外国語科の授業づくりで大切にしていること
いろいろな人から授業づくりへのヒントをいただき、改めて授業づくりで大切にしていることをまとめました。
自戒の念をこめた記事です。
兵庫県西宮市立甲陽園小学校 教諭 羽渕 弘毅
授業観察から得られるもの
毎年、大学生や大学院生が「授業観察」に来てくれます。
指導されている大学の先生には「忙しい中、ありがとうございます」といつも言われるのですが、私にとっては自分を伸ばす絶好の機会だといつも感じています。大学生からは素朴な質問で、大学院生からは鋭い質問で自分の指導について振り返る機会をもらっています。
特に今年は教科書も新しくなり、試行錯誤しながら指導している中で色々な角度からコメントをいただけるのは大変嬉しいです。
そこで今回は、小学校における外国語科の授業づくりで大切にしていることを改めてまとめました(授業づくりのあり方は、年々変わっていっているのが正直なところですが、とりあえず現段階のものです。ご了承ください)。
外国語科だけではなく、他教科につながることもあると思います。職員室で授業づくりのネタにしていただければ嬉しいです。
方法同じ、内容変える
外国語科の授業では、どうしても指導者が活動のための説明が長くなり、重要である子どもの活動時間が短くなってしまうことが生じてしまいます。週2時間しか外国語科の授業はありませんので、子どもたちの活動や練習の時間をしっかりと確保したいと考えています。そのため、活動の方法や授業の流れはある程度同じものにして、内容や難易度を変更したりすることで毎回の説明時間を減らすことを心がけています。また、ある程度授業の流れが一定であれば、外国語を学習するという不安感を緩和することができます。
現在のスタイルは以下の通りです。
- 読むことを中心とした帯活動
- ペアでの単元で学習したキーフレーズの練習
- それらを活用したペアでの「スモールトーク」
- 本時のめあてを引き出すための「こまっトーク」
- 活動①(めあて達成のための方法は児童が選ぶ)詳細については、またどこかでお話できればと思います。
- キーフレーズの確認・ペアでの練習、それらを書く活動
- 活動①’
- 達成度の振り返り
静と動の組み合わせ
これも先ほどの話と似ていますが、授業の中で強弱をつける意識をしています。授業で静の活動、動の活動がなるべく交互にくるように設定しています。例えば、静かに英語を聞く場面があればその後は音読をして、また音声を聞いてからペアと英語で話す…などメリハリをつけた活動の設定をしています。授業の中で動きを生じさせ、そのメリハリが子どもたちの集中力を持続させると考えています。
学校でしかできない学び
今の子どもたちはYouTubeなどで好きな学習動画をいつも見られるようになっています。それにも関わらず、子どもたちは学校という空間で友だちと学んでいます。この友だちと学ぶという視点や意味を大切にしたいと考えています。「主体的で対話的で深い学び」にもあるように、教科の枠内で友だちとの対話を通して学びを深めてほしいと考えています。子どもたちの学びに対して、指導者がどの程度まで介入して、いかに子どもたちに学びを委ねるかは大切なことだとわかっているものの…なかなか難しいですね。今後の課題でもあります。
また、コロナ禍で控えていたペアやグループなどでの活動もできるようになり活動形態の幅が広がっています。どのような活動形態を選ぶのかも大切ですね。
目的と活動をマッチさせ、いかに活動を削るか
子どもたちの活動ひとつひとつを目的とのつながりを考えて、授業を設定しています。何のためにする活動なのか指導者が理解し、説明できるようすることが大切です。これらはバックワードデザインとも強いつながりがありますが、最後の姿(ゴール)を決めて活動に意味をもたせることが大切です。指導者としては、授業で「この力をつけるためのこんな活動が足りない!」「こんな活動をもっとさせたい!」という思いに陥りがちですが、最後のゴールに向けて「何が削れるか」「どの活動をなくし、他の活動を充実させるか」を考えることも大切です。
デジタルに「使われない」
一人一台端末が導入され、どうしても学習者用端末を使わないといけないという感覚に陥りがちなのですが、大切なのは「本当に必要なのか?」という視点です。学習者用デジタル教科書や指導者が使用を促す学習ツールは本当にこの場面で必要なのだろうかと自問自答をするべきです。デジタルを使わない方が有効な場合も考えられるので、「使われない」という意識は大切にしたほうがいいかもしれません。
また、デジタルによって授業づくりへの負担は軽減されたように感じますが、子どもたちひとりひとりの学習成果を「みとる」ことが可能になり、その分の負担は確実に増えています。「楽になった!」と短絡的な考えをするのではなく、軽減された負担や時間をどのように活用するかは今後の課題でもあります。
試行錯誤、そして全員が目標を達成することを「目指す」
最後はこれになります。指導の対象となる子どもたちが試行錯誤しながら最後のゴールに近づくことが大切です。「目指す」となっているのは、もちろん全員が目標を達成することが指導者としてのゴールですが、なかなか難しいのも現実です。その状況は子どもたちから私たち指導者への評価、フィードバックだと認識して指導の改善につなげなくてはいけません。
授業づくりのモヤモヤは続く…
授業づくりで大切にしていることを述べましたが、本当に大切にできているのかという自戒の念を込めての記事でした。
授業づくりのモヤモヤは永遠と続きそうです。
以下、先日授業見学をしてくれた大学生からの授業見学への感想(一部抜粋)です。
※学生の皆さん、たくさんほめていただきありがとうございました。うれしいです!
