平和学習の取り組み ~捉える 広げる 深めるフェーズ~(2)
平和学習の単元がある程度形となったので、1枚の紙にまとめてみました(図1)。今年の担任団の思いの詰まった単元であると改めて感じることができます。書籍を眺めると「カリキュラムマネジメント」という言葉が話題となっていますが、まさに学年で取り組んだカリキュラムマネジメントであると感じております。今回は、この単元の中でも前半と中盤について、学習の様子を紹介させていただきます。
明石市立鳥羽小学校 教諭 友弘 敬之
以前この場で話題にした中庭の果実がおいしく実り、先日職員室でキウイを試食しました。
みずみずしく甘い果実でとても幸せな気持ちになりました。
いよいよ12月です。少しずつ年の瀬を意識し始める時期です。
今回は、前回に引き続き「平和学習の取り組み」の内容について話題にしたいと思います。
単元のゴールを知り学習の見通しを立てる

単元の導入場面は学年集会の形をとり、家庭科室で単元開きを行いました。単元開きでは、担任が実際に「平和」をテーマにしたブックトークを行いました(図2)。ブックトークの意図は、学んだことを伝える段階でいろいろな伝え方を思案できるための一つの話題として行いました。つまり、全員が最後にブックトークをする単元ではないということです。
その後、学習の課題と評価の内容、そしてパフォーマンステストの内容を提示しました。今回の単元では以下のように学習課題を提示しました。
『この単元では、国語科においては様々な文学作品を読んで理解したことを生かして、「平和」について自分の考えをまとめる力をつけます。また、社会科においては、戦争を通して生じる人々の暮らしの変化を理解して、今の暮らしやこれからの社会の在り方について考える力をつけます。そのために、社会科や国語科、道徳科で学んだことと、修学旅行で実際に見聞きしたことをつなげて、「平和」についての自分の考えをまとめて相手に伝えましょう』
「言語活動」は、「自分の考えをまとめて相手に伝えましょう」と設定しました。なぜこのように設定したかというと、2つの点で子どもが自分で決定することができる場面を位置づけたかったからです。
1つ目は対象です。この単元開きでも「誰に伝えるの?」と、子どもから質問がありました。そこで、「誰に伝えたいかな?」「自分が伝えたい相手に合わせて伝えよう!」と、促しました。
2つ目は方法です。今回は伝え方は特別に設定しませんでした。なぜなら、伝える相手によって伝え方は変わると考えたからです。また、相手によって伝え方を検討することこそ学習内容であると考えたからでした。このように単元のゴールを提示して学習を進めていきました。
国語科としての学習
本単元における国語科「読むこと」の内容としては、「考えの形成(文章を読んで理解したことに基づいて、自分の考えをまとめること)」を狙って単元を位置づけました。
使用する教材は、物語文『模型のまち』です。この教材に登場する主人公は、戦時中ではなく、戦後を生きる人物です。
日々の生活の中にある出会いから「戦時中」のことを知り当時の様子に思いをはせる物語となっています。
本単元では、この「読むこと」の時間は5時間で設定しました。
そして、学習の中心に「読書チャート」を取り入れました。
「読書チャート」とは、読んだ本の内容を「恐怖・驚き・怒り・悲しみ」の4段階が縦に記されたシート上に読んだ内容を評価し、なぜそこに評価したのかを交流しあうことで考えを広げていけることを企図して設定した活動です(図3)。
1時間目は場面や登場人物を確認しました。その後、クラス全体で『模型のまち』の読書チャートを作りました。
具体的には、黒板に投影したチャート図の中に、それぞれが感じた感想に沿って4段階を基にテキストを並べる活動をしました。
この時は学習支援ツールのアプリ(ロイロノート)を活用して、デジタルの付箋を同時に貼り付けられるように工夫しました。
その後、自分と同じところに並べた友達や、違うところに並べた友達と交流しあう場面を設定しました。
この活動を通して、「『模型のまち』の登場人物にとって「ビー玉」が大切なポイントとなっていることに気づいた」「原爆によって亡くなった子どもたちが、今は思い出となって人々の心の中に生き続けていると考えた」と、それぞれに読みを深めていく様子が見られました。
また、一度全体でおこなったことで「読書チャート」を作ることが具体的にどういった手順や方法なのかということを多くの子どもが理解できていたように感じます。
こうして、前半部分の「国語科」としての学習を終えることとなりました。
読書チャートはこの単元の間、定期的に交流できるようにしました。
実は、この単元が始まったときに近隣の図書館から「平和」をテーマとした本を100冊程度借りてきました。
それらの書籍を並行読書として読み、どんどん読書チャートをアップデートしていけることを狙っていたわけです。
道徳科としての学習
道徳科としては、修学旅行へ行くこともあり「自由」や「協力」を内容項目として指導に当たりました。
次回は、これらの学習の様子について少し紹介できればと考えております。
終わりに
今回は、国語科の内容として少し具体的ではない記述が多く、うまく伝えられていないなと反省しています。
次回は道徳科の授業の様子を具体的に記述できればと考えています。

友弘 敬之(ともひろ たかゆき)
明石市立鳥羽小学校 教諭
「単元学習」をテーマに学び続けてきました。その中で、「学習デザイン」「実の場」「問い」と、興味を広げてきました。今は「そもそも学びってなんだろう?」という問いと向き合っています。それは、子どもの学びだけではなく、教師としての、また大人としての学びも含みます。この学びの場を通して、私の問いを解決していきたいです。
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