授業開きから始めよう!たった1冊のノートでできる 優しいクラスをつくる方法
4月は子どもも先生も気持ちを新たにスタートできるよいチャンスです。特に、この時期は子どもが張り切っていて、良い姿が見られるチャンスです。この時期にしっかりとした優しいクラスをつくっていきたいですね。実は、それ、たった1冊のノートでできるんです。では、どうすればよいか?今回はその方法を紹介します。
東京学芸大学附属大泉小学校 教諭 神保 勇児
【ノートを活用する】
優しいクラスをつくるための下準備があります。子どもの良いところを記録するノートを作ります。子どもの良いところを見つけたら、すぐに記録することができるからです。先生が記録する分のノート1冊です。子どもが使っている5mm方眼ノートで構いません。使用するペンは何でも構いません。私の場合、万年筆を使っています。いつも使っていないペンで書いていると特別感が出ます(1000円程度の安いものです)。
ノートには基本的に先生が子どもの様子をみて「いいな」と思ったことを記録していきます。日付と名前、「いいな」と思ったことの3つを書いていきます。「日直で大きな声を出していていいな」と思ったら、そのことを書いていくのです。
例えば、ときどき、子どもが「Aさん、私が鉛筆をなくして困っていたときに貸してくれたんだよ」と教えてくれることもあります。嬉しい情報です。さっそく教えてくれたBさんから話を聞き、ノートに記録していきます。そして、Aさんからも話を聞きます。この時、教えてくれた子についても「友達のいいところを見つけていた」などと記録をします。友達のよさを見つけるのもよいことだからです。
また、ノートを見て、ノートに名前が登場しない子がいるかどうかを探します。もし見つけたら、次の日にその子の様子を重点的に見るようにします。
【ノートは見られても平気】
子どもの良いところを記録していくわけですから、ノートを見られても平気です。むしろ、たくさんの子に見てほしいと思います。実際、私が子どもの良いところを見つけてノートに記録しているとき、横でCさんがじっと見ていました。その時、私が「Dさんって友達が落とした消しゴムをさっと拾ってくれたんだよ。優しいよね。こんな子がクラスにたくさん増えると嬉しいな」と話しました。すると、それを聞いていたEさんは、教室の床に何か落ちてないかを探し出し始めたのです。「いいな」と思ったことを実践しようとする姿です。とても心があたたまりますね。その時も、私は見逃さずにEさんについて「友達の良いところをまねして、床に落ちているものがないかを探した」とノートに書きました。こうやって、ノートを見られることによって、優しい気持ちがクラスに波及していきます。
【帰りの会で友達の良いところを発表させる】
先生が忙しくて、子どもの様子を十分に見ることができないこともあるでしょう。そんな先生におすすめなのが、帰りの会で友達の良いところを発表するコーナーです。やり方は色々あります。
- 良いところを見つけた子を5名くらい発表させる。
- 日直の子に発表させる。
- 輪番で1列ごとに発表していったりする。
先生が気付かないところで子どもの良いところを互いに見つけている場合もかなりありますので、おすすめです。その発表を聞きながら、ノートに記録していきます。
【ノートを子どもに書かせる】
毎日子どもの良いところをノートに書くことを続けていると、「私も書きたい!」という子も出てきます。とても嬉しいことですよね。子どもに書いてもらう時には、最初にどんなことを書くのかを確認します。書く内容は以下のとおりです。
- 日付
- 自分の名前
- 友達の名前
- 友達の良いところ
そして、先生の目の前で書くようにします。もちろん私の使っている万年筆も使っていいことにしています。書き終わったら、必ず書いてくれた子のこともノートに記録します。
【朝の会や帰りの会でノートに記録したことを読む】
友達の良いところを伝えるには、朝の会や帰りの会が最適です。先生の話の中で、ノートに記録したことを読んで伝えましょう。一人ひとりの子どもたちの顔を見て読むのがコツです。子どもたちに聞き取れるように、ゆっくりと読みましょう。これを毎日続けていきます。時間がなければ、記録した全員でなくても、名前だけでも構いません。
記録を読んでいくうちに、クラスが一気に優しい雰囲気に変わっていきます。読まれた子も嬉しそうですし、仲良くしている子もニコニコしています。子どもの良いところや優しいところを広めていくと、優しいクラスにすることができます。
【所見でも使える!】
所見とは、学期末に子どもに渡す通知表で、文章で子どもの様子を伝えるものです。子どもの様子はおおよそ次のような内容を書きます。
- 休み時間の様子
- 係や委員会、クラブ活動などの取り組み
- 道徳、総合的な学習の時間(学校によっては英語)を除いた教科学習の取り組み
これらの様子を「事実」と「評価」を交えて書きます。例えば、こんな感じです。「担当教室の〜」の部分が事実、「任された〜」の部分が評価にあたります。これをクラスの人数分書いていきます。
「整美委員会では、担当教室の掃除用具が壊れていないか、過不足はないかを確認していました。任された仕事を忘れずに丁寧に続ける姿が大変立派でした」
これを学期末に全員分書くのは至難の業です。そこで、活躍するのが、これまで記録したノートです。うまく活用すれば、学期末のお仕事もかなりはかどります。
今回のお話はいかがでしたか?この内容は、授業スキルアップ研究会でも扱っています。また、『子どもがなぜか話したくなる 算数ファシリテーション入門』(東洋館出版社)や『学び合いコーディネートスキル60』(明治図書)もぜひ参考にしてみてください。
関連リンク
神保 勇児(じんぼ ゆうじ)
東京学芸大学附属大泉小学校 教諭
2020年度はコロナウィルスでの休校期間でオンライン授業を多く行うことがありました。その時に得た、オンラインでも使える問題の見つけ方、子供の自力解決の見取り方、つぶやきの拾い方、発表検討のさせ方など紹介していきます。
「jimbochanのブログ」https://jimbochan.hatenablog.com/
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