・児童の興味・関心や積極性、自主性を引き出している授業であると感じ、強い刺激を受けました。型の中で自由に学んでいるということがしっかり理解でき、何より児童が楽しそうに授業を受けていることが非常に素晴らしいと感じました。
・流暢に音読している児童に驚きました。改めて雰囲気作りが大切であると実感しました。
・多くの児童さんが楽しそうに授業に取り組まれていました。後ろから拝見していてもとても楽しく、退屈さを感じさせない授業でした。子どもたちに気づかせることが大切であると実感しました。
・小学校での本格的な英語の授業を初めて見て、レベルの高さに非常に驚いた。wantやhaveなどを用いた文を児童自ら考え、積極的に発言する姿や、課題の提出でteamsやFlipを利用しているなど、私が小学生の時とは全く異なっていた。また、会話のテーマを修学旅行や林間学校など、児童の身近なテーマに毎回変えることにより、真正性のある会話ができていて、児童たちが楽しそうに英語で会話をしている姿を見ることができた。私も模擬授業や教員になった際には真正性のあるコミュニケーションができるような授業展開ができるようになりたいと強く思った。
・こまっトークでは、先生自身が悪い例を出すといった指導がなされており、私にとって新しい学びになった。児童に悪い例を見せるのは、とても抵抗があることだが、この抵抗にも恐れない授業が児童にとっても良い学びになるのだと分かりました。
・児童が積極的に発言できる環境作りが整っていると感じた。英語の授業が始まった瞬間、児童は切り替えができているように見えた。また、児童たちも発想力が豊かで、単語を連想したり予測したりと、楽しみながら授業を受けている印象だった。授業の流れもスムーズで、見学者側から見ても45分間の授業が楽しくあっという間に終わった。退屈している児童もほぼおらず、児童同士で助け合いながらActivityに挑めてて集中力もあると感じた。
・見学させていただいた授業でも、自ら何をするべきか、したいのか選択肢を与えることが「やらされる」授業ではなく「自ら進んでやる」授業という羽渕先生の目的につながる授業構成だったと感じました。
・アメリカに留学した際の現地の学生を思い出しました。アメリカの学生も授業に積極的に参加していたのが印象的です。また、各自で学習を進める時間を設けていましたが、みんな話しながらも学習を進めていて驚きました。あのような時間があると少し遊んでしまう児童がいるのではないかと思いましたが、みんなやることはやっている感じで感心しました。
・児童たちの楽しそうに英語を学ぶ姿をみて、私もより一層教員になりたいという気持ちが強まりました。羽渕先生のように、児童が楽しめる授業作りができる教員になれるよう頑張ります。本当にありがとうございました。
バックワードデザインや「こまっトーク」については過去の記事をご参照ください。
羽渕 弘毅(はぶち こうき)
兵庫県西宮市立甲陽園小学校 教諭
専門は英語教育学(小学校)、学習評価、ICT活用。 広島大学教育学部を卒業後、高等学校での勤務経験を経て、現職。 これまで文部科学省指定の英語教育強化地域拠点事業での公開授業や全国での実践・研究発表を行っている。 働きながらの大学院生活(関西大学大学院外国語教育学研究科修士課程)を終え、「これからの教育の在り方」を探求中。 自称、教育界きってのオリックスファン。
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