単学級小学校での学級経営の1年~秋の文化的行事に向けて取り組んでおきたいこと(10)
通知表が前期・後期の2期制の学校では、評価業務もようやく終わった頃かと思います。 秋の文化的行事(学習発表会や学芸会)に向けての取組も始まっているかもしれません。 文化的行事の指導の際、単学級担任として意識してきたことをいくつか紹介したいと思います。
北海道公立小学校 教諭 深見 智一
単学級担任としての自らの失敗経験から…
学級担任一人で学習発表会などの練習を指導する場合、ついつい「担任の思い」が先行してしまって、指導が厳しくなったり、そもそも、児童の実態に合っていない発表内容になったり、そのような状況に気づいていなかったりという指導上のリスクがあります。
私のこれまでの失敗の経験では、学習発表会終了後に、「子どもたちが本当に発表したかった内容だったのか」「レベルが高すぎる発表だったのではないか」「練習に時間をかけすぎて、学習が遅れているのではないか」といった保護者からの厳しいご意見をいただいたこともあります。遠回しに聞こえてきたのではなく、直接お伝えいただけたのは良かったのかなと、今だから思っています。
そして、そのようなご意見が出るということは、子どもたちも様々な思いをもっていたということです。振り返ってみると、「やり切った!」という充実感が子どもたちの表情から見てとれなかった…と、後になってただただ後悔するばかり…という苦い経験もあります。
何のための学校行事か?という基本に立ち返る
すべての教育活動の指導にあたって大切なことだと思いますが、「何のための学習発表会か?」と目的に立ち返ることは重要です。
学習発表会は、
子どもたちの「日常の」学習の成果を発表する場
です。
教師の見栄や見栄えを意識して発表内容を決めないようにしたいと思います。
単学級だと、隣接学年をついつい意識してしまいがちです。
例えば、6年生の担任をしていると、「5年生の発表よりも、さすが6年生だな!」と思われようと、指導に力が入ってしまうということがありました。今思い返しますと、学習発表会の数週間前になって、急に何か新しい演目の練習をし始めていたようなとき(例:教科書に掲載されていないような器楽合奏の曲を選んで、演目に追加する)は、そのような教師の見栄や見栄えばかりを意識していたときだったのではないかと思います。日常からしっかりとした学習指導をしていれば、「差」にこだわらなくても、「〇年生らしい発表だったね」とごくごく自然に評価していただけます。
また、学習発表会は、
発表することを通して、子どもたちが充実感や達成感を感じたり、自信を深めたりできるようにするための学校行事
です。
学級には、人前で発表することに自信がある児童もいれば、そうではない児童もいます。役割分担で希望がかなった児童もいれば、かなわなかった児童もいます。声が小さい子もいれば、お休みがちな子もいるかもしれません。
いろいろな個性のある子どもたちがいて、すべての子どもたちが「自分は、これは(ちょっとは)頑張れたんだ」と振り返ることができるような前向きな行事にしようと考えると、指導の仕方も自然体でいられるのかもしれません。学校は、劇団でもオーケストラでもありませんので、必要以上に厳しく指導する必要もありませんし、学級担任だからこそ、その児童に合わせた指導をすることができるのです。
通常の学級が単学級の場合でも、特別支援学級の児童が在籍している学年であれば、特別支援学級の担任や支援員などと複数の教員で指導することができる場合もあるかもしれません。しかし、学級編成上それが難しいということもあるかもしれません。
そんなときには、担任していない先生(管理職)、高学年であれば児童の下校時刻が早い低学年の学級担任の先生などに、練習を見に来ていただくようにお願いすると良いと思っています。
練習内容や指導方法を誰かに見ていただくと、指導する教員も発表する児童も「適度な緊張感」が生まれます。そして、終わった後に、児童にコメントをしていただいたり、練習について意見交換できたりすると、一人では気づくことのない「新たな視点」を得ることもできます。これまでの経験上、子どもたちもやる気がアップすることが多かったです。
「頑張っているね」と言われれば教師の自信につながります。「あれは、こういう練習の方法もあるよ」と助言をいただくと、次の練習の時からすぐに直していけます。子どもたちにも、「〇〇先生が、こういうふうにするともっと良くなるよって教えてくれたんだよね」というと、子どもたちなりに納得もしやすく、誰かに「見られる」ということを少し意識するようにもなります。見ていただくのは、完成形ではなく、完成途上で見ていただくことが良いです。終盤になってくると、いろいろな面で修正の余地がなくなってしまうからです。
単学級という環境ゆえに難しいこともありますが、複数の目で児童を見るためのちょっとした工夫をすることで、児童にとっても教師にとっても実り多い文化的行事にできると思います。共に頑張りましょう。
深見 智一(ふかみ ともかず)
北海道公立小学校 教諭
書籍等で取り上げられることがあまり多くない1学年につき1学級の単学級の学級経営、複式学級の学級経営について、これまでの実践や量的調査の結果をもとに、効果的な実践例を発信していきたいと考えています。
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大阪大谷大学 教育学部 教授
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