子どもたちと盆栽づくり
勤務校のある地域には、約100年続く盆栽村があり、全国でも有数の盆栽の聖地と言われています。そこで、17年前から本校では高学年で盆栽づくりの授業を行っています。学校の伝統として行われているこの盆栽授業を今年も大切に行いたいと考えました。
さいたま市立植竹小学校 教諭・NIE担当 菊池 健一
楽しみにしていた盆栽づくり
今年は初めて担当する学年で盆栽教室を実施できるので、年度当初から楽しみにしてきました。盆栽教育担当として事前にボランティアの方や講師の方との打ち合わせを入念に行いました。自分が担当となって、この盆栽教室にかかわる多くのボランティアの方にお会いするようになりました。地域の方に支えられてよい教育ができているのだと実感しました。
教室に向けて子どもたちと学びを開始しました。ボランティアさんに指導をいただきながら、必要なものをそろえ、道具の準備などをします。地域のボランティアさんが情熱を持って学校にかかわってくださっていたことが分かり、熱い気持ちになりました。そして、私自身がさらに盆栽について学び、学校の盆栽教育を盛り上げないといけないという気持ちでいっぱいになりました。
子どもたちとは事前に地域にある盆栽園や盆栽美術館を見学しました。美術館では盆栽の歴史や盆栽の鑑賞の仕方を学び、そして盆栽職人の技などを見せていただきました。
「盆栽はどうしてこんなに長く生きるのかな」
「一つひとつの盆栽が大切に育てられてきているんだね」
「本当にいろんな種類の盆栽があるね」
子どもたちは盆栽について興味津々です。実際の盆栽づくりを楽しみにしていました。
いよいよ「盆栽教室」
待ちに待った盆栽教室の日が来ました。講師は地域にある盆栽園・清香園の6代目園主である山田香織先生です。山田先生は盆栽教室で指導をされるなど、大変著名な盆栽家です。山田先生は本校の卒業生でもあることから、毎年盆栽教室を開いて児童に盆栽づくりを指導してくださっています。
教室当日は、盆栽園で育ててもらった苗木を選定し、盆栽の正面を決める所からスタートします。子どもたちは苗木を持って、いろんな方向から眺め、どこが正面にふさわしいかを決めました。
「ここを正面にするとかっこいいよね」
「幹が曲がっていてかっこよく見えるよ」
子どもたちは夢中で苗木を見まわし、正面を決めました。
正面を決めた後は、伸びている枝を剪定し、形を整え、盆器に植えていきました。盆器に植えるとさすがに盆栽らしくなってきます。みんな盆栽を持ち上げてうれしそうに眺めていました。
山田講師からは、
「毎日お水をあげて愛情たっぷりに育ててください」というお言葉をいただきました。
3年生の時にも盆栽について学んできましたが、地域の伝統である盆栽にあまり関心をもてない子もいました。しかし、実際に盆栽を作った後にはどの子も大変うれしそうで、大切に育てていきたいという思いをもったようです。
児童は次の日から輪番で盆栽の水やりをスタートしました。子どもたちが優しく盆栽に水をあげている姿が見られました。水やりにはボランティアの方が付き添い、優しく指導してくれました。
これから大切に盆栽を育てていく
本校ではこれまで18年間、この盆栽教室が続けられています。私から見た課題は、盆栽教室で盆栽を作ったり、剪定をしたりする活動を行った後の日常的な活動をさらに充実させる必要があるということです。ボランティアさんが定期的に盆栽の様子を見に来てくれたり、委員会の児童が毎日の水やりをするのですが、その他の児童の中には盆栽教室以外で1度も盆栽に触らないという子もいました。しかも、学校では様々な活動があるので、子どもたちが盆栽にずっと気持ちを向けるということも難しいと考えています。そこで、教師の方が授業などの中で盆栽にかかわる機会を設ける必要があると考えました。
まずはマイ盆栽を作った経験や近くの盆栽園の見学をしたことなどを国語の時間に新聞にまとめました。子どもたちは自分が持っているタブレットで撮影したマイ盆栽を見ながら、作ったときの様子や感想などをまとめていきました。作成した新聞は12月に行われる大宮盆栽美術館の子ども向けの企画展で展示します。児童も展示会を観に行くので、さらに盆栽に対する関心が高まると思います。これから様々な取り組みを行い、作った盆栽を大切に育てていきたいです。子どもたちが卒業してからも盆栽を大切にし続けるように、そして地域から離れてもこの地域のことを誇りに思えるように…
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菊池 健一(きくち けんいち)
さいたま市立植竹小学校 教諭・NIE担当
所属校では新聞を活用した学習(NIE)を中心に研究を行う。放送大学大学院生文化科学研究科修士課程修了。日本新聞協会NIEアドバイザー、平成23年度文部科学大臣優秀教員、さいたま市優秀教員、第63回読売教育賞国語教育部門優秀賞。学びの場.com「震災を忘れない」等に寄稿。
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