2024.07.26
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国語科学習の創造~物語を内から読むか 外から読むか~(VOL.1)

小学校は中学校と違い「専門教科」というものがあまりないと思われています。しかし、現在は教科担任制の導入も相まって、先生一人ひとりの色味が重要視されてきています。ちなみに私の専門教科は「国語科」です。と言ってしまうと、中学校時代の担任の先生に怒られそうですので、少し言葉を変えます。私が学習創りにおいて一番楽しいと感じる教科は「国語科」です。定期的に、国語科についての話題を提供していきたいと思っています。

明石市立鳥羽小学校 教諭 友弘 敬之

自宅の周りを1周、犬と4歳の園児を連れて散歩をするだけで汗がにじんでくる季節になってきました。
いよいよ夏本番です。
今回は、国語科の学習創りについての話題を提供させていただきます。

国語科の学習創りにおける悩み

皆さんは、国語の学習創りにおいて、次のような悩みをおもちになったことはございませんか?
「どんな言語活動がいいかな?」
「第3次にどのようなアウトプットをしたらいいかな?」
「読んだことを活かすには、単元の終末をどう工夫するのがいいかな?」

これらはどれも、国語科における言語活動を充実したものにするための悩みであると考えています。違った面から見ますと、子どもの学びを真摯に考え、少しでも良い学習をデザインしようと奮闘している姿といってもいいと思います。
そこで今回は、この「言語活動を選択していく」際の一助となれるような話題を記していきたいと思います。

国語科における言語活動

一言に言語活動といってもそのバリエーションは豊富です。そもそも言語活動というのは、国語科においては終末の活動を想起しやすい言葉ですが、実際はもうすこし単純な意味しかありません。それは、「読む・書く・話す・聞く」ということです。少し誤解されがちなのですが、これらは独立して活動されるわけではないのです。「読む」ということを考えてみましても、読んでわかったことを短い言葉でメモをしたり、自分が考えたことを隣の仲間に語ったり、読んで理解できないことを別の仲間に尋ねたりと、すべてが連なって行われているのです。

国語科においては、そういった一連の活動を、子どもがよりことばについて考えを深めていくことができるようにと、子どもの実態に合わせ、単元の一要素として設定したものを「言語活動」と呼ぶことが多いわけです。

言語活動の内と外

表1 言語活動の一例

現在現場で実践されている「言語活動」は実に豊富です。

 ・手紙を書く
 ・批評を書く
 ・映像を作る
 ・音読劇をする
 ・朗読会をする
 ・対談記を作る
 ・偉人をインタビューする  etc

皆さんは、これらの言語活動をどういった基準で選択されていますか?選択をする際に私が最近意識していることは次のようなことです。
「この言語活動で子どもたちは物語を内から見るのかな?それとも外から見るのかな?」

例えば、低学年の教材を想像してみてください。ある人物が別の人物に思いをはせている場面があったとします。そんな時、その人物になりきって、その時その場所でどのような独り言を言ったのか、ということを書かせようと思ったとします。それは内から物語を読んでいるということです。登場人物に同化(※)し、その人物になりきって物語を味わうわけです。

一方、その逆の視点もあります。例えば、高学年の教材を想像してみてください。ある人物が行った行為や心情について、一読者としてその是非を問うような内容を書かせようと思ったとします。それは外から物語を読んでいるということです。こういった読み方を同化の反対の意味として異化(※)と言ったりもします。

では、こういった内からの視点や外からの視点で言語活動を考えてみましょう。表1は上述した言語活動の一部を「内から」と「外から」の視点に分けて整理したものです。表1からわかることは、一つの言語活動についても、内から読ませようとするか、外から読ませようとするのかでその設定の仕方に差異が生まれるということです。例えば、同じ「手紙を書く」という言語活動一つとっても、人物になりきって書かせることもできるし、読者としてその人物に手紙を送ることもできるわけです。このように考えると、実践されている言語活動を自身のクラスに持ち帰った際に、アレンジを加えて提示することができるようになるわけです。同じ言語活動でも見方を変えるとその目的が大きく異なります。こういった「言語活動の特性」を考慮して2学期の単元を一度設定してみてください。

追記

言語活動を設定するにあたって考慮したいことは他にもあります。例えば、「教材の特性」「付けたい力の見定め」です。次回の場で話題にできればと存じます。

(※)同化と異化

「同化というのは、視点人物に即し、視点人物の身になって、視点人物と共通の体験をすることで、異化というのは、(視点人物を含めた)登場人物を外側から見て、この人物たちの行動や思想・感情を評価する体験のことである。」とされる。

田近洵一 他「国語教育指導用語辞典」教育出版.2020

友弘 敬之(ともひろ たかゆき)

明石市立鳥羽小学校 教諭


「単元学習」をテーマに学び続けてきました。その中で、「学習デザイン」「実の場」「問い」と、興味を広げてきました。今は「そもそも学びってなんだろう?」という問いと向き合っています。それは、子どもの学びだけではなく、教師としての、また大人としての学びも含みます。この学びの場を通して、私の問いを解決していきたいです。

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