2022.01.18
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「国語授業」の説明書〜国語の根本・本質・原点〜 (6回)

世の中に溢れている文章の殆どは説明文です。説明文を正確に読むことは、社会生活を送る上でとても大切なことだと考えます。では、どのように指導したら良いのでしょうか。今回は『固有種が教えてくれること』(小5・国語)に焦点を当ててお話しします。

木更津市立鎌足小学校 山本 裕貴

【国語教材の分類】

国語の教科書には、多くの教材が載っています。それらは以下の3つに大別することができます。

1物語文
2説明文
3詩歌

それぞれの教材に優劣はなく、子どもの学力を形成する上で適切に使い分ける必要があります。 
さて、この中で最も私たちにとって身近なものはどれでしょうか。それは「説明文」です。私たちの身の回りにある文章は殆どが説明文です。例えば新聞、雑誌、教科書(国語、道徳を除く)、看板などです。それを考えると、説明文指導の重要性を感じます。

【なんのために読むのか?】

子どもは「なんのために」説明文を読むのでしょうか。私は「知識を増やすため」だと考えます。私たち大人も説明文を読むときは、情報を得たいときです。華麗なレトリックに触れたくて、新聞や雑誌を読む人はあまり多くないと思います。そういった役割は文学が果たしているからです。
よって説明文指導で大切なことは「内容理解」と「構造理解」だと考えます。この二つを指導することが子どもの「知識を増やす」ことに繋がります。順に説明していきます。

内容理解とは、その文章にどのようなことが書いてあるのか、読むことでどんなことが分かったのかということです。書いてある内容をしっかり理解させることで、子どもは説明文を読むメリットを感じることができます。
構造理解とは、その文章はどのような構成で書かれているのか、資料と文章はどのような関わりがあるのかを理解することです。構造を理解することで、子どもが自らの力で説明文を読むことができるようにしていきます。
では、どのように指導すればよいのでしょうか。具体例を挙げてお話します。

【CASE6 固有種が教えてくれること】

今回は光村図書5年『固有種が教えてくれること』の単元計画をお話しします。

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〇習得学力
1 資料と文章を整合させる力
2 固有種に対する理解

〇単元計画 全4時間
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☆1時間目の流れ 

本時の目的→教材前半の概要を理解する

教師「説明文の前半を読んでいきます」
・形式段落を教科書に書き込ませる
・教師が解説や発問をはさみながら範読する

発問例
「固有種の定義を書き抜きましょう」
→特定の国や地域にしかいない動植物

「資料2を説明している文はどこですか」
→アマミクロウサギの生息する南西諸島は、更新世前期に大陸から切り離されて島になりました

☆2時間目の流れ 

本時の目的→教材後半の概要を理解する

教師「説明文の後半を読んでいきます」
・教師が解説や発問をはさみながら範読する

発問例
「ニホンオオカミの写真は載っているのに、ニホンリスの写真がないのは何故ですか」
→絶滅した動物の写真だけ載せているから
→ニホンリスは絶滅していないので、写真を載せることで観光客が探しに行ってしまう可能性があるから

「筆者の最も伝えたいことをズバリ一言で書きましょう」
→固有種が住む豊かな日本の環境を守っていくことが、私たちの責任である

☆3時間目の流れ 

本時の目的→要約し、重要な情報を確かめる

教師「形式段落は11あります。それぞれ要約していきましょう」
・1段落を一斉に音読させる
・1段落を要約させる

この手順を繰り返し、要約していく

要約例

1  特定の国や地域にしかいない動植物を固有種という
2  固有種たちが住む日本の環境をできる限り残していきたい
3  日本はイギリスと比べると、固有種が多い
4  その理由は、大陸と陸続きだったから
5  固有種は、他の地域と分断されることによって生まれる
6  イギリスは新しい時代に分断されたから、固有種がいない
7  日本は南北で気候的な違いが大きく、平地や山岳など変化に富んでいる環境である
8  人間の活動によって、固有種が減少している
9  固有種の積極的な保護が行われている
10 固有種の保護は生息環境の保護とのバランスが重要である
11 私たちの責任は、日本の豊かな環境をできる限り残すことだ

☆4時間目の流れ 

本時の目的→構成を理解する

教師「構成について確かめていきましょう」
・序論、本論、結論の構成を確認する

教師「初めと終わりに筆者の伝えたいことが書いてあります。これは何型ですか」
・双括型であることを確認する

教師「要旨をまとめましょう」
・文章の要旨を150字程度でまとめさせる

※外してはいけない要素
「固有種は生物の進化や成り立ちを教えてくれること」
「日本は豊かで多様な環境があり、守っていくことが大切」

以上のような流れで授業を展開することで「資料と文章を整合させる力」が身に付き、「固有種に対する理解」が深まると考えます。少しでも参考になればうれしいです。

というわけで今回は「固有種が教えてくれること」における習得学力を明確にした国語授業についてお話しました。次回は「グラフや表を用いて書こう」についてお話したいと思います。ここまでお読みいただきありがとうございました。

山本 裕貴(やまもと ゆうき)

木更津市立鎌足小学校
千葉大学大学院教育学研究科学校教育学専攻
木更津技法研所属

高校、特別支援学校、小学校算数専科を経て、現在小学校の学級担任をしています。
人を幸せにするには、どうすれば良いのか。たどり着いた答えが小学校の先生でした。
教育の根本・本質・原点を問い続けていきます。

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