2023.07.03
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単学級小学校での学級経営の1年~夏休み前の7月に大切にしたいこと(5)

夏休みが近づいてきました。皆様の学校では、夏休みの宿題(学習に関する課題)は、どのようなものがあるのでしょうか? そんな夏休みの宿題を取り上げながら、単学級担任の難しさについて今回は取り上げてみたいと思います。

北海道公立小学校 教諭 深見 智一

教員も悩む、夏休みの宿題

夏休みの宿題(学習に関する課題)については、教員だけではなく、保護者・児童も様々な考えがあると思います。そもそも、一切ないという学校もあるかもしれません。読書感想文や自由研究、工作、作品コンクールへの応募などが、課題として課される学校もあるかもしれません。学級担任が復習のプリントを作成したり、著作権フリーのプリントなどを印刷して配布したり、市販の夏休みドリルを保護者負担で購入したりして宿題とする学校もあるかもしれません。何が正解なのかは、正直なところ、「誰も分からない」ような難しい問題だと思います。

おそらく、夏休みの宿題の内容や量は、地域によって大きく異なるのではないでしょうか。中学校受験をする児童が多い地域では、塾などの宿題もあるなかで、小学校から出される宿題が大変…という声が聞かれるのかもしれません。一方で、「学校の宿題がないと、家で勉強しないのでたくさん出してほしい」という要望が多い地域もあると聞いたことがあります。様々な意見があるなかで、学校としてどのように考えるのかということも大切になってきます。

学年で揃える難しさ、揃えない難しさ

私がかつて行った単学級の小学校の学級担任を対象にしたアンケート調査では、単学級担任としての悩みとして、「『学年で揃える』という習慣が単学級小学校ではあまりないこと」を挙げる教員が多くいました。とくに、通常の学級が1学年につき複数(2学級以上)ある学校で勤務していた先生が、単学級小学校に異動すると、そう感じやすいようです。

もう少し詳しく分析してみると、単学級担任のおよそ6割は、「学年・学校で揃えている」という何かスタンダードのようなものがあったほうが楽だと考えていました。一方で、単学級だと「足並みを揃える必要がなく、学級担任の裁量で決められる」ことが多くて楽だと考える単学級担任も4割ほどいました。この4割にあたる先生は、単学級担任を何度か経験することで、そのように考えるようになっていったようです。また、単学級のような小規模校での勤務年数が比較的長い教員に多いことも分かりました。

夏休みの宿題がある学年とない学年があったとしたら…

このような教員意識があることを前提に、単学級小学校で夏休みの宿題がある学年とない学年があったとしたら、どのような問題点があるでしょうか?例えば、「3・5・6年生は宿題が出されるけど、1・2・4年生は宿題がない」「2・3・6年生は読書感想文が課題だけど、1・4・5年生はない」などの違いがあったとします。それは、学校全体で、「この学年ではこういう課題を出す」と決まってのことではなく、それぞれの学級担任の判断の結果だったとします。

個人的には、「それぞれの学年でしっかり説明ができるのであれば、宿題がある学年とない学年があっても良い」と思っています。ただ、学校全体のことを考えたときに、「現実的にそれは難しい」とも考えています。理想と現実のすり合わせを行うと、やはり「難しいな…」と思ってしまうのです。児童や保護者の「どうしてこんなにクラスによって違うの?違うことの意味は?」という思いに対し、それを納得できるだけの説明を「すべての先生ができるのか」という教員側の対応も考える必要があります。そうすると、「全校で統一しよう」「低・中・高学年で揃えよう」というところに落ち着くのかもしれません。「理想」だと思っていることと、現実的に可能なことにはなかなか差がありますが、このような問題をどのように解消していくかということに、私も含めて、多くの単学級担任の先生方が悩んでいるのではないでしょうか。

このような悩みは、単学級担任に限らず、複数学級ある学年でも起こりうることです。このような現実的な悩みを、他の教員とできるだけ調整して話し合っていけるような雰囲気作りが、どのような学校規模でも大切であるということを日々実感しています。

深見 智一(ふかみ ともかず)

北海道公立小学校 教諭


書籍等で取り上げられることがあまり多くない1学年につき1学級の単学級の学級経営、複式学級の学級経営について、これまでの実践や量的調査の結果をもとに、効果的な実践例を発信していきたいと考えています。

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