2021.04.16
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日本語補習校4年生のクラス開き

新年度を迎え、今期も執筆の機会をいただきました。よろしくお願いいたします。
2021年度は昨年度までの6年生から少し児童が若返り4年生の担任となりました。昨日(4月3日)第1日目を終えたばかり。とりあえずはこのクラスの1日目の様子を実況中継風に記しておこうと思います。

10名のクラスで、現在もリモート授業を継続中。そして、このクラスの特徴は、バイリンガルどころかトライリンガル(3か国語で学び生活している)の児童が半数近くいることです。そういった背景から日本の教科書を使っても日本での授業とは多少違う部分もあります。同時に、児童と教師の関係の築き方には共通のものもあると思います。

ユタ日本語補習校 小学部担任 笠井 縁

かがやいている人になろう

画像はクラス開きで、光村図書の国語教科書副題「かがやき」にちなみ「かがやいているもの・人」を自由に発言してもらった時の記録です。

まず具体的な「かがやいているものって何?」。それから抽象的な「かがやいている人ってどんな人?」ときいて、思いつくままの答えを1枚の紙にそのまま書いていきました。

「かがやく」という言葉自体、どちらかというと文語的で日常生活で頻繁に使う言葉ではありません。一人目の児童が「光っているもの」と上手く言い換えてくれて、そこから具体例が出始めました。

赤い字の「かがやいている人」が出揃った後「4年生の初めの方(前半)は、こういう輝いた人になれるようにがんばろう」とイメージ的なクラス目標にたどり着きました。出てきたものは全て、その子の生活の延長線上にあるはずなので、それぞれの思う「輝いた人」を目指してくれればいいと思います。

「じゃあここに書いてあること全部できそうかな?がんばろう!」と、そこで終わるはずが、重大な事に気が付いた子がいました。

「だけどさ、天国には行かない方がいいよね」。クラスみんなでハッとして「そうだ!死なないように気をつけよう!」と真顔で確認してから笑いました。

「春のうた」は誰のうた?

クラス開きの後は、光村図書の国語から「春のうた」を読みました。1学期中はリモート授業のため午前に授業をし、教材配布はその日の午後の予定です。なので、実は子どもたちの手元にはまだ教科書がありません。画面共有で見せて読むのですが、それを逆手にとって挿し絵を隠し「誰のうただろう」と考えてみました。子どもってすごいと思うのは、私が「ヒント1、人間じゃないよ」というと範囲を狭めるどころか広げていたようで「ヒント2、生き物です」と伝えると「え~『春』じゃないんだ。生き物~?」という反応もありました。「春」がうたっている詩だと思ったんですって!

2人の児童に音読をしてもらった後でいくつか予想を聞いて、私が正誤を言う代わりに挿し絵を隠していた紙を徐々にずらし正解発表。教師の声よりも子どもの声がたくさん聞こえる授業っていいなと思います。だから私が「カエルです」というよりも絵を見て子どもたちが「あ~カエルだ」「やっぱり~」と口々に言ってくれるのが何より。

いろいろな「ほっ」

次に前半の「ほっ」と後半の「ほっ」って同じかな?と考えてみます。

指導書を元に私が想定していたのは、前半は冬を越えて地上に出てきたカエルが思わずもらした感覚と嬉しさの「ほっ」。そして後半は春の花や空の雲を見つけた喜びや何かを発見した時の「ほっ」です。

まずAさんが「最初のは久しぶりって気持ち」と発言してくれました。豊かな感性と表現です。するとBさんがその言葉に反応して、学校が分かれたからずっと遊んでいなかった友だちと「久しぶりに」この間遊んだという話をしてくれました。この発言で「久しぶり」という言葉の意味があやふやだった他の児童にもその意味が実感できたのではないかと思います。

それからCさんが「サンタさんの笑い声みたい」と言ってくれました。アメリカではサンタさんは「ホッホッホー」と笑うことになっています。これは在米の子どもならではですね。既定路線からはかなり外れていますが、初日なだけにここでどう受け止めるかどうかでこの1年の児童たちの発言の自由度が左右されます。受け止め方でへまをして「この先生は教科書通りの正しい答えしか認めてくれない」と思われないように。もとより、流れからは大きくずれますがその子なりに聞いていて考えた事で、私はこういうの嫌いではないです。まずは「面白い!」と伝えて「そう来たか!」とみんなでちょっと笑います。

それから軌道修正。「確かにサンタさんの笑い声みたいだね。サンタさんは冬に来るけど題は『春のうた』。春にサンタさんが来てくれたうたなのかな」と問えば児童たち(発言したCさんも)自ら軌道修正。気持ちはクリスマスから春の風景にパッと切り替わります。

「カエルになった気持ちになってみようか」と呼びかけると、すぐやってくれるのは6年生にはない4年生の無邪気さですね。目隠しをしてからパッと目を開けると明るい地上に久しぶりに出た時の最初の「ほっ」。次に初めて聞いて教科書の挿絵で見た「いぬのふぐり」という花を見つけた所を想像して「ほっ」。日本語にちょっと自信がない子も「ほっ」だけなら参加できます。また「ほっ」に限定することで、流暢な子もその一音に気持ちを込めてくれます。すると、また爆笑ポイントが来ました。「上を見たら何が見える?(本文では大きな雲)」ときくと誰かが「天井!」

「確かにそうだよね~」と、みんなで大爆笑。笑った後で窓に視線を移して外をそれぞれ見てみます。パソコンをずらして自分の家から見える空を見せてくれた子もいました。

算数で言葉遊び

算数では「一億より大きな数」です。「億」は聞いたことがある児童も結構いて、「兆」になるとその割合はぐっと減ります。だからこその自由な感覚で「十兆ってなんか変」と素直な感想。確かに聞きなれず語感としても不思議な感じです。これは純粋に音として言葉を捉えているのだと思います。考えてみれば「じゅっちょう(またはじっちょう)」という言葉には、濁音、促音、拗音、長音が全て含まれているのです!「わかるわかる、そうだよね」と同意した後で、大きな数の位は続きます。「千兆」が出れば「船長さんみたいだね」と言葉遊びが始まり、「社長さんはいないね」と誰かが言ってまた爆笑。兆(ちょう)という言葉一つでこれだけ遊べるバイリンガル、トライリンガルのこの子たち、すごいと思いませんか?

明るい始まり

青空が広がり、午後には気温も20度半ばまで上がったこの日、こうして無事に2021年度の幕が開きました。きっと楽しい1年になると思います。また子どもたちにもそう思ってもらえたら、クラス開きは成功ですよね。

笠井 縁(かさい ゆかり)

ユタ日本語補習校 小学部担任


アメリカの小さな補習校で多文化の中で成長する子どもたちと一緒に学んでいます。アメリカの現地小学校でも非常勤で子どもたちと接し、日本との違いに驚くこともありますが、子どもたちの学びの過程には共通する部分も多いのではないかと思っています。

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