説明文の言語活動で大切にすべき一つのポイントー『「永遠のごみ」プラスチック』を例にー
今回は、東京書籍6年生の国語科『「永遠のごみ」プラスチック』の単元を例にとり、説明文教材の言語活動を考える際に大切にすべき一つのポイントを紹介したいと思います。
明石市立錦が丘小学校 教諭 川上 健治
国語『「永遠のごみ」プラスチック』
今回、紹介するのは、東京書籍6年生の国語『「永遠のごみ」プラスチック』の単元です。これまでの説明文の課題としては、吉川(2004) が、「三読法でいうところの精読段階にあたる読みの活動に工夫を加えたものが多いが、そうした学習を経た後の単元の終末段階の学習活動については、精読段階での学習活動がどのようなものであろうと関係なく、感想文をまとめたり、要旨をまとめたりするなど、概して学習者には好まれない活動の繰り返しに陥っていることがしばしば見られる。また、そうしたパターン化したものではない学習活動の場合でも、明確な意図に基づかずに設定されていることが少なくない」 と述べています。
実践現場に身を置いている教師にとっては、多かれ少なかれ心当たりがあるのではないでしょうか。これまでに文学教材単元においての言語活動については「パフォーマンス課題」等で、教室の中に閉ざされた学びに対して、一石を投じてきました。しかし、吉川の指摘にもあるように、これは、説明文にも同様の課題、すなわち「活動主義」という課題があてはまりそうです。
「学習者に好まれる活動」とは
では、吉川の言う「学習者に好まれない活動」となり得ないためには、説明文を扱う教材の単元でどのような言語活動を設定すればよいのかを『「永遠のごみ」プラスチック』を例にとり考えていきたいと思います。
本教材の終末の学習課題としては、「筆者の主張をもとに、改めてプラスチックごみの問題に対する自分の考えをまとめ、発表しましょう」「筆者の文章や二つの資料などの、どの部分をもとにしてそう考えたのかを、明らかにして伝えましょう」とあります。ここから、考えられる言語活動としては第3次を教室内での「発表会」を催すことでしょう。しかし、これでは、よく言われるように「誰に」「何のために」この「発表会」を催すのかが不明瞭です。ここが不明瞭であると児童の意欲も削がれる可能性があります。これが吉川の指摘する「学習者に好まれない活動」の典型例ではないでしょうか。
では、どのような学習課題を設定すれば「学習者に好まれる活動」になるのか。補足ですが、この「学習者に好まれる活動」とは、児童に迎合した「楽しい活動」を仕組むというものではありません。あくまで、児童の「意欲」を高められるような活動を仕組むという意味です。ここで市川(2004) は、日本の学校でも活動を行う際には「他の人にも役立つものとして機能して、そこにやりがいを感じていくというような場面づくり」 が重要であると述べています。つまり、先ほど述べたような教室内で完結する「発表会」では、「他の人の役に立つという実感」を味わえないのではないでしょうか。
「他の人の役に立つ」
私が、本単元を構成するにあたり、一番大切にしたのは、この「他の人の役に立つ」という点でした。6年生にもなると、「何となく自分に自信がない」「自分は役に立つ存在ではない」と感じる児童も多くなってきます。だからこそ、「あなたは人の役に立っているんだよ」という有能感を味わわせたいと考えました。そこで、設定した言語活動は、「プラスチックごみ問題を解決するには、地域の人々にどのように伝えたらよいかをポスターにまとめよう」というものです。そして、出来上がったポスターは校区内のお店に貼り出していただくというものです(詳しくは指導案のほうをご覧ください)。校区内のお店なので放課後にもしかしたらそのお店を家族で立ち寄るかもしれません。そんなときに、「これ俺が作ったんだよ」という会話が家族の中で繰り広げられたら教師冥利に尽きますよね。そのような光景を想像しただけでも、恐らく単に「ポスターを作って発表しよう」よりも、より社会に役立っているという実感が湧くものになったのではないでしょうか。
以上、説明文で言語活動を作るならという視点で今回の日誌は書きました。本単元をのせた単元計画も「指導案」のサイトで紹介したいと思います。
誰かの参考になれば幸いです。
関連リンク
参考資料
- 吉川芳則「説明的文章の単元の学習指導過程における終末段階の学習活動設定の要件」全国大学国語教育学会『国語科教育』、第56巻、2004年、p.50
- 市川伸一『学ぶ意欲とスキルを育てる いま求められる学力向上策』小学館、2004年、p.38
川上 健治(かわかみ けんじ)
明石市立錦が丘小学校 教諭
クラスの全員が楽しく学び合い「分かる・できる」ことを目指して日々授業を考えています。また、様々な土台となる学級経営も大切にしています。
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