2024.10.22
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道徳授業で大切にすべき3つのこと

道徳が「特別の教科道徳」となって、7年目となりました。私は道徳の研究に携わって5年目となり、多くの実践を重ねてきました。
小学校教員として11年目となり、全学年で担任を務め、授業実践をしてきた視点から道徳授業で大切にすべき3つの心得を紹介します。

東京都公立小学校 主任教諭 柿原 健吾

教師の価値観を押し付けない授業!

「とても大事な考えですね」
「友達には優しくしていきましょう」
などといった、子どもに対して教師の価値観を押し付けている授業を見ることがあります。このような授業をしていると、子どもたちにとっては「教師がほしい正解探しゲーム」になっていきます。つまり、「先生が喜ぶ答え」を自然と子どもたちが探し始めてしまうのです。道徳を学び始めた頃、恥ずかしながら私は「正しい道徳的価値を押さえなくちゃ!」と必死で、求めている発言が出ると安心していました。「なんて授業をしているんだ」と、先輩方にご指導をいただいたことを今でも覚えています。

授業を通して、「価値理解」をすることは不可欠です。しかし、現在の道徳授業で求められていることは、子どもが「考え、議論する」ことです。例えば、子どもたちは「友情、信頼」や「礼儀」において、何が正しいのか、何が大切なのかを大体は理解しています。子どもたちが変化の激しい社会を生き抜いていくために、教師は「どうやって生きていくべきか」を考えさせ、よりよく生きていくための選択肢を増やしていけるような授業をしていくことが大切です。

葛藤場面のある授業!

「分かっているけど、実現することが難しい」

人格の完成を目指していく上で、誰しも避けては通れない心理ではないでしょうか?
身近な例として、子どもたちは廊下を走ってはいけないとは分かっていながらも、つい急いでいたり楽しくなったりしてしまい、全力疾走に近い状態で走ってしまう場面が挙げられます。残念ながら、「規則の尊重」をテーマとした授業を受けたからといって、全員がいきなり廊下を走らなくなることはありません。ただ、もちろん何も働きかけなければ、人間的な変化は生まれません。大切なことは、廊下を走ってしまう気持ちを言語化させたり、教師が問い返したりしながら多面的、多角的に自己を見つめさせる時間をつくることです。
ケンカではなく、自分の意見を学級で戦わせること。そして、「廊下は走ってはいけないと思いました」という表面的できれいな言葉ではなく、「廊下を今でも走ってしまうときがある。そうならないように、ぼくは安全に過ごすために、友達と声をかけ合っていくのがよいのではないかと感じた」などというような、現状とこれから目指していくべき姿が子どもたちから見られた場合には、子どもが心から考えた証です。書くことも大切ですが、1分でも多く子どもたちの心を「もやもや」と葛藤させられるかが勝負どころです。

教材を魅力的に見せる授業!

導入を終えて、いざ教材へ誘おうとするときに、低学年や特別な配慮を要する子どもたちにとっては教科書を読み進めようとすると、気が散りやすい様子が多々見られました。他のページの内容が気になったり、文字を読んだりするのが苦手などの要因が考えられます。ペープサートや紙芝居などの技法を使って教材提示を工夫する手だてはありますが、正直毎時間行うのは自分がしんどくなり、道徳が嫌いになってしまう気持ちが想像できました。「お話の世界に、子どもたちが自身を投影できることはできないだろうか」と、悩んでいた時期もあります。そんなとき、一つの教材提示の方法を先輩の先生に教えていただき、昨年度から行っています。
それは、「プレゼンテーションソフト」を用いて、教材を提示する方法です。具体的には、教科書の挿絵と同時に、キーワードとなる言葉や登場人物の核となる台詞のみを提示するといった形です。アニメーション効果も付け加えると、さらに効果的ですよ。それ以外の内容文は、教師が読み上げ、子どもたちは聞いています。この方法で取り組んで2年目となりますが、どの子も気が散ることなく、お話の世界に浸っている様子が見受けられます。何よりも、教材研究と同時に準備ができるので、負担感なくできていることがいいですね。子どもたちは本来、道徳が大好きです。それはきっと、毎回の教材内容が異なったり、挿絵がもつ効果の働きが大きかったりするためだと考えています。

教師が範読して、子どもたちが教科書を目で追いかけることがいけないわけではありません。ただ、間違いなく、小さじ一杯の工夫で教材が輝き始めるのです。目の前の子どもたちも、さらに道徳が好きになることと思います。


以上、今回は「道徳の授業で大切にすべき3つのこと」を伝えさせていただきました。みなさんは週に一回の道徳授業で、大切にしていることはありますか。授業をやり、すてきなことを話していても、子どもたちへ急な変化を臨んではいけません。道徳授業(道徳科)は、あくまでも未来への「種まき」です。学校全体で行っていく「道徳教育」と合わせて、心の育成を育んでいきましょう。

柿原 健吾(かきはら けんご)

東京都公立小学校 主任教諭 道徳推進教師


全学年の担任を複数回行い、単学級の小規模校、1学年4学級の大規模校まで幅広い経験が最大の武器です。
道徳を専門としたきっかけは、6年生を担任している際に、本音で語り合う子供たちの姿に心を打たれて道徳を学び始めました。
道徳は、子供たちがよりよく生きるための「種まき」です。
授業のことはもちろん、組織として取り組むべき子供たちの心の育成について共に考えていきましょう!

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