5年生「食生活を支える市場の役割」
前回は、4年生の実践でしたので、今回は5年生の実践を紹介させていただきます。私の勤務校の校区には大阪市中央卸売市場本場があります。保護者の方に市場で働かれている方も多くいらっしゃいますが、子どもたちは実は市場についてはあまり知りません。貴重な地域教材としての活用の意味もありますが、地域になくても5年生の食料生産の学習の一部として学ぶことは大いに価値があると思っています。市場が私たちの日常を支える一端を担っていることに子どもが気づくことをねらいとしています。
大阪市立野田小学校 教頭 石元 周作
+αとして
5年生の食生活を支える食料生産の学習と言われて思い浮かぶのは、なんといっても農業や漁業の学習でしょう。ただ、その学習の前に食料生産を概観するために、食の産地について学ぶ時間があります。
本年度使用している某教科書では、産地マップを作成し、そこからわかったことや疑問に思ったことをもとに「わたしたちが毎日食べている食料は、どこで、どのくらい作られているのだろう」という学習問題を立てています。そこから約2~3時間で野菜・くだもの、水産物、畜産物などの全国の分布を調べたり、食料自給率について学習したりします。この単元はだいたいこのような流れで学習するのが一般的だと思います。そこで、この単元の最後に+αの1時間として学習します。
市場ではどんな人が働いているのか
具体的な授業の流れを説明します。まず、産地マップとスーパーマーケットに生産物が並んでいる写真を提示し、産地マップから直接スーパーマーケットに届いているのかを尋ねます。知っている子も知らない子もいると思いますので、「産地で生産された食べ物はどのようにして消費者に届くのだろうか?」という問いを立てます。
そこで市場の存在を知らせ、市場について調べていくのですが、おそらく大きな市場なら市場について説明したパンフレット等があると思います。大阪市中央卸売市場本場では子どもが理解しやすいパンフレットや動画がありますので、それを活用しました。まずは、市場の動きについて調べます。
1.入荷(夜8時~朝4時)
日本や世界の各地から船や飛行機、トラックで運ばれてきた品物が市場にならべられます。
2.品物の下見・品定め(朝4時~7時)
仲卸業者や売買参加者は、並べられた品物をせりがはじまるまで調べます。
3.せり(朝5時~8時)
卸売業者と仲卸業者などの間でせりが始まり、値段が決まります。
4.仲卸業者から買い出し人へ(朝7時~11時)
仲卸業者は買った品物を、市場の中にあるお店にはこんで並べます。町の魚屋さん、八百屋さんが買いにきます。
そして市場で働いている人を解説しながら示します(図1)。
図1をもとに、図2のA・B・Cにだれが入るのかを考えます。
市場がないならどうなる?
図2のAが卸売業者、Bが仲卸業者、Cが売買参加者であることを確認し、「もし市場がなかったらどうなるでしょうか?」と問います。
教諭:生産者がつくったものをスーパーに届ける役割のある市場がもしなかったらどうなりますか?
児童:スーパーや小売店が直接生産者から品物を買わなくてはいけなくなる。
児童:生産者もスーパーもどんな値段がよいのかわからなくなる。
児童:消費者が高い値段で買わなければいけなくなる可能性がある。
これらのやりとりのあと、「でも実際、市場がなくても品物は買えますよね・・・」
と言いながら、スイカのネット販売のHPを提示します。
教諭:これならスーパーも通さずに直接買えていいのではないですか?
児童:たしかに安く買えるかも・・・。
児童:でも商品を直接見ていないから不安になる
児童:いるものを全部こんなことをしていたらめんどくさい・・・。
ここでJA鳥取中央のスイカの出荷先の割合を提示します。オンラインでの販売はわずか5%です。95%は市場に出荷しています。つまり大量の品物を一気に扱うには市場が必要であり、オンライン販売は現実的ではないのです。スーパーや小売店もいちいち生産者をさがしている場合ではないことに子どもたちは気づきます。
何を提示するか
この授業をつくるにあたり、正直子どもたちにどこまで何を提示するのかかなり悩みました。市場の働きや役割ももっと複雑であり、専門家の方や詳しい方からすると「そんな単純なものではないだろう」と思われたかもしれません。市場に入荷される品物も減少傾向にあったりもします。社会にある素材を教材化していくのにいつも試行錯誤していますが、市場の大まかな仕組みを捉えることができたのではと考えています。
参考資料
石元 周作(いしもと しゅうさく)
大阪市立野田小学校 教頭
ファシリテーションを生かした学級づくりと社会科教育に力を入れて実践してきました。
最近は、書籍からの学びをどう生かせるかや組織開発に興味があります。
統一性がない感じですが、子どもの成長のために日々精進したいと考えています。
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