2023.04.14
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『つなぐ・つながる』新年度だからこそ「子ども、先生との関係づくり・雰囲気づくり」 

2023年度、子どもたちとの出会いはどうでしたか。新しい教職員での職員室は、どんな雰囲気ですか。まだまだ始まったばかり。これからですね。子ども間、教職員間との関係づくりをどのように進めていけばよいでしょうか。思いのままに書き綴ってみました。今期もどうぞよろしくお願いいたします。

浜松学院大学 現代コミュニケーション学部 子どもコミュニケーション学科 教授  前浜松学院大学短期大部 幼児教育科 特任講師 川島 隆

令和5年度、スタートからの1週間

2023年度がスタートして2週間が過ぎようとしています。
新たな場での新たな出発は、いかがでしょうか。
今期も執筆の機会をいただき、大変嬉しく思います。
教育の「今」を見つめながら、前期からのテーマ「つながり」について引き続き、つれづれ語っていきたいと思います。
どうぞよろしくお願いいたします。

新しい学級の子どもたちの様子はどうですか。
まだまだ顔と名前が一致しない子ども、
会話をしていない子ども、
褒めていない子ども、
まだまだいるかもしれませんね。
どんな雰囲気ができつつあるのでしょうか?

職員室の雰囲気も変わっているでしょう。
どんな感じですか。
まだまだ落ち着かないところもあるでしょうか。
大きな学校では、あいさつ以外の会話をしていない同僚、名前もはっきり分かっていない同僚もいたりするかもしれません。
チームとして機能するためにも、働きやすい職場にするためにも、職員室の雰囲気は、大切ですね。
もちろん子どもたちにとっては、教室の雰囲気は大事です。

職員室の「雰囲気」、教室の雰囲気

このことは、昨年度末に改訂された「生徒指導提要」にも明記されています。
すなわち、組織的かつ効果的な生徒指導を実践していくためには、教職員の受容的・支持的・相互扶助的な人間関係、同僚性が不可欠であること、そして、教職員のメンタルヘルスの維持と自分自身の状態を振り返るセルフ・モニタリングが重要であることが示されているのです。
また、近年「チーム学校」という言葉も頻繁に聞かれるようになりました。
このことは、教員間の「学校は一つの組織体なんだ」という意識の希薄化や、主任等の他の教員への指導力低下という指摘のもとに登場してきた言葉とも言われます。
その意味で、「チーム」「雰囲気(組織風土)」は、「教室の雰囲気」同様に大切なものだと考えます。
しかも、この「雰囲気」は、「生徒指導」だけでなく、教員の全ての仕事にかかることですから、この4月、職員室の「雰囲気」をどのように創っていくかは、最重要課題といってもよいかもしれません。

どのように関係づくりをしてますか?

もちろん子どもの生活の場であり、学習の場である「教室の雰囲気」も、繰り返しになりますが、大事です。
居心地の悪さは、ストレスを生み、問題行動につながることもあるでしょう。
逆に言えば、学級内に、よい雰囲気を創ること、居心地のよさをどの子どもも感じることができれば、問題は未然に防ぐことができるということですね。
そのために、どんなことをしていますか?
どのように関係づくりをしていますか?

「〇〇さんビンゴ」で楽しみながら、子どもと関係づくり

昨年度の2月。
算数科の研究のため、ある小学校の4年生2学級で、1単元7時間の授業をさせてもらう機会がありました。
2クラス共に30人が在籍しており、どうやって関係づくりをするか考えた末、私が授業1時間目に準備体操として行ったのが、「〇〇さんビンゴ」でした。
今回は、私の自己紹介をすること(私を知ってもらうこと)が目的のビンゴです。
だから、「川島さんビンゴ」としました。
こんな手順で進めました。
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① 大型モニターに「私が好きなもの・こと」を提示します(図参照)。
本当に好きなものもあれば、むしろ嫌いなものもあります。

➁ この中から川島が好きそうなものを9つ選んでマスの中に記入するように伝えます。

③ 全員が書けたところで、ランダムに「川島さんの好きなものは?」と聞いていきます。

④ 正解ならば、「合ってます!」等と言いながら、ちょっと解説を加えたりします。
例えば、「イチゴ」と子どもが答えてくれれば、「正解です!この前、家族でイチゴ狩りに行ってきました。88個食べましたよ」と、そんな具合です。

⑤ 子どもたちは、正解ならば、〇印をつけていきます。

⑥ 順に子どもを指名していきながら、自己紹介をするというわけです。

⑦ そして、ビンゴになったら、シールを貼ってあげたりすると、盛り上がります。
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このビンゴは、授業者である私のことを楽しみながら知ってもらうものですが、「〇〇さん」ビンゴとして、クラスの子どもを順に紹介し合う形で行うと、お互いの理解が深まることにつながります。
同時に、子ども同士の話題が広がっていくきっかけにもなります。

このように、関係づくりでは、まずは、互いのことを知ることが大事ですが、ただ言葉で伝えるんじゃなくって、そこに楽しめる要素が入るといいですよね。
楽しむ活動の中で、お互いを知ること。
そんな関係づくの第一歩ができるといいなって思いました。
ちなみに、算数の授業の単元末では、子どもたちから
「また、川島さんビンゴ、やりたい!」
そんな声が挙がっていました。
算数の内容じゃなくって、ビンゴが印象に残った子どもたちもいたようで。

大事にしたい、人とのつながり、笑顔にする算数「思いやり算」

もう十年も前になるでしょうか。ACジャパンが制作したCMに人を笑顔にする算数「思いやり算」っていうものがありました。
「思いやり算」は、次のような内容です。
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たす(+): 「たすけあう」ことによって、大きな力が生まれ

ひく(-):「ひきうける」ことによって、互いに喜びがわきます。

かける(×): 「声をかける」ことによって、心がひとつになり、

わ る(÷): 「わけあう」ことによって、心が和みます。
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思いやりは、相手のためだけでなく、自分のためでもあるのです。
こんな心持ちを、子どもたちに伝えていくことも、教職員一人一人が、心に留め行動することも「関係づくり」では大事にしたい、そう思いました。
お互いを理解することから、さらに深い関係づくりへ。
いかがでしょうか。

川島 隆(かわしま たかし)

浜松学院大学 現代コミュニケーション学部 子どもコミュニケーション学科 教授
前浜松学院大学短期大部 幼児教育科 特任講師


2020年度まで静岡県内公立小学校に勤務し、2021年度から大学教員として、幼稚園教諭・保育士、小学校・特別支援学校教員を目指す学生の指導・支援にあたっています。幼小接続の在り方や成長実感を伴う教師の力量形成を中心に、教育現場に貢献できる研究と教育に微力ながら力を尽くしていきたいと考えております。

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