2023.09.01
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単学級小学校での学級経営の1年~夏休み明けの9月に取り組んでおきたいこと(8)

集団宿泊的行事では、多くの教員が関わって児童の指導にあたります。チーム力が試されるなかで、行事のコンセプトを明確にすることが、指導にいかされるということを考えたいと思います。

北海道公立小学校 教諭 深見 智一

教員が集まったからと言って、すぐに「チーム」になれるわけではない

集団宿泊的行事では、学級担任以外の教員も指導に関わることから、どのように指導するのか共通理解を図っておくことが重要だと考えます。共通理解を図るための土台となるのが、その行事の「コンセプト」です。

日常的に児童の様子を見ている学級担任は、日常の指導の連続と考えて指導します。しかし、共に引率に加わる管理職や養護教諭、教務主任などは、当該学年の児童が普段どのような生活をしているのか、担任がどのような指導をしているのかなどについて情報が限られています。

そのため、「学年団はどのように考えているのか」という事前の情報共有を十分に行うことで、指導も安定し、児童も安心して活動に参加することができるようになると思います。

エピソード①「自分も楽しく、みんなも楽しく」になるか?

目的を意識すると、指導しやすい

ある年の宿泊研修で、その場の雰囲気が明らかに悪くなる発言をした児童(Aさん)がいました。周りの友達は困った表情をしていますが、当の本人は何も気づいていません。「先生達、何も言わないのかな?」という表情でこちらを見てくる子どももいます。その場面に、学級担任である私と担任ではないB先生がいました。どのような対応になったと思われるでしょうか?

B先生は、「Aさんの話していることは、『自分も楽しく、みんなも楽しく』のどっちもクリアしている?」と声をかけました。ただ叱る、善悪を伝えるという指導ではありませんでした。児童に宿泊研修の目標を意識させてから、自分の行動を振り返るようにきっかけを与えました。全体の上位目標を思い出させ、どう行動したらよかったのか、Aさんに「チャンスを与える指導」を行ったのだと私は理解しました。教師の間でコンセプトが共有されていると、どのような指導をするかはそれぞれの先生に委ねられていると思います。パッと指導してくださったB先生ってすごいな~と、私は見ているばかりでした。その後、少し冷静になったAさんは、落ち着いて行動している様子が見られました。

エピソード②あえて何も言わずに、「見守る」指導

ある年の宿泊研修で、「レク係」の児童が行う企画の進行が、なかなかスムーズにいかないということがありました。引率にあたっていた教員のスタンスは、「見守る」でした。学級担任が中心になって進めたり、助言したりすることも、行おうと思えばできました。しかし、事前の打ち合わせの時点で、「スムーズにいかなくても、そのままやらせてみる」という方針が確認されていました。このときは、教師の手助けでなんとなく成功するよりも、失敗したとしても、それを次の経験に活かしてもらうほうが、長期的に子どもたちのためになるという担任団の意図が明確にあったからです。

こういう場面で、教員の意思統一がはっきりされていなかったら、どなたが助け舟を出してしまうということがありがちです。

担任の立場としては、「見守ろうと思っていたのに、何てことをしてくれるんだ!」と心の中で叫びたくなるかもしれません。でも、助け舟を出した先生の側からすると、「なんでこんなうまくいっていないのに、担任は何も言わないんだ!」という思いがあるのかもしれません。心の中での思いが互いにぶつかり合って、なんともやりきれない雰囲気になってしまったこともあります。そのようなことが何度か繰り返されると、引率の教員の雰囲気もあまり良いものではなくなってしまいがちです。

でも、この時は、そのようなことはありませんでした。指導の目標、理念などのコンセプトが共有されているので、チームとして指導にあたれていた宿泊研修でした。

同じ学年の翌年の修学旅行の引率にも行きましたが、前年度の反省をいかして、引率教員が子ども達と一緒に楽しんでいたり、後ろであたたかく見守っていたりする姿が見られました。つくりこまれた学級レクではなく、企画している児童も参加している児童も、みんなで楽しもうとしていることがよく伝わってきました。

深見 智一(ふかみ ともかず)

北海道公立小学校 教諭


書籍等で取り上げられることがあまり多くない1学年につき1学級の単学級の学級経営、複式学級の学級経営について、これまでの実践や量的調査の結果をもとに、効果的な実践例を発信していきたいと考えています。

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