2023.04.15
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単学級小学校での学級経営の1年~4月の学級開きで大切にしたいこと~(1)

4月、新学期がスタートしました。学級開きまでの準備日数が少ない中で、多くの先生方がたくさんの思いを込めて新しい学級をスタートしたことと思います。通常の学級が1学年につき1学級の「単学級」の場合、学級経営には独特の難しさがあります。4月に意識したい点を考えることができればと思います。

北海道公立小学校 教諭 深見 智一

今後も増加が予想される「単学級小学校」

人口減少に伴う学校の小規模化により、2035年には、単学級の小学校が平均的な公立学校の姿になるという予測がされています(貞廣 2010)。私は、自らが経験した「単学級担任の大変さって何だろう?」という問いをもとに、単学級の小学校の学級担任に関する研究を大学の先生と一緒に行ってきました(一例として、深見・津田 2015)。単学級の小学校では、北海道を一例に考えてみると、次のような教員配置が通常となります。

  • 通常の学級が6学級(1学年につき1学級)で児童数が100人以上だと、教職員定数が9名となります。その場合、通常の学級の学級担任が6名、管理職(校長・教頭)、担任を受け持たない教員1名(教務主任を務めることが多い)が配置されます。
  • 6学級ある場合でも、児童数が99人以下だと、通常の学級の担任を受け持たない教員がいなくなります。誰かが休むと教頭先生が代わりに学級担任業務を行わなくてはならない状況になります。

ただし、特別支援学級が設置されている場合や、少人数指導加配、生徒指導支援加配、専科指導の加配措置などがあるかによっても、学校の事情は変わってきます。

単学級と言っても一括りにはできない状況が…

さらに、単学級小学校も、学級の状況により次の3パターンに分けることができます。

  1. 通常の学級のうち、一部の学年が2学級以上で、一部の学年が単学級である小学校
  2. 通常の学級は、すべての学年が単学級である小学校
  3. 通常の学級のうち、一部の学年が複式学級(2以上の学年で1つの学級)で、一部の学年が単学級である小学校

一つ目のパターンは、通常の学級の学級数が7~11で、児童数の減少により単学級小学校への移行過程にある学校と言えます。一部の学年が2学級あるので、その学年と単学級の学年を比べると、担任同士で分担ができない単学級担任のほうが担任業務に関する負担感を強く感じやすいという傾向にあることが分かりました。

三つ目のパターンは、通常の学級数が5学級以下で、複式学級と単学級が混在する小学校です。3つのパターンでは、最も児童数が少ない小学校となります。この場合、児童数の多い学年が単学級となることから、複式学級の学年と単学級の学年を比べると、学習指導で複式指導をしなければならない複式学級担任よりも、単式指導ができる単学級担任のほうが担任業務に関する負担感を感じにくい傾向にあることが分かりました。同じ単学級でも、ある学校では「単学級は大変だ…」と思われ、ある学校では「単学級はいいな…」と思われるというように、その学校の置かれている状況によって、単学級担任が感じる困難さは変化するということです。

前置きが長くなりましたが、学級開きのこの時期に大切なのは…

今回の記事でお話しさせていただきたかったのは、「単学級の学級開きは、こうすればいい!こうすればうまくいく!」ということではありません。地域や子どもの実態、先生のキャラクターなど、いろいろ条件が微妙な組み合わせで成り立っているのが学級経営だと思います。もちろん、児童の構成メンバーがあまり変わらず、教師だけが変わるという単学級の学級経営上の固有性はあります。大事なのは、「いまの時期に、負担を感じている先生はいないかな?」という意識をもっている先生が一人でも多くいらっしゃることだと思います。単学級の学級経営の特徴などその学校の置かれている状況を踏まえつつも、どんな学校規模・学級形態の小学校でもそのような「協働意識」が求められているのではないでしょうか。

実際、私が行った調査の結果から、単学級担任のなかには、学年打ち合わせをしたいと思っている若手教員と、学年打ち合わせがなくて楽だ!と思っている中堅・ベテラン教員の意識の「ズレ」があることが明らかになっています(深見 2018)。そのようなズレをどのように解消していける取組があるのか、次回、ご紹介できればと思います。

参考資料

深見 智一(ふかみ ともかず)

北海道公立小学校 教諭


書籍等で取り上げられることがあまり多くない1学年につき1学級の単学級の学級経営、複式学級の学級経営について、これまでの実践や量的調査の結果をもとに、効果的な実践例を発信していきたいと考えています。

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