2023.09.14
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普段の授業にひと工夫 主体的に学ぶ授業へ「タイムトライアル」(第2回)

ここでは、主体的に学びたくなるきっかけをどうつくるか、私なりの実践を例示しながら具体的に紹介します。今回は「タイムトライアル」です。主に「知識・技能」「主体的に学習に取り組む態度」を高めるのに役立ちます。クラスで協力して行えば、協働的な学びも実現することができます。私の経験では、これをきっかけに、家で復習する子が増えました。

東京都品川区立学校 平野 正隆

⑴「タイムトライアル」概要

算数科の計算練習をする場面、社会科の都道府県の位置と名前を覚える場面など、反復が必要な学習では時間を計るようにしています。
こうすることで、子供たちの集中力が高まります。

⑵計算タイムトライアル

算数科の計算問題であれば、まず5問を何分で解けるか計ります。丸付けして、直しをした後、もう一度同じ問題に取組みます。すると、最初に解いた時より短い時間で解ける子が増えます。
「えっ!!30秒も短くなったの!?」なんて教師が大袈裟に驚けば、「3回目も、やりたい!!」という子が出てきます。ここで重要なのは、記録を褒めるのではなく、短縮させた時間を褒めることです。算数は、習熟度に差がある教科なので、人と比べるのではなく、過去の自分と比べてどうだったかに着目し、自らの成長を喜べるようにします。
最後に、「もう授業の時間がないから、もし可能なら家でやってみて。やったら何秒縮まったか、明日先生に教えてね」と返します。すると、家で5回、6回やってくる強者も出てきます。

⑶国名タイムトライアル

社会科の授業で、教師が地図上で指し示した国を一人ひとつ答えていくのをリレー形式で学級全員が行い、その時間を縮める取組です。
これは、苦手な子にプレッシャーがかかりすぎないように配慮する必要があります。苦手な子には、分かりやすい国があたるようにします。
また、1回目の記録をとったあと、「復習タイム1分間」と言えば、苦手な子を多くの子が支援しに集まります。教師は遠くから支援の様子を見守り、どの国なら答えられるかを把握します。
ここで重要なのは、良い記録を出すことを目標にするのではなく、前回の記録を超えることを目標にすることです。その意図が伝われば、子どもたちが互いに助け合いながら協働的に学習に取組むようになります。

⑷都道府県タイムトライアル

「都道府県を指で指し示しながら1分以内で言おう。クラスみんなが●月中に達成できるといいですね」という目標を伝えます。授業ではその方法を紹介するに留めます。
すると、クラスの数名の子が家でも練習を重ね、早々に目標を達成してきます。休み時間を使って聞いてあげて下さい。そして、達成した子に「30秒以内に言えたらミニ先生になれるよ」と伝えます。ここでいうミニ先生になると、都道府県を覚えるサポートをしたり、時間を計ったりできる権限を得られます。

翌日には何人かの子が、ミニ先生になります。このへんから、都道府県タイムトライアルブームが徐々にクラス内に湧き起こります。ミニ先生もどんどん増えていくので、時間を計るのは子どもたちに任せ、教師はそのブームにのりきれない子をミニ先生につなぐサポートをします。あとは、子どもたちが休み時間や放課後に自分たちで記録を競い合ったり、苦手意識を持っている子を助けたりしていきます。

⑸おわりに

紹介した通り、タイムトライアルのやり方は様々です。個人やクラスで記録を伸ばしたり、助け合って合格ラインを全員で乗り越えたりします。気をつけなければいけないのは、苦手意識をもたせないようにすることと、夢中になりすぎて「知識・技能」の習得にのみ授業時間を費やさないことです。

時間を計ることは、学習した成果や自らの成長を実感しやすいため、主体的な学びにつながります。うまくこの取組を活用して、子どもたちの興味関心を引き出していただければと思います。

平野 正隆(ひらの まさたか)

東京都品川区立学校


研究会での実践報告や校内での若手教員育成などの経験を通して、自分の経験や実践が広く皆様のお役に立てるのではないかと考えております。大人・子どもに関わらず、「明日から頑張れそうです」「明日が来るのが楽しみです」と言ってもらえるのが私の喜びです。

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