保育実習と実習生の現状
保育士資格や幼稚園教諭を取得するうえで実習は欠かせません。そのため、現場の先生方にはいつも面倒を見ていただき大変感謝しております。今回はその実習に関して、学生の現状をお伝えしていきたいと思います。
旭川市立大学短期大学部 准教授 赤堀 達也
保育士資格・幼稚園教諭の資格を取るには…
まずは資格を取得するうえで必要な実習について説明します。
保育士資格を取得するためには、3つの実習が必要となります。そのため保育実習Ⅰで保育所実習と施設実習の両方に2週間ずつ行くこととなります。その後、保育実習Ⅱ(保育所実習)と保育実習Ⅲ(施設実習)のどちらかを選び、こちらも2週間行くことになります。
また幼稚園教諭の資格を取得するためには合計4週間の教育実習が必要となります。1回目に1週間・2回目に3週間行ったり、両方とも2週間で行ったりと養成校によって様々です。
そして当然ではありますが毎日日誌を書き、記録を残すことが求められます。保育実習Ⅱ(場合によっては保育実習Ⅲでも)と幼稚園実習では、一日担任(一日実習)をすることになるため、その進め方を記した指導案も書く必要もあります。
実態その1「実習日誌」
実習日誌についてです。小学校・中学校の教育実習よりもはるかに難しく時間がかかるようです。個人差はありますが、最低でも3時間、文章が苦手な実習生だと5時間くらいかかると言っています。17時くらいに実習を終えますが、立場や体裁上すぐに帰れる訳がなく、やっと帰路につき夕食・お風呂・明日の支度を手早く済ませ、20時から書き始めたとしても、書き終わるのは23時や日をまたぐそうです。そのような現状を知ってか、昼休みや放課後の時間で書くことを許してくれる園があります。実習担当の先生からとても丁寧にコメントを書いていただけることも多く、このコメントに勇気づけられる実習生が多いです。
実態その2「指導案」
次に指導案です。指導案を実習中に書くとなると、上記のように実習日誌にとても時間がかかるため、実習生は連日徹夜となってしまいます。また一日担任する日は設定保育(授業、制作が多い)を行うため、そこで使用する材料や制作物の準備もあるため、一日や二日の徹夜では済まないこともあります。そのため事前オリエンテーション時に提出するように促してくれる園もあります。また、実習生の事情をよく分かってくれている園では、一日実習を3~4日目くらいに行い、あとはストレスなく子どもとの触れ合いをできるように考えてくれる園もあります。このような園は園長先生が大学教授を兼務しているようなところが多いです。
最後に
間違えないでほしいのは、実習生を甘やかしてくれという意味ではありません。このような厳しい実習を乗り越えてきた現場の先生方には感服するばかりです。保育職はただでさえブラックと言われているなか、実習生たちは高校時代に勇気をもって保育の道に進んできました。しかし実習で実態を知り、別の道に変更することもあります。力がなくて進路変更をする実習生もいますが、力があっても「私に向いていない」と変更する実習生もいるようでは、両者にとってあまりにも悲しい結果です。いま教員の世界では学校における働き方改革が進められています。保育職でも進められてはいますが、かなり緩やかな進度のようです。次世代のためにも、私たち保育者養成校の教員がリードして進めなくてはと感じています。
赤堀 達也(あかほり たつや)
旭川市立大学短期大学部 准教授・北海道教育大学旭川校女子バスケットボールヘッドコーチ
これまで幼児・小学生・中学生・高校生・大学生と全年代の体育・スポーツ・部活動指導してきた経験から、子どもの神経に着目したスポーツパフォーマンス向上を図る研究を行う。
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近畿大学 語学教育センター 准教授
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大阪市立堀江小学校 主幹教諭
(大阪教育大学大学院 教育学研究科 保健体育 修士課程 2年) -
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静岡大学教育学部附属浜松小学校 教諭
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兵庫県立兵庫工業高等学校 学校心理士 教諭
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浜松学院大学 現代コミュニケーション学部 子どもコミュニケーション学科 教授
前浜松学院大学短期大部 幼児教育科 特任講師 -
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