個別最適の難しさ
個別最適な学び,指導の個別化・学習の個性化。
大事なのは分かるけど,本当にできるのか。
そう思われている方もおられるのではないでしょうか。
私もそう思っていた一人です。この記事を読んで,考え方が少しでも良い方向へ進んでいってくだされば幸いです。
岡山県赤磐市立桜が丘小学校 指導教諭 古市 剛大
前回書いた,やろうと思っていたけどできていないこと。
私の場合は落語を見に行くこと。
ついに行ってきました。小さな会場だったこともあり,すぐ目の前には高座が。運よく一番前に座ることができ落語を堪能しました。演目は「相撲場風景」と「ちはやふる」。初めて生で見て,一人で何役も演じ分けているのにちゃんとその姿が目に浮かぶということに驚きました。さらにその落語家さんは,話す内容を決めずにお客さんの様子を見て演目をその場で決めていると言われていました。その場ですぐに演目を決めて話さなくてはいけないので話をなるべく多く覚えるのだと。いい経験ができました。
さて,私が行った寄席では,落語以外にマジックもありました。聞くと,マジシャンの方はプロではないとのこと。ロープやトランプなどを使ったマジックを見せてもらったのですが,気になることが。
それは「上手くできるか分かりませんが」という言葉。実際に途中,失敗する場面もありました。(わざとなのかもしれませんが)
見ている我々に気を使って言ってくださったのかもしれませんが,それを聞いてからわくわくよりも心配が大きくなってくるのです。こうなるとマジックの驚きどころではなく,上手くできたことにほっと一安心,きっと周りのお客さんもそうだったことでしょう。
人前に立つのなら,せめて堂々としなければいけないのだなと感じてしまいました。
研究授業が始まる直前に授業者の先生が
「先生,とても緊張しています」と子どもに言ってしまうこと。
実践発表の冒頭で,自分なんてまだまだです,のような自信のなさそうな態度やしぐさ。
聞いている子どもや参加者はきっと不安に感じるのでしょうね。
先生も落語家もマジシャンも,前に立ったら堂々としているのが一番。
では,拙い原稿ですが読んでやってください笑
令和の日本型学校教育を目指して
書店でも,研修会でもよく耳にするようになってきました。
【主体的・対話的で深い学び】を実現するために,個別最適な学びと協働的な学びの一体的な充実を図る。
多くの先生方が実践を積み重ねられていることと思います。
ただ一方で,肯定的に捉えられていない先生方がいるのも事実だと思います。
私自身も個別最適な学びの実践をする中で難しさを感じることもあります。
端的に言うと
「本当にそんなことができるのか」
学習方法を子どもに決めさせると,みんなパソコンしか使わなくなる!?
授業の中で何かを調べたり何かにまとめたりする場面。
「〇〇を使って調べましょう」「まとめる時には〇〇でします」ではなく,子どもたちが主体的に学べるように,自分で決めた方法で学べているかを振り返って次につなげるために,学習方法の選択が大事だと言われています。
でも新しいものが好きな子どもたち,パソコンばかり使って教科書やノート,資料集などの本を使わなくなるのでは。私はそう思っていました。はじめのうちはその通りでした。
ところが,しばらく経つとある子は教科書を読みだしました。ある子はパソコンでまとめるのではなくノートに書いています。
その理由が子どもの振り返りを見て分かりました。
「インターネットの情報だと本当かどうかが分からないから,教科書でも確かめてみたら正しい情報が分かる」「今日は図にまとめようと思ったので,ノートの方が書きやすかった」
子どもたちは,様々なツールを使っていく中で,自分に最適なものを見つけていくのだなと感心しました。より多くの選択肢(ツール)があることで,学び方も広がっていくはずです。
学習内容を子どもに決めさせると,教えないといけないことが教えられない!?
これも私自身が思っていたことです。学習内容の個性化,子ども一人ひとりが学びたいこと・知りたいことを問いをもって追究していく。総合的な学習だとやりやすいですが,国語や算数などの教科では本当にできるのか。
この疑問を解決してくれたのは,ある先生の言葉です。
「教科書に書いてあることを教えるのが先生の仕事ではない。資質・能力を育てるのが先生の仕事」
つい教科書に書いてあることは全て扱わないと,と思ってしまうのですが,私たちが見るべきは学習指導要領ですよね。それを具体例として簡単にしてくれているのが教科書。あくまで具体例の一つです。教科書に書かれていることを端から端まで全て扱わなくても,一つの具体(資料)から資質・能力の向上が期待できるかもしれません。
もちろん,教えなくてはいけない内容はあります。でも,教科書に書いてあること全て,ではないはずです。
それよりも単元の中で1時間でも2時間でもいいから,子どもが自分で知りたいと思えることを自分で追究できる時間を確保した方が,きっと主体的に学ぶ様子が見取れます。
自分のクラスではできない!?
個人で考えてもグループで考えてもいいにすると遊び出しそう。
簡単な課題を選んで楽をするのでは。
自分のクラスは学ぶ意欲が低いから…
その気持ちも分かります。
ただ,それらに関しては2つ。
【子どもの力を信じること】
【先生のスキルを上げること】
これに尽きます。
スキルに関しては,教材研究と子どもへの見せ方。
子どもの視点に立って教材を分析し,「どう見せたら問いがもてるかな,知りたくなるかな」を考えることです。
子どもたちの一番近くにいる担任の先生や専科の先生ならきっと分かるはずです。
万能の型のようなものはありません。
先生が多様であるように,指導方法や支援方法も多様です。
子どもに合った,そして先生方に合った授業力を個別最適な学びで見つけていきましょう。
古市 剛大(ふるいち たけひろ)
岡山県赤磐市立桜が丘小学校 指導教諭
「道徳の教科化」をきっかけに,道徳のおもしろさと難しさを感じながら,研究と実践を重ねてきました。子供の「知りたい」「話したい」を大事にした授業とは?道徳科における個別最適×協働とは?日々の授業から,そして指導教諭だからこそ見える・感じることを綴っていきたいと思います。
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