2024.02.21
  • twitter
  • facebook
  • はてなブックマーク
  • 印刷

「振り返り」に値する中味が大事 子どもにとっての中味のある授業(3)

「子どもにとって中味のある授業」というのは、やっぱり先ずは楽しい授業、学びがいのある授業といってもよいでしょうか?
今回は、体育科における「楽しい授業ってどんな授業か」「学びがいのある授業ってどんな授業か」を考えてみたいと思います。

浜松学院大学 現代コミュニケーション学部 子どもコミュニケーション学科 教授  前浜松学院大学短期大部 幼児教育科 特任講師 川島 隆

まる子ちゃんのギモン 「体育の授業の役割」

日曜の午後6時半と言えば『サザエさん』。
これは、昭和世代でしょうか?
明日から始まる仕事を思って、日曜の夕方から憂鬱な気分になることを「サザエさん症候群」って言われたりすることもありますが、皆さんはいかがですか?
私はどちらかと言うと、その前に登場する『ちびまる子ちゃん』で、感じることがありました。
この「まる子ちゃん」。
作者のさくらももこさんは亡くなってしまいましたが、最高視聴率39.9%を記録する人気アニメです。
時代背景が重なる方々は、自分の子どもの頃と重ね合わせたりして見ることもあるでしょう(昭和世代ですね)。

そのまる子ちゃんは、あんまり運動が得意ではないようで、コミックの中で、
「体育の授業は、人間形成において学校教育の中にとりいれなければならないほどの重要な役割をどのへんに秘めているのであろうか」
というギモンを投げ掛けています。

まる子ちゃんが納得するような答えを持っていますか?

先生は得てして勉強もできる、ある程度体育もできる人が多いですよね。
「できない」「苦手だ」っていう人の気持ちって、できる人にはなかなか分かりにくいものです。
でも、現実には体育がいくら人気がある教科といっても、苦手な子どもはいるものです。

では、まる子ちゃんのような体育の授業を受ける意義、体育を学ぶ意義にギモンを感じている子どもたちに、あなたならどのように答えますか?
まる子ちゃんが納得するような答えを持っていますか?

「あなたが、まるちゃんの担任だったら、どのように答えますか?」に学生が応える

「体育の授業をすると、こんないいことがあるよ」と明解な応えかたをしたいものです。
そして、そのいいことが将来にわたって、あるいは将来につながるいいことであると言いたいですね。
私が今を去ること二十数年前、大学院で学んでいた頃、学部生の授業「保健理論B」で、学生とかかわる機会を得ました。

その授業の中で、この資料を使って
「あなたがまるちゃんの担任だったら、どのように答えますか?」
と尋ねてみました。

学生たちの中で、3人はこんな回答をしてくれました。

学生A :
 「体育をやる上で一番重要な事は、上手下手ではなく、体を動かすことの楽しさを学ぶことにある。また自分の身体の機能を高めるためでもある。さらに、集団行動の大切さも学ぶことができる。したがって、学校で行う体育の授業は全然目的を持っていないのではなくあらゆる分野にわたって、今後生活していく上で非常に重要な要素をたくさん含んでいるのである」

学生B:
「体育は、自分のために体力をつけたりするものだから、人と比べて劣等感を持つことってないよ。いろいろな自分を発見してだめでも、私って面白いやつと自分自身で楽しんでごらん。それに自分1人じゃできないことでも、みんなと一緒にすることで出来上がるものもあるんだよ。みんなの協力で素晴らしいプレーやきれいな形に出来上がった時はとても嬉しいと思うよ。それは絶対1人じゃ経験できないことだもん。また、他の人の協力をしてあげて、その子を成功させてあげるのも素晴らしいことだよ」

学生C:
「体育は、自己の身体を形成していく段階で必要なものであると同時に、ありのままの自分を表現するための数少ない時間ではないかと感じるようになった。結果を重視するのではなく、結果に至るまでの過程に目を向けていくべきではないかと思うよ」

高田典衛氏の考えていた「楽しい体育の授業」

教育学部の1年生の回答としては、どれもよく考えられたものだと感心しました。
さて、かつて体育科教育の研究者・高田典衛氏は、子どもの側から見た体育のよい授業の条件を、その著書の中で「楽しさの四原則」として提唱しています。

つまり、
① 動く楽しさ   快適に、精一杯運動させてくれる授業
② 伸びる楽しさ  ワザや力を伸ばしてくれる授業、伸びを実感させてくれる授業
③ 集う楽しさ   友達と仲良くさせてくれる授業
④ 解かる楽しさ 新しい発見をさせてくれた授業、好奇心や探究心を満足させてくれる授業

この4つの楽しさを味わわせてくれる授業が「体育のよい授業」というのです。
さきほどの3人の学生の回答は、見事にその4つにふれられています。
つまり、体育の楽しさを味わうことが、体育の学ぶ意味とつながっていると言ってよいのではないでしょうか。
「こんな楽しさを、こんなよさを味わうことが、体育ではできるんだよ」
そう、まる子ちゃんには伝えてあげたいですね。

むすびに

これは、体育科の「学ぶ意味」と「楽しさ」のお話です。
それでは、他の教科は、どうでしょう?
国語科や算数科、理科はどうして学ぶのでしょうか。
それを考えるヒントは、その教科の持つ「楽しさ」を考えることにあるのではないかと思います。
子ども自身が、「楽しさ」「よさ」を実感しない限り、本当に主体的には学ぶことはない、そう考えます。
また、学びがいも実感することもないでしょう。
いかがでしょうか。

川島 隆(かわしま たかし)

浜松学院大学 現代コミュニケーション学部 子どもコミュニケーション学科 教授
前浜松学院大学短期大部 幼児教育科 特任講師


2020年度まで静岡県内公立小学校に勤務し、2021年度から大学教員として、幼稚園教諭・保育士、小学校・特別支援学校教員を目指す学生の指導・支援にあたっています。幼小接続の在り方や成長実感を伴う教師の力量形成を中心に、教育現場に貢献できる研究と教育に微力ながら力を尽くしていきたいと考えております。

ご意見・ご要望、お待ちしています!

この記事に対する皆様のご意見、ご要望をお寄せください。今後の記事制作の参考にさせていただきます。(なお個別・個人的なご質問・ご相談等に関してはお受けいたしかねます。)

pagetop