2017.10.26
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持続可能な学校を目指して ~教師が生き生きとしている学校~

横浜市立永田台小学校の研究授業に2度(6/30、10/20)参加させてもらいました。
本当に学び多き、刺激多き授業、そして研究会でした。
「働き方改革」のヒントもたくさんありました。
横浜の丘の上の学校には、心地の良い風が吹いていました。

帝京平成大学現代ライフ学部児童学科 講師 鈴木 邦明

教師の役割は何か?

この半年で筑波大附属小、お茶の水女子大附属小、千葉大附属小と研究校の研究発表を見てきました。どこの学校も子どもが「思考」していました。そういった中で「教師の役割は何なのだろう?」という問題意識が自分の中でありました。そういった思いを抱き、授業を見ました。

永田台小の授業を参観し、まず、驚いたのは教師が「生き生き」としていることです「自然体」という言葉も当てはまると思います。良い「眼」をしていますし、良い「顔」をしています。それは授業者だけでなく、学校にいる多くの職員から感じられたことです。それぞれの学校で課題はあるのかもしれませんが、学校の状態が良いのがよく分かります。教師が生き生きとしているのですから、子どもも生き生きとしています。学校教育は、教師の精神性(感情の状態)が仕事の質に強く影響を与えます。やらされている感の強い授業は、そういったものが感じ取れます。

先ほど書いた「教師の役割」について書きます。これまでの主流であった「知識伝達型」の授業であれば、教師は教科書などに書いてある内容をできるだけ分かりやすく子どもに説明をしていくのが役割です。しかし、これからの時代において求められる学習においては、単に知識を伝達するようなものではなく、子どもが「思考をする」際に関わることが教師の役割なのではと感じました。特に、それを感じたのが6月に行われた6年の授業です。


その授業を見ながら、私が考えた教師の役割とは次のようなものです。

・場の設定をする(きっかけを作る)
・調整する(整理する)
・意識づける
・記録する
・盛り上げる

教師は子どものそばにいて、トラブルを起こしそうな子どもや起こした子どものケアをしたり、細々としたことをしたりすることが役割なのだと思いました。単に知識伝達であれば、ICTの活用などにより、人間がやるよりももっと効率的に行える手段があるのかもしれませんし、時間が経てば、必然的にそうなります。そうではない部分を人間が教師が担う場所なのではということを考えました。

大学の研究室のような校長室

話題を変えます。昼休みの時間に校長室にお邪魔しました。そこには研究者(大学教員などが4-5人)、行政の人(2-3人)、現場の先生(数人)、学生(数人)がいて、色々な議論をしていました。公立学校の校長室とは思えませんでした。どこかの大学や企業の研究室といった感じでした。その場で私も端にいて話に加わらせてもらっていたのですが、様々なことがどんどん決まっていくのです。それぞれが異分野の人が集まっているので、色々な化学反応が起こっているといった感じです。新しい企画などがいくつも立ち上がっていました。本当に生産的な場だと感じました。

多様な学びがある研究会

最後に研究会について書きます。研究会も今まで体験したことのないものでした。「円たくん」という書き込みのできる円形のホワイトボードを用い、それぞれの考えを表現しながら、意見交換を行っていくものでした。仕組みとしてとても良くできていました。本当に良い学びになりました。

そして、講師の話からも多くの学びがありました。世界に目を向けた話や違った視点で授業を見ることは、とても刺激を受けました。現場の教員はどうしても目の前のことに意識がいってしまいます。研究者などからのこういった視野の広い話は、現場の教員にとってとても良い刺激になるだろうと思いました。

10月の研究会では、「公開リフレクション」というものを見ました。授業者がその日のメインゲスト(講師)と授業について語り合うものです。授業における担任の思いがさらに引き出され、聞いている方も学びが多かったです。きっと授業者が一番学びが多いのだと思います。

様々な研究手法に取り組み、様々な研究者に講師(永田台小では「ゲスト)と呼ぶ)として学校に関わってもらっています。これだけ多様な人材が関わっている学校は見た事がありません。

終わりに

全体を振り返ると、こんなことをやっている公立の小学校があるのだという印象です。永田台小は、教師の「働き方改革」などにも積極的に取り組んでいます。指導案などは本当にシンプルなものです。学校での研究の取り組みが1枚、本時の指導案が1枚、その日の流れが1枚です。指導案は、厚ければ良いというものでもないのだと思います。その上で、ESDなどの研究を強力に推進しています。本当にうまくいっているモデルだと思います。多くの学校や研究者に参考にしてもらいたいモデルだと思います。現場の教員、管理職、行政の人(指導主事など)、研究者、学生など、どの職種の人が見に来てもそれぞれで学びがあると思います。

10月の研究会には、愛知や宮城からも来ている方がいました。研究会はこれからもあるようです。日程の合う方には本当におすすめです。

鈴木 邦明(すずき くにあき)

帝京平成大学現代ライフ学部児童学科 講師
神奈川県、埼玉県において公立小学校の教員を22年間務め、2017年4月から小田原短大保育学科特任講師、2018年4月から現職。子どもの心と体の健康をテーマに研究を進めている。

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