漢字50問テスト学級平均95点
筆者は若手時代,再テストを多用。
努力や脅しに頼る素人指導であった。
現在は10の工夫により,学級平均95点の指導法を確立した。
目黒区立不動小学校 主幹教諭 小清水 孝
酷かった若手教員時代
個人の努力に頼っていた若手教員時代は、漢字ドリルの巻頭ページを開かせて出題範囲を提示。努力できる子は高得点,努力できない子は50点未満。「このままだと合格点を取れないよ」「宿題をやっていないけれど大丈夫?」と嫌みのような,半ば脅しのような文句を掛けていました。これが偽らざる,教職5年未満の私の指導法でした。
80点未満の子どもには,何度も再テストを行いました。休み時間や放課後を利用し,80点取れるまで何度も再テストを実施しました。再テストで80点を取った子どもたちは「よっしゃぁっ~!」「やったぁっ~!」と笑顔で叫びました。保護者からは感謝の手紙が届きました。熱心な先生,子どもたちを最後まで面倒見てくれる先生,という評価があったかもしれません。
当時を振り返ると,調子に乗っていたと思います。たった1通の手紙に酔いしれていた指導力不足の若手教員時代。子どもたちの笑顔の叫びは,達成感からくるものではなく,再テストからの解放を意味していたことに気付かなかったのです。
10の工夫
今の私は全く違います。嫌みナシ,強制ナシ,宿題ナシで,学級平均95点を超える指導法を身に付けています。これまでに出会った子どもたちが私の指導法にNOを突きつけてくれたおかげで,指導法を工夫することができました。元全国連合小学校校長会長の向山行雄氏は,「教材研究とは,つまるところ指導法の工夫である」と言いきります。
私の指導法は以下の通りです。なお②③⑥⑦は,伴一孝氏の実践を参考にしています。
【STEP1 第1週】指導に要する時間3分
① 漢字50問テストの実施日と合格点(80点)を予告する。
【STEP2 第2週】指導に要する時間20分×3日
② 漢字50問テストの答えをA3に拡大し,薄く両面印刷。児童数×3程度。
③ 「なぞって教卓に持ってきたら100点」「美しく濃かったら200点」「1つはみ出たらマイナス10点」と事前に宣言し,一段ごとに評定。
④ ③を2日程度行う。「自宅でもやりたい人は裏面にやってね」と毎回持ち帰らせる。余ったプリントは自由に持ち帰らせる。
⑤ 解答用紙2段(多くは20問)につき,BINGOを1回行う。わざわざBINGOシートは作らず,国語ノートを使用。1回のBINGOにかける時間は7~8分程度。2回(40問)行う。
【STEP3 第3週】指導に要する時間20分×3日
⑥ 漢字50問テストの解答用紙をA3に拡大し,両面印刷。児童数×3程度。
⑦ 答えを見ながら写させる。答えは②の用紙を再利用する。「写して教卓に持ってきたら100点」「美しく濃かったら200点」「汚かったら50点」と事前に宣言し,一段ごとに評定。
⑧ ④と⑤のように行う。
【STEP4 第4週】指導に要する時間20分×2日
⑨ ⑥の用紙を5問程度ずつタブレット等で撮影し,大型ディスプレイに映す。列や個別,相互などで指名し,タッチペンで大型ディスプレイに書かせる。パスもアリ。書けた人から座らせる。どんなに児童数の多い学級でも40人程度なので,50問あれば必ず1人最低1回は回ってくる。
⑩ ⑨を2日程度行う。③や⑦で使用した余りのプリントを自由に持ち帰らせる。
【STEP5 第5週】指導に要する時間40分
いよいよテスト。
それでも書けない児童への配慮
【STEP1】と【STEP5】は各々1週間を要しませんので,漢字50問テスト当日までの準備期間は実質3週間程度です。学級平均点が90点を超えると,先生方の丸付けの負担も減ります。
それでも書けない子どもがいます。公立校には5~10%ほどいるかもしれません。個別のトレーニングが必要ですから,授業の時間だけで何とかしようと思うと先生方も苦しくなるでしょう。【STEP3】の⑦やテスト当日では,解答用紙に薄く解答を途中まで書いてあげることをおススメします。
私は,例えば「最後の1画だけ自分で書く」「部首だけ自分で書く」「部首以外だけ自分で書く」などの方法で支援をします。テスト開始の最初の10分間は,特にすることがないので支援をします。全国各地の教室で,特別な支援を要する子どもたちが笑顔になることを願っています。
以上は紙テストによる指導法の工夫でしたが,CBTテストの普及により数年以内により有効な指導法が誕生することでしょう。
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小清水 孝(こしみず たかし)
目黒区立不動小学校 主幹教諭
フープ1本でできる運動を3つ以上言えますか?
現場で使える技術、できる実践、リアルな指導法を日々追究しています。
現場の先生方、共に考え、指導法の選択肢を増やしていきましょう!
NPO教育サークル「GROW5th」代表。
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