算数教材開発「割合」(5年生)(No.4)(No.4)
算数のオリジナル教材を紹介いたします。ぜひ、ご活用いただければと思います。
単元:「割合」(5年生)
場面:単元内(割合の三用法を学習後)
難易度:★★☆
東京都品川区立学校 平野 正隆
本単元について
比較量(比べる量)の大小は割合だけでは決まりません。300円の10%と200円の10%のように基準量(合計・もとにする量)が異なっている場合、割合が同じでも比較量が違ったり、割合が小さくても比較量が大きくなったりすることもあります。また、300円の30円引き(10%引き)と200円の30円引き(15%引き)のように、比較量が同じでも、割合は変わります。
しかし、割合の数値が等しければ、比較量も「同じ」と判断してしまったり、比較量の数値が等しければ、割合も「同じ」と判断してしまったりする子が多くいるのが現状です。さまざまな学力調査でも、こうした問題の正答率が低いことが指摘されています。
本教材の概要
では、こうした問題につまずくのはなぜなのでしょうか。その原因として考えられるのは、以下の3つです。
①割合の意味理解に関する課題
②割合の三用法の活用に関する課題
③基準量が違うデータを比べる経験に関する課題
そこで、今回は③に挙げた「経験に関する課題」に着目し、その課題を解決するべく、本教材の作成をしました。
子どもの生活において2量を比較する際、差による比較を用いることが圧倒的に多いです。基準量の違う内包量の比較に加減法性が成り立たないことを経験することが生活場面では少ないのです。さらに、算数の教科書を見ると、そういった内容を扱う問題が、少ないことが分かります。
本教材は、「比較量は同じだけど、基準量が違うので割合が変わる問題」「割合は同じだけど、基準量が違うので比較量も変わる問題」のふたつを用意しました。また、どちらも日常生活に生かすことをイメージしてつくりました。
まずは、「比較量は同じだけど、基準量が違うので割合が変わる問題」です。子どもたちは、自らが所属するグループ(クラスや性別など)が他のグループより、優ったかを気にすることがあります。そんな生活の一場面を再現した問題です。
次に、「割合は同じだけど、基準量が違うので比較量も変わる問題」です。1品だけが15%引きになる割引クーポンをもって買い物をする問題です。そんな生活の一場面を再現しています。
本教材の仕掛け
どちらも、生活の一場面を再現した問題です。
教師はあえて、挿絵の子のセリフと同じように、「この逆上がりの男女別対決は引き分けですね」「どれにクーポンを使っても同じだよね」と言い、子どもたちの反論を引き出します。
ある程度のつぶやきをひろったら、「引き分けではないと思う人」「クーポンを使う商品を選んだ方がいいと思う人」と問いかけます。
そして、そう思う自らの理由をグループワークで伝え合い、各グループで意見をまとめます。
それから、グループごとに発表し、「人数は同じだけど、男女で合計の人数が違うので逆上がりができる割合は違う」「どの商品に使っても割引される割合は同じだけど、金額が違うので割引額は変わる」ということを全体で確認します。
他教科における活用
この「割合」の学習は、主に社会科で、それを生かした指導を行うことができます。
例えば、国内の主要産業は「軽工業から重化学工業へと変わった」ことに気付く学習で、せんい工業は 32%から 1%となったことに気付きます。
では、生産額は減ってしまったのかを問うことで、算数の学習が生かされます。
108億円の32%は、約35億円です。
一方、291兆円の1%は、約3兆円にもなります。
物価も違うので一概には言えませんが、32%から 1%となったことをもって「せんい工業が衰退した」と単純には言えないことが分かります。
このように、算数を他教科の学びに生かすことが、学びを深め、生きてはたらく力を養うことにつながります。
まとめ
「割合」の学習においては、その意味理解や三用法の活用力を定着させるとともに、基準量の違う内包量や割合の比較についても扱う必要があります。そして、日常生活や他の学習でも生かすことで、その学びが生きてはたらく力に変わります。
平野 正隆(ひらの まさたか)
東京都品川区立学校
研究会での実践報告や校内での若手教員育成などの経験を通して、自分の経験や実践が広く皆様のお役に立てるのではないかと考えております。大人・子どもに関わらず、「明日から頑張れそうです」「明日が来るのが楽しみです」と言ってもらえるのが私の喜びです。
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