『つなぐ・つながる』授業づくりのポイント、「つなぐ」ということ
よい授業、一流の授業を創ることのKeyWordの一つ、「つなぐ」。その具体を、子どもの発言から考えてみます
浜松学院大学 現代コミュニケーション学部 子どもコミュニケーション学科 教授 前浜松学院大学短期大部 幼児教育科 特任講師 川島 隆
大学生に聞きました。「どっちのラーメン屋さんで?」
前回も紹介した初等教科教育法(算数)の授業もいよいよ終盤に差し掛かりました。
先週の授業の冒頭で、こんな質問をしました。
皆さんも考えてみてください。
(スライドを提示しながら)
①は、最高の味「一流のラーメン屋さん」
②は、味はまずまずだけど、「二流のラーメン屋さん」
あなたは、どちらのラーメン屋さんで修業しますか? また、それはどんな理由からですか?
すると、学生の回答は?24名の受講者中、22名が①の「一流のラーメン屋さん」を選びました。
理由は、以下のとおりです。
〇 一流になる過程や苦労を学びたい。
〇 自分も一流のラーメンを作りたい。いいラーメンを作りたい。
〇 美味しいと思ってもらえるラーメンを作りたい。
〇 やるからには味も美味しくて一流のところがいい。
〇 上手い人から学んだ方がよい。腕のいい店主に教えてもらえる。
〇 一流のラーメン屋は、指導も環境も一流だと考える。
〇 せっかく学ぶならいい技術を身に付けたい。
〇 自分も一流になりたい。目指すなら上。
〇 高い技術を盗める。
〇 自分の店が人気になってほしい。
皆さんは、どう考えましたか?
確かに、私は、ラーメン好きですが、ラーメン修業について聞きたかったのではありません。
ラーメンを「授業」に置き換えて考えてみてください。
どんな授業を、どんな教師を目指すのか
どんな授業を、どんな教師を目指すのかを考えてもらいたかったのです。
つまり、教師になるなら、一流と言われる授業を創れるよう修業をしたいですね、ということです。
子どもに楽しいと実感してもらえる授業を創りたいし、いい技術を身に付けたいし、教師として一流になりたい。
そして、一流になる苦労も学びたい。上を目指したい。
(もちろん、子どもが主人公であることに変わりはありません。)
授業づくりについて、そんなふうに考えていけたらいいなと思うのです。
教師は、誰でも、子どもにとってつまらない、楽しくない授業を創ろうなんて考えていませんよね。
よい授業を創るポイントは、「つなぐ」ということ
では、教師にとって、よい授業を創るポイントは、何でしょぅか。
そのkeyWordの一つが、これまでつれづれ語ってきた「つなぐ」ということです。
例えば、子どもの発言と発言をつなぐこと。
どの授業でも、ある・あるの場面です。
具体的に考えてみましょう。
子どもの発言を「つなぐ」
教室での子ども発言。一人の子どもが発言します。
「ぼくは、○○だと思います」
この後、それを聞いていた子どもたちは、どのように応えているでしょうか?
「………」なのか。「いいです」や「同じです」なのか。
学級によっては「あってます」という応えかたもあるようですが。
どんなふうに「応える」と、発言した子どもにとってよいのでしょう。
次の発言がしやすくなるのでしょう。
次につながっていくのでしょう。
どんなふうに「応える」と、多くの考えが交流しあい、学びが深まるのでしょう。
これは、「聴きかた」ということとつながってくるのですが。
聴きかたは、つなぐこと、聴き合いを創っていくことと、まさにつながっていくことですね。
例えば、聴き手の反応が、
(1)例えば、聴き手の反応が、「………」だったとき
発言者は、
「聞いていた友達は、何を思っているだろう」
「言わなければよかったのかな」
「あってるのかな」
そんなことを思うでしょうか。
(何も反応がないって、いやなもんです。これは、大人も子どもも同じですね)
(2)例えば、聴き手の反応が「いいです」「あってます」だったとき
発言者は、
「あ~、よかったな」
「ホッとしたよ」
「間違わなくてよかった」
そんなことを思うでしょうか。
(ドキドキしながら手を挙げて発表して、「あ~よかった」という安堵感。でも、みんなと違っていたら、どんな気持ちになるんでしょうか。また、「あってます」って言われると、聴き手は、審判のような感じで、まさに審判の判定を仰ぐってイメージに思えます)
子どもの内にある多様な思いに寄り添う
一律に、「○○です」という応えかたもありますが、子どもの心の内は、違うんじゃないかと思うのです。
「あなたの発言を聴いているよ」
「そうか。そんなふうに考えているんだね」
そんな受け止めから、
「なるほどね」
「ぼくと似ているけど、ちょっと違うところがあるよ」
「全く同じだよ。大賛成」
「イマイチ分からないなあ。もう一度説明してくれないかな」等々多様な思いがあるわけで、多様に表現してもよいと思うのです。
いろんな思いがあるのに、「いいです」の大合唱で、それらをかき消してしまうと、学び合う機会を逸してしまうのではないかと思います。
結びに
こんなことも具体的に子どもたちと話し合ってみては如何でしょうか。
授業の主人公は、子どもです。
だから、発言をつなぐ子どもたちが、その「つながり」を自覚的になることもよいのではないかと思うのです。
先生の教えたとおりにするのでなく、子ども主体で「つながり」を考えてみるといいんじゃないか。
そんなふうに考えてみました。
川島 隆(かわしま たかし)
浜松学院大学 現代コミュニケーション学部 子どもコミュニケーション学科 教授
前浜松学院大学短期大部 幼児教育科 特任講師
2020年度まで静岡県内公立小学校に勤務し、2021年度から大学教員として、幼稚園教諭・保育士、小学校・特別支援学校教員を目指す学生の指導・支援にあたっています。幼小接続の在り方や成長実感を伴う教師の力量形成を中心に、教育現場に貢献できる研究と教育に微力ながら力を尽くしていきたいと考えております。
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