2023.03.15
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日常を取り戻すための危機管理

1年間を振り返る時期に来ている。カリキュラムのチェックと共に、子どもたちの様子も振り返り次の年度、学年へと繋いでいく必要がある。子どもたちの心の危機を感じることはないだろうか。不登校の子どもたちが増えたことはその一端を示しているのではないかと思う。教師の働き方改革が求められている。教師を希望する人も少なくなっている。新しい学年、生活をスタートさせる時にどんなことを考えればいいのかをふりかえってみたい。危機管理を切り口にして考えてみる。

大阪大谷大学 教育学部 教授 今宮 信吾

こどもたちの心の危機

不登校児童生徒数の推移/文部科学省

令和3年度 児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果の概要(令和4年10月27日)では、不登校が増えたことが伝えられている。
子どもたちの心の状態は心配すべきことであるが、先日ある高校の卒業式でのインタビューで印象的な話を聞いた。「入学してからの3年間大変だったのでしょう」というインタビューに対して、「何もできなくて我慢することが多かったのでそれを取り戻したい」「できなかったことを経験した自分達だからこそ新しい生活で見つけられることも多い」というものであった。
コロナ禍で制限されていたことがあることは事実である。それをどのように受け止めてこれからの未来予想を描くのか、心の持ちようではないかと感じた。コロナ禍から平常に戻り、きっと子どもたちの負の側面が見えてしまう時もあるだろう。その子どもたちの状況をどのように受け止めていくのか、まさに教師の出番である。子どもたちの背中を押して、希望へと導いてほしい。

教師としての危機

働き方改革を働きがい改革へということを学校現場でも伝えている。それは「働き方改革」ということばの持つイメージである。
保護者をモンスターペアレンツと思うことによって、「戦うべき相手」というイメージを持つのではないだろうかと学生たちに語っている。「よき協力者」としての保護者という存在を確かめてほしいとも伝えている。
同じように、「働き方改革」には、教師のネガティブな状況ばかりが注目されてしまう。確かに改善すべきとことは多い。しかし、それだけではなく、教師の素晴らしさにも目を向けてほしい。私は「働きがい改革」と伝えていきたい。文部科学省の調査では、教師の休職者が増加していることも報じられている。教師という仕事が年々過酷になっているという証拠でもある。真面目な先生ほどその責任感を感じて、自分の仕事に対する重圧を感じるのではないだろうか。
4月を迎えるに当たり、学校現場でも教員不足を補うための動きをしている。それでもなかなか人が探せないのが現実である。しかし、それだけ教師という仕事に必要感を感じている証拠だと思って、教師という仕事の素晴らしさを取り戻すことを探していきたい。ネガティブな情報ばかりではない。教師をめざす子どもたちが増えているというベネッセコーポレーションの報告もあった。男女共に将来の夢の第一位は「教師、教員、大学教授」であった。働いてみたい業界、分野の「教育」は男子が第一位、女子が第二位であった。2022年11月30日~12月5日の期間に行われ、1738名から回答を得ている。

自然環境に学ぶ

大阪湾に鯨が来て出られなくなった事件は印象的である。SDGsなどの取り組みが学校現場でも行われているがその成果が出るまでにはまだまだ時間がかかる。できることをできるだけというキーワードはわかっていても、地道な努力がいつ実るのかということが見えないとモチベーションは上がらない。
模擬避難生活を何日できるのかという番組を観た。電気、ガス、水道が止まった1日をどのように過ごすのかというものであった。食事や暖房などは耐えられるようだが、お風呂に入らないということが一番辛いと言っていた。頭の痒みを感じ始めたとも伝えていた。阪神淡路大震災の時に1週間湯船に浸かれず、そのことが心のストレスになっていたことを思い出した。ライフラインとは何かを考えた。梅と桜の季節である。毎年同じ時期に咲いてくれることをありがたく感じた。今あることを感謝することも必要だと思った。

地球市民として生きる

シティズンシップということばを聞いて久しい。子どもたちに主権者教育をということもよく耳にする。地球規模でマクロに考えることと、目の前の生活を考えるミクロに考えることの両面があるだろう。今年も阪神淡路大震災、東日本大震災の日を迎えた。一年のうちで立ち止まって考える時である。
前回お伝えした石巻のこども新聞記者を招いたイベントを3月25日に行う。「子どももたちに託す未来の社会」ということで、子どもたちの声に耳を傾けたいと思う。閉塞状況を打破する時間となればと願う。
お申し込みはWEBで。
大阪シティズンシップ研究会 春のセミナー「新聞づくりとシティズンシップ ―こども新聞記者に託す未来の社会―」


今宮 信吾(いまみや しんご)

大阪大谷大学 教育学部 教授


国公私立の小学校で教員を経験し、現在未来の教師を育てるために教員養成に携わっています。国語教育を核として、学級づくり、道徳教育など校内研究にも携わらせていただいております。ことば学びのできる教師と学校づくりを目指しております。

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