単学級小学校での学級経営の1年~10月の学級経営で大切にしたいこと(9)
旅行的な行事や運動会、学習発表会などの大きな行事が10月になると少し落ち着く時期と言えるかもしれません。 そんな時だからこそ、学級経営を見つめなおす機会にしたいと思います。
北海道公立小学校 教諭 深見 智一
いま、振り返ってみると…「うまくいっていないな」と気づいていた時
単学級の担任をしていた頃を思い返してみると、児童が下校した後、翌日の授業準備にすぐに取りかかれていた時は、なんとなく学級経営が順調にいっていたのだと思います。逆に、うまくいっていない時は、児童同士のトラブルがあって、管理職に報告したり、家庭に連絡したりしなくてはならないことが多く、授業準備がどうしても後回しになってしまうということが多かったように思います。
対応し終えたら、もう退勤時間をとっくに過ぎていて、体力もやる気もなくなってしまう…ということもありました。そうすると、「授業準備が十分にできていない」→「授業がうまくいかない」→「子どもたちが騒がしくなる」→「注意する」→「子どもたちが言うことを聞かなくなる」→「また、注意する」→「子どもたちは反発する、保護者からクレームが来ることもある」→「やる気が出なくなってしまう…」という負のスパイラルに陥ってしまいがちです。そうならないために、ちょっと「うまくいっていないな」と気づいた時に、手を打つ方法を私の経験のなかから3つ紹介したいと思います。今回は、その一つ目です。
その1 1日のうちどこか1時間の授業は、とくに念入りに授業準備する。
経験年数が浅かったころは、「こんな授業で申し訳ないな…」と思うことが本当によくありました(今もありますが…)。この授業で、子どもたちに「しっかり話を聞きましょう」と注意するのは悪いなと思いつつも、「教師の威厳を示さなきゃ」という変なプライドがあり、「その授業態度は何だ!」というオーラを発していたことも多々ありました。授業がうまくいかず、授業中に子どもたちに休憩時間という名のおしゃべりタイムをつくっていた時もありました。今思えば、本当に無茶苦茶なことをしていたと思います。
そんな時、ある先生から、「全部の教科は無理だからさ。せめて、1日1回くらい『なんか、楽しかったなとか、分かったな』と思える授業をしたらいいんじゃない」というアドバイスをいただきました。私を安心させようとしてくださった助言だと思いますが、これはとても助かりました。「1時間分なら…」という思いを持たせてくれたように思います。
さっそく、アドバイス通り、1日1時間分の授業だけは、他の教科よりも増して教材研究に熱心に取り組みました。本当に初期のころは、授業で何を指導するかを書き出すのが精一杯でした。それを続けていくうちに、ただ教師用の指導書を見て授業をするのではなく、「こんな発問なら子どもたちもたくさん手を挙げてくれるかな?」と考えたり、板書計画を作成したり、実際の授業で児童が書くノートを作成したりするようになっていきました。楽しいとまでは言えなかったかもしれませんが、その時のできる限りの「分かりやすい授業」づくりを心掛けられるようになっていきました。さらに、クイズを取り入れたり、何か「モノ(実物)」を持ち込んだりして、何とかして子どもたちの気持ちを引き付けられないかなと意識を高められないかと考えるようにもなりました。
結果的には、毎回伝わっていたかどうかは分かりませんが、授業中にトイレに行きたいと言う児童は確実に減りました。1教科だけでも頑張ってみると、それがほかの教科にも波及して、「あ、こうやって授業準備をしたらいいんだ」ということを学ぶことができました。
相変わらず、自信のないまま教えている教科もたくさんありました。家庭科の裁縫の授業では、子どもたちから「先生、やり方が教科書と違います(笑)!」と授業中に大きな声で指摘されることもありました。それでも、学級の雰囲気が上向きだと、子どもたちが笑いながら言ってくれるようになったので、少し安心してしまっている自分もいました(本当はそれではダメなのですが)…。
成果が出るまで時間がかかるように思うこともありましたが、あきらめずに続けてみて良かったと思います。そういう経験があったからこそ、多少の気流の乱れには耐えられるようになってきたのかなと…。次回は、うまくいっていないなと思うときの手立て②「学級のすべての子どもたちと話す機会を意図的につくる」ことを紹介できればと思います。
深見 智一(ふかみ ともかず)
北海道公立小学校 教諭
書籍等で取り上げられることがあまり多くない1学年につき1学級の単学級の学級経営、複式学級の学級経営について、これまでの実践や量的調査の結果をもとに、効果的な実践例を発信していきたいと考えています。
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大阪大谷大学 教育学部 教授
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