「国語授業」の説明書〜国語の根本・本質・原点〜(11)
音読は子どもの学力形成をする上で、非常に大切な活動です。しかし、音読の仕方について力を入れて指導する先生は少ないように感じます。というわけで今回は「音読」に焦点を当ててお話ししたいと思います。
木更津市立鎌足小学校 山本 裕貴
【2種類の読み方】
私たちは、生活の中で多くの文章に出合います。そしてその読み方は大きく2つに分けることができます。それは「黙読」と「音読」です。私たち大人は、大抵の文章は「黙読」するでしょう。それで十分に目的を達成できるからです。
しかし、子どもにとって黙読のみでは目的が達成できない場合があります。なぜなら子どもは文章を読むことで「学力形成」しなければならないからです。そういった場合、「音読」が非常に有効となってきます。というわけで今回は、音読をテーマにお話しします。
【音読の三機能】
国語授業において、小学校では音読が数多く行われています。宿題で音読を出す場合も多いと思います。しかし、音読がどのような機能を有しているか考え、音読の仕方を指導している先生は、それほど多くないように感じます。「国語は、取り敢えず音読させておけばよい」と考えている先生がいないことを願ってはいますが。
私は音読には3つの機能があると考えています。
1.記憶機能
2.読解機能
3.意欲向上機能
の3つです。簡単に説明していきます。
「記憶機能」とは、音読をすることによって、記憶に残りやすくなるということです。どうしても暗記しなければいけないものは、声に出して覚えますよね。五感を使うことで、記憶に残りやすくなるのです。
「読解機能」とは、音読によって、内容をより深く読むことができるということです。例えば、私の師である野口芳宏先生のごんぎつねの発問に次のようなものがあります。
「ごん、おまいだったのか」は上げて読むか、下げて読むかというものです。正解は上げて読むです。なぜなら、兵十はそれまでお礼をしていたのがごんとは知らなかったのですから、驚くのは当たり前でしょう。このように音読によって文章の深層に辿りつくことができます。
「意欲向上機能」とは、音読することで、読むことが楽しくなるということです。精錬された文学はリズム的に美しく、声に出すことでより楽しむことができます。また、子どもは声に出して読むことが大好きです。どんどん音読させましょう。
【CASE11 かえるのぴょん】
では、どのように音読の授業を行えばよいのでしょうか。今回は教育出版3年に載っている「かえるのぴょん」を例に解説します。
〇習得学力
1 正しい音読の理解
2 詩に対する読解力
〇単元計画 全1時間
☆1時間目の流れ
本時の目的→正しい音読の仕方を知り、詩を楽しむ
・題名、作者名を提示する
『かえるのぴょん 谷川俊太郎』
教師「先生が黒板に書いていきます。みなさんはノートに書きましょう」
・教師が先に音読し、正しい音読の仕方を教える
教師「かえるのぴょん 谷川俊太郎 さんっはいっ」
児童「かえるのぴょん 谷川俊太郎」
※題名と作者名は大きく間を取ることを教える
→これを教えないと子どもは「かえるのぴょん谷川俊太郎」と間を空けず、続けて読んでしまう
・1連を提示し、音読のポイント教える
『かえるのぴょん
とぶのが だいすき
はじめに かあさん とびこえて
それから とおさん とびこえる
ぴょん』
教師「1行目のぴょんと5行目のぴょんは同じだと思う人は◯、違うと思う人は×を書きましょう」
→正解は× 1行目は蛙の名前、5行目は跳躍による擬音である。
従って後者は「ぴょんっ」と跳ねるように差をつけて読まなければならない
教師「心地よく聞こえる部分に線を引きましょう」
→3行目と4行目が「4、4、5」のリズムが重なっており、心地よく聞こえることに気付かせる
・教えたポイントを意識させ、音読させる
→1回目より上手になった子を褒める
・学習用語「連」を教える
教師「詩は連という単位で分けることができます」
・2連を提示し、音読のポイントを教える
『かえるのぴょん
とぶのが だいすき
つぎには じどうしゃ とびこえて
しんかんせんも とびこえる
ぴょん ぴょん』
教師「5行目の前のぴょんを大きく読むと思う人はA、後のぴょんを大きく読む思う人はBと書きましょう」
→正解はB 跳び越えるものが徐々に大きくなっていることに気付かせる
・3連を提示し、今までのポイントを意識し音読させる
『かえるのぴょん
とぶのが だいすき
とんでる ひこうき とびこえて
ついでに おひさま とびこえる
ぴょん ぴょん ぴょん 』
※跳び越えるものが徐々に大きくなっていき、お日様も飛び越えるという文学的ユーモアを味わわせる
・発問をする
教師「かあさんと、とうさんは、どちらが大きいでしょうか」
→正解はとうさん。跳び越えるものは後に出てくるものの方が大きい。よって、かあさんの次に出てくるとうさんのほうが大きくなくては整合性に欠ける。そのような論理的な鑑賞の仕方を教える
・教科書の次ページにある4連の内容を考えさせる
教師「実はこの後には続きがあります。どのような内容か考えましょう」
→論理的に認められる条件は「おひさまより大きなもの」「リズム感のある文脈」である
例 どせいの わっかも とびこえて
とうとう ぎんがも とびこえる など
・4連を提示する
『かえるのぴょん
とぶのが だいすき
とうとう きょうを とびこえて
あしたの ほうへ きえちゃった
ぴょん ぴょん ぴょん ぴょん』
※最後は物理的大きさではなく、時間を飛び越えることに気付かせる
・今日学習したことを、音読の宿題にときにも活用するように伝える
以上のような流れで授業を展開することで「正しい音読の理解」が深まり、「詩に対する読解力」が身につくと考えます。少しでも参考になればうれしいです。
というわけで今回は「国語の授業開き」における習得学力を明確にした国語授業についてお話しました。次回も「国語辞典の使い方」についてお話ししたいと思います。ここまでお読みいただき有難うございました。

山本 裕貴(やまもと ゆうき)
木更津市立鎌足小学校
千葉大学大学院教育学研究科学校教育学専攻
木更津技法研所属
高校、特別支援学校、小学校算数専科を経て、現在小学校の学級担任をしています。
人を幸せにするには、どうすれば良いのか。たどり着いた答えが小学校の先生でした。
教育の根本・本質・原点を問い続けていきます。
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