単学級小学校での学級経営の1年~5月GW明けに大切にしたいこと~(2)
単学級担任のなかには、学年打ち合わせをしたいと思っている若手教員と、学年打ち合わせがなくて楽だ!と思っている中堅・ベテラン教員の意識の「ズレ」があることを紹介しました。 そのようなズレをどのように解消していける取組があるのか考えていきたいと思います。
北海道公立小学校 教諭 深見 智一
ゴールデンウィークも終わって…
GWが終わりました。ここから夏休みまでは大きな連休はなく、日常の学校生活がいよいよ本格的にスタートしていきます。4月当初の緊張感が教師も児童も少しずつほぐれてくる頃かもしれません。こんな時だからこそ、学級の様子を観察して、これまでの良さを「維持」していくところ、逆にテコ入れを図って「改善」していくところを「見極める」ことが大切だと思います。
単学級小学校では、この「見極める」活動を学級担任が一人で行うのではなく、特別支援学級の担任や隣接学年の担任、低・中・高学年ブロックの担任、(もしいれば)教科担任などと「共同で」行っていくことが重要だと考えます。
単学級担任の先生方、先生のお隣に座っている先生はどんなタイプの先生でしょうか?
どちらかと言えば職員室でわいわいほかの先生と話しながら仕事をする先生、教室で一人で集中して仕事をする先生、その間をとっている先生、それぞれお好みのスタイルがあると思います。正解はありませんし、それぞれにメリット・デメリットがあると思います。
一般論ですが、学級経営がうまくいっている先生は、自分なりの方針と手立てをもっており、それを微妙に修正しながら学級経営を行っているはずです。そこに至るまでには、かつての失敗経験を活かしていることもあるかもしれませんし、良き相談相手がいる、書籍やセミナーなどで得た情報などを含めた成功した事例をうまく活用しているなどの過程があったのかもしれません。
そのような学級経営がうまいとされる先生方が、積極的にほかの先生に話しかけている職員室は、「支え合う雰囲気」がある職員室であるように思います。
「なんでもいいから聞いて」と言われても、なかなか聞きにくい!?
かつての私の話です。単学級担任となった4月、初任者の私は、何を準備して始業式を迎えたら良いのかよく分かっていませんでした。そんな時、隣に座っていた先輩が、「まずは、いろいろ役に立つから学級の『名簿』を作ったほうがいいよ」と教えてくださいました。どんな時に使うのか(提出物の回収のチェック、テストや成績などの評価のメモ)、どんな種類の名簿を作ると良いのか(特別支援学級と通常の学級の児童名が両方入っているものor別々のもの、当時は「男女別」のものも用意していました)、Excelの便利な機能などを説明しながら分かりやすく教えていただいた記憶があります。十分に理解していたとは言えないかもしれませんが、「何をすればよいのか」が行動レベルで分かり、とても大切なサポートでした。
それ以降も、「〇〇、準備した?」とリマインダーのようにいつも確認をしてくださいました。その先生自身が、自分もかつてそうしてもらったから…と話しておられましたが、その先生個人の献身的なサポートなしでは1年間を乗り越えられなかったと思います。
様々な「調査ツール」を目的ではなく、手段に。そして、組織的に。
これからの時期、学級や児童の状況をアセスメントする様々なツールの活用がある時期かと思います。「Q-U(楽しい学校生活を送るためのアンケート)」や「アセス(ASSESS 学校適応感尺度)」などの活用や、学校独自の「いじめアンケート」や児童との個人面談が予定されている学校もあるかもしれません。これらは、学級をより良くしていくための「手段」に過ぎません。実施や処理、その後の対応や話し合いに時間や手間がかかるのも確かです。
しかし、学級の様子について話したいと思っている若手教員と、そういう話し合いの時間がなくて楽だ!と思っている中堅・ベテラン教員の意識の「ズレ」がある単学級小学校だからこそ、こういう機会に学級の様子について組織的に話し合えるような場をつくっていく必要があると思います。
学校のシステムとして埋め込んでしまうという、少し強制的な感じもしますが、そのようなところもないと学級がなかなか開かれていかないこともありますし、個人の献身的なサポートだけに期待することにもリスクがあります。
そのような場の設定や担任同士を「つなぐ」役割が、単学級小学校の管理職、教務主任や生徒指導主任には求められるのではないかと考えています。その「つなぐ」事例については、次回ご紹介できればと思います。
深見 智一(ふかみ ともかず)
北海道公立小学校 教諭
書籍等で取り上げられることがあまり多くない1学年につき1学級の単学級の学級経営、複式学級の学級経営について、これまでの実践や量的調査の結果をもとに、効果的な実践例を発信していきたいと考えています。
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大阪大谷大学 教育学部 教授
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