2024.09.28
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先生にとっての 何だかとても大切なもの 先生こそ教わる体験はいかが、たとえば季節ごとの自然観察会とか

中秋の名月ご覧になりましたか。今年はなかなかにきれいでしたね。都市化でいくら緑が遠く感じるようになったとはいえ、近くのお店のハンバーガーにも取り入れられるほどに、こうした自然の営みと私たちはやっぱりつながっているんだなと思います。
記録的な暑さであっても朝夕少しだけ秋の気配を感じるこの頃、私の住んでいる地域でもあちこちで自然体験イベントや活動が行われるようになりました。
今回は、いつもは子どもに教える側の私たちも、教わる側を手軽に体験できるイベントのおすすめです。

静岡市立中島小学校教諭・公認心理師 渡邊 満昭

自然観察会での出会い

こんな自然の中で教わる体験いかがです?

 

学校では、教育的な活動を通じて自然のありがたみや良さなど子どもたちと自然の関わりをつなぐ場を懸命に作ってきました。でもなんでそんなことをするのでしょうか。

指導要領等で定められている部分もありますが、先生それぞれの小さい頃からの「自然っていいな」という体験の積み重ねが、きっとそうさせているとも思っております。

私も遊び場はいつも海・山・川だったので、自然好きの自負も持ちながら先生になったのでした。

さて、ふとしたことから地域の自然観察会に参加したのをきっかけに、このイベントのすごさに気がつかされたことがありました。自然観察会とは、植物や地形、鉱石などを野外で詳しく解説するだけなのではないかと思っていたのですが、どうしてどうしてそんなことはありませんでした。実はそこには、私たちが教室や校庭で使える様々なエッセンセンスがぎゅっと凝縮されていたのです。

野外という不安定かつ不確実な場で、経験や年齢もバラバラな参加者たちに、自然解説インタープリターの皆さんは、さまざまな手立てで自然の良さや自分たちの想いを伝え気づかせていくということを取り組みとしてやっているわけなのですから。

一回、一回全く違う自然環境や状況、天気、天候の中でも、参加者の主体性を尊重しつつ、安全を確保もしつつ大事なところを確実に伝えるというような取り組みとなるわけなのです。これは、教室内環境よりもはるかに厳しい状況にあると思います。

しかし、熟練されたインタープリターはそんなことはものともせず、あっという間にその参加者集団の心をつかむのです。

「そんなことはわかっている」ではなくて、やっぱり一度他者の優れた技量に触れてみるのも良いのではないかと思います。野外における安全確保の技術もすごいと思います。その世界にはその世界のプロがおり、優れた知見や技術がそこにある事を実感できると思いますよ。

教わる教える体験のありがたさ

新たな技術革新やイノベーションが、どんどんこの野外活動分野にも取り入れられています。スマホやアプリでの動植物解説やマップ・GPSを使ってのルート設定・確認などいろいろありますが、やはりそこは、インタープリターの人間的な魅力や行動・視点のたしかさが私たちには一番参考になりますね。

私はそういった観察会に自分が参加することで、教わる側の体験をしつつ新たな方法論を教室内にも持ち込んだり、教室内での手法が野外で通用するのかどうかインタープリターとして検証したりしてみました。この体験は、授業中の子どもたちの心情や手立てのありかたと子どもの行動予測などでとても参考になりました。

学校での現実的な課題解決のヒントもそこにあります!

例えばとても活発で落ちつかない印象の参加者にじっくり考えたり観察できる機会を作るには、最初にある程度の運動量を確保し一汗かいたあとで、休みがてら繊細なものに着目したり考えたりするなどの巧みなプログラム構成で対処できたりするのです。これは授業の構成上とても参考になります。

なかなか人前に出ての活動や発言ができない子には、自然物を介したり、徐々に体験を積み上げたりするなど自ずと話したくなるプログラムもあります。こうした野外の場を通じて自分のあり方を少しずつ変える事ができた事例もありますよ。

一番すごいなと思うのは、私たちが総合的な学習の名や各教科の自由進度学習等で常に追い求めている「一人一人が自分たちで追究を始める力」を生み出すヒントがもらえることです。以前にも話したとおり、子どもたちがどんどん動き出す「湧く」瞬間を生み出すには、ちょっとハードルがあります。それを野外観察会では、極めて短時間で実現して見せてくれたことがありました。参加者としての自分も、もう夢中で自然の捜し物をしたり相手とテーマに沿って話し込んだりするわけなのです。先生にとっての何だかとても大切なものは、こんなところにもある気がしますね。


自然ベースのさまざまな体験をお持ちの先生でもそうではない先生であっても、できれば自然がいつも以上に魅力的に見える季節の変わり目シーズンをぜひご活用いただき、さまざまなイベントに参加されてはいかがでしょうか?

ご自身のリフレッシュと同時に、新たな教室経営のヒントや視点が見つかるかも知れませんよ。

渡邊 満昭(わたなべ みつあき)

静岡市立中島小学校教諭・公認心理師・学校心理士・環境教育インタープリター・森林セラピスト


いつの間にか、小中学校全学年+特別支援学級+特別支援学校+通級指導教室での担任を経験し、生徒指導主任+特別支援教育コーディネーター+教育相談担当経験も10年を超えていました。すると担任を離れたとたんに何かを忘れてしまって、担任に戻ってみると忘れていたことに気がつくということがたびたびありました。それはうまく言えないけど何だかとても大切なもの。先生を続けていくための糧のようなもの。
その大切なものについて、自分の実践と合わせお伝えしていこうと思います。

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