり着いた答えが小学校の先生でした。
教育の根本・本質・原点を問い続けていきます。

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