子どもの哲学(p4c)とは何か(vol.1)
p4cという言葉を聞いたことがあるでしょうか。私は大学で初めてその言葉を知り、p4cを実際に体験し学びを深めるなかで、p4cが好きになりました。そして、小学校の道徳の授業でp4cを取り入れてきました。ここでは、初めてp4cを知った方にもわかりやすく親しみやすいよう、具体的な実践の方法をお伝えしたいと思います。
仙台市公立小学校 教諭 齋藤 祐佳
私のp4cとの出会い
私は大学に入学し、初めて子どもの哲学(p4c)を知りました(以下、子どもの哲学をp4cと表記します)。たまたま、私の通う大学には、p4cの研究や普及活動を行う上廣倫理教育アカデミーが設置されていたり、p4cを研究される先生がいらっしゃったりしました。
講義の中でもp4cを行ったり、研修が行われたりしていました。そのような環境の中で、私は自然とp4cを知り、触れていくようになりました。
p4cの魅力を感じた私は、機会を見つけてはp4c勉強会に参加していました。
例えば、“パートナーや友人との関係において、なぜその人と一緒にいるのか”、“頑張れと言われて頑張れるものなのか”などの問いでp4cを行ったことは特に印象に残っています。
p4cという実践を通して、普段は話さない話題について深く対話をしていくなかで、参加者の方の人となりを知ったり、問いの答えにつながるヒントを得ました。
さらに、p4cで重視されるセーフティの中で対話ができた機会は、私にとって非常に印象深い経験となりました。
私は、自分のこれから出会う子どもたちと一緒にp4cを通して、子どもたちの考えを聞いてみたいと思うとともに、セーフティのある対話の機会を作り出すことは重要であると実感しました。
p4cの活用として、道徳の授業で取り入れる例は多く、実践としても評価されています。そこで、私は昨年度、自分の学級の道徳の授業において、p4cを取り入れてみました。
道徳の授業でp4c
私は、実際に昨年度、5年生の子どもたちと道徳でp4cを取り入れ、実践してきました。ここでは、p4cの実践方法をできるだけわかりやすくお伝えし、読者のみなさまの参考となればと思い、報告させていただきます。
また、読者のみなさまが現場の先生方であることを考慮し、p4cが生まれた背景や理論は後ほどまとめ、ここでは具体的な実践の方法をまとめていきます。
p4cは様々な国で実践がなされており、やり方には若干の差異がありますが、ここでは、筆者の学んできたp4cハワイをご紹介します。p4cハワイは、ハワイ大学のトーマス・E・ジャクソン博士が考案し、学校教育に取り入れたものです。
p4cの基本の流れ(プレーンバニラ)
はじめに、p4cの基本の流れをご紹介します。プレーンのバニラ味のアイスに例え、基本のやり方をプレーンバニラと呼びます。
ルールの説明における表現や詳細については、出典によって若干の差異があるため、ここでは、宮城教育大学 上廣倫理教育アカデミー発行、『「探究の対話(p4c)」はじめの一歩』に準拠し、ご紹介します。
- 輪になって座る
- 問いを立てる(問いを選ぶ)
- 対話のルールを確かめる
- 対話を行う
- 対話の振り返りをする
ここで挙げられている対話のルールは、主に4つです。
- コミュニティボールを持っている人だけが話せる
- まだ話していない人を優先する
- 話したくなければパスができる
- 傷つけることは言わない
これらのルールを守ることは知的セーフティ(safety)を高めるために重要です。私も、自分が参加する際には、このルールによって安心感を覚えますし、その安心感の中で自分の考えを表出できるということを実感しています。
また、ルールに挙げられている「コミュニティボール」は対話で用いられる道具です。
ここまで、p4cの基本の流れをざっくりとご紹介してきました。
次回以降、対話で用いる道具(コミュニティボール)、対話を深めるツールWRITEC(ライテック)、実際に道徳の授業でどのように取り入れていたかなどをご紹介できればと思います。
また次回もお読みくださるとうれしいです。
参考資料
- 「探究の対話(p4c)」はじめの一歩 宮城教育大学 上廣倫理教育アカデミー 2019年 3月改訂
齋藤 祐佳(さいとう ゆか)
仙台市公立小学校 教諭
宮城教育大学教職大学院にてp4c(子どもの哲学対話)
『初任者教師のスタプロ ハッピー学級経営編』(東洋館出版)にてコラムを執筆。
note(https://note.com/haru_
日本教育心理学会所属。
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