2024.03.11
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単学級小学校での学級経営の1年を振り返って(15)

まもなく、今年度が終了を迎えます。 ゴールが見えてくると、ほっとする気もちもありますが、今年度が終わる寂しさや来年度が始まることの緊張感など、いろいろな思いが交錯するのではないでしょうか。

北海道公立小学校 教諭 深見 智一

単学級での学級の引継ぎがとくに大切であると考える理由

3月になると、校内外での様々な引継ぎ(学級や校務分掌など)が行われます。私も、教務主任として、幼稚園や保育園、子ども園を訪問して、お子さんに関わる情報を伺いました。単学級の小学校は、通常の学級の学級編成をする必要がない分、クラス編成を必要とする学校に比べてやや遅い時期にお伺いしていることが多いと思います。それでも、園の先生方がお子さんについて、たくさんの情報をお話ししていただくのを聞くと、それぞれの場で大切に育てられたお子さんを新たに預かる立場として、そのたびに身が引き締まります。

単学級の第2学年以上の場合は、クラス替えがない分、「学級担任が交代することが、最大の環境の変化」と言うことになります。メンバーが変わらない分、教師がどのように学級をマネジメントしていくかが試されるだけに、緊張する度合いが高まることも事実です。引き継いだ情報をしっかりと受け止めて、新担任がどのような方針で学級経営にあたっていくのかをじっくり考えることができるような引継ぎにしていきたいものです。

これまでの連載を振り返って…

教師側から見える子どもたち

さて、これまで、単学級や複式学級の学級経営というテーマで連載させて頂きました。学校によって行事予定が異なったり、地域によって事情が異なったりすることもあり、すべての先生にすぐに役立つ訳ではない内容もあったかと思います。それでも、できる限り1年間の教育活動での単学級担任(複式学級担任)の難しさやそれを克服する方法について、これまでの私自身の経験や研究の成果をご提供できるように努力してきました。

ただ、私自身の経験が不足している点や、伝えたいことをうまくお伝えすることができなかった部分も多くありました。この連載をご覧になって頂いた方には、少なくとも、「単学級」とは、通常の学級が1学年につき1学級の学級のことということを認知して頂き、少しでも広めて頂ければ嬉しく思います。

単学級の学級経営のこれからを考えると…

子どもたち側から見える教師:いろいろな視点から学級経営を省察できるようにしたいものです…

ここ数年、「チーム学校」という言葉で表されるように、学級担任が一人で学級経営するのではなく、様々な教職員が関わって運営にあたることが当たり前の時代になってきました。このような変化の背景には、特別支援学級に在籍する児童や、通常の学級に在籍している児童でも個別の配慮を必要とする児童が増えたことも関係しています。

例えば、通常の学級が交流学習の場となることで、特別支援学級の担任や学習支援員が、通常の学級の担任と同じ教室で児童の指導にあたることが増えてきました。複数で指導するということは、それぞれの教員がどのような役割を果たすのか、どのようにサポートし合うのかなど、教員間の意思疎通が重要となります。それによって、どの学級でも同じような配慮を行って指導ができるようになったり、支援や配慮を必要とする児童も含めたすべての子どもたちが、より良い学校生活を送れたりするようになります。

ただ、残念なことに、学級経営がいまだアップデートされていない先生方がいることも事実です。「学級王国」と呼ばれるような独りよがりな学級経営が見られたり、特別支援学級の児童や支援や配慮を必要とする児童は、「できないことがあっても仕方ない…」と教師側が簡単にあきらめてしまったり、そのような子どもたちのことは「初めから念頭にない」と思われたりする先生もいらっしゃいます。

学級経営をアップデートする場や方法とは…

しかし、学級担任だけにその責任を帰すことが難しい状況が存在することも事実です。学級経営に関して勤務時間内に十分に学ぶ時間がない、機会が設定されていない、体系的に学べる方法がないなど、学校を取り巻く状況ゆえにそうなっている先生もいらっしゃることと思います。また、省察(リフレクション)しながら学級経営をしていくということも、まだまだ一般的になっているとは言えません。

学級担任が、学級経営について、どのような場で、どのように、何を学んでいく必要があるのかというのは、あいまいになっているのが現状です。うまくいっている先生は、何とか自分自身で学んでいるのかもしれませんし、我慢強く辛抱しているだけでうまくいっている「ように」周りから見られているだけかもしれません。単学級を取り巻く環境は、一朝一夕で解決できるようなものではないということを前提に、このような複雑な問題を少しでも解きほぐせるように私自身、研究を深めていきたいと思います。

今回の記事を持って定期の執筆は終了させていただきますが、また不定期にお目にかかれればと思っております。ありがとうございました。

深見 智一(ふかみ ともかず)

北海道公立小学校 教諭


書籍等で取り上げられることがあまり多くない1学年につき1学級の単学級の学級経営、複式学級の学級経営について、これまでの実践や量的調査の結果をもとに、効果的な実践例を発信していきたいと考えています。

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