授業で使うものを家から持ってきてもらう時に注意する3つのこと
授業で必要なものを家から持ってくることは時々あります。例えば、算数の授業では、「次の算数の授業で箱を使うから持ってきてね」ということを伝えます。一見、これでいいように思いますが、そうではありません。注意しなければいけないことがあります。今回は3つに絞ってお伝えします。
東京学芸大学附属大泉小学校 教諭 神保 勇児
少なくとも2週間前には伝えること
授業で子どもたちに「次の算数の授業で箱を使うから持ってきてね」と口頭で伝えても、実は聞いていない子どももいます。聞いていたとしても、保護者に伝えることを忘れてしまう子どももいます。すると、前日になって、保護者に「明日、算数で箱がいるんだって」と教える子どももいます。保護者は「そんな、急に言われても無理。先生はもっと前に言ってくれなかったの?」と思ってしまうでしょう。先生は、伝えたつもりになっていても、実は伝えきれていないことがあるのです。
そんなことを防ぐ方法があります。学級通信や学年通信で伝えるのです。少なくとも2週間前には伝えるようにしましょう。その際に伝えておくとよいことを以下に示しておきます。
- いつまでに持ってくるのか期限を知らせておくこと
- 大きさや個数、用途を知らせること
- 紛失したり、破損の可能性があることを伝えること
2と3については、この後お伝えしますね。また、土日などの休みの日を挟むと家庭で準備しやすくなります。
「連絡帳に書かせてもいいのではないか?」という意見もあります。しかし、大きさや個数などの詳しい情報までは連絡帳に書くことができません。あらかじめ、学級通信や学年通信で伝えた上で、連絡帳に「箱を持ってくる」と書かせておくとよいでしょう。
大きさや個数、用途を伝えること
大きさや個数、用途を伝えることはとても大切です。例えば、1年生の算数で箱を使った形の学習で考えてみましょう。この授業では、ティッシュの箱程度の大きさの箱で十分だったとします。しかし、大きさを伝えなければ、引っ越し用の段ボールサイズのものや、手のひらに収まるような小さな箱を持ってくる子どももいます(私は過去に、しっかり大きさを伝え忘れていて、段ボールを持ってくる子どもが何人かいました)。
箱の大きさが授業に差し支えなければ、大きさは問題ありません。大体の大きさが同じくらいになっていると授業で扱いやすいのであれば、何cm程度のものか学級通信などで示しておくとよいでしょう。
また、個数や用途を伝えておくのも必要です。例えば「2年生の水のかさの学習で1000mLの牛乳パックを2個必要です」といった感じです。ここで、気をつけなければいけないことがあります。アレルギーなどがあり、1000mLの牛乳やジュースなどを家庭で準備することが難しい場合があります。その場合は、保護者に伝える前に、必ず一人1個必要なのか、グループで1個あればよいのかを検討しておき、最低限必要な数を決めておくとよいでしょう。
紛失や破損の可能性があることを伝えること
紛失や破損の可能性があることを伝えることもとても大切なことです。例えば、算数で箱を持ってくることを考えてみましょう。サンタさんにもらったおもちゃの箱を持ってくる子どももいます。ただの空箱でも、その子にとってはとても大切な宝物なのです。もし、その箱が紛失したり破損してしまったりすると、思わぬトラブルにつながります。
ですから、家庭で不要になったもの、壊れても無くなっても構わないものを準備してもらうようにしましょう。このことは、学級通信などで伝えておくとよいです。また、子ども本人にも「なくなったり、壊れたりすることもあるかもしれないよ。大切な箱は持ってこないでね」と伝えて念を押しておきます。さらに、当日の朝の会や授業の前に「持ってきた箱は壊れてしまったり、なくなってしまっても大丈夫のものかな?」と確認しておきましょう。この時に、間違って大切な箱を持ってきているようであれば、先生が一旦預かっておくと、余計なトラブルを防ぐことができます。
それでも、授業を始める前や終わった後に「持ってきた箱が壊された」と訴えてくる子どももいます。事前に保護者や子ども本人、クラス全体で確認しているのであれば、箱が壊れたこと自体はあまり大きな問題ではありません。ただ、心配なのは、箱が壊れたことよりも、その子に対する嫌がらせなどが問題になる場合があります。怪我をするなど緊急なことでない場合は、授業の後に「壊された」と訴えてきた子どもに寄り添い、話を聞くようにしましょう。
最後になりますが、返却するかどうかの確認は事前にしておきましょう。学校で処分するのか、家庭に持ち帰ってもらうのか学年の先生や管理職の先生に確認するとよいと思います(家庭に持ち帰ってもらうケースが多いと思います)。もし、学級の様子などを鑑みて、「壊された」と訴えてきた時に、子どもや保護者への対応が難しい場合が考えられることもあります。その場合は、無理に家から持ってきてもらうようなことはしません。学校で必要な数を揃えて子どもに使わせるか、1つ準備して教卓でやっているところを見せるかを検討しておくとよいでしょう。
今回のお話はいかがでしたか?
この内容は、授業スキルアップ研究会でも扱っています。また、授業に関する内容は、『子供がなぜか話したくなる 算数ファシリテーション入門』(東洋館出版社)や『学び合いコーディネートスキル60』(明治図書)もぜひ参考にしてみてください。
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神保 勇児(じんぼ ゆうじ)
東京学芸大学附属大泉小学校 教諭
2020年度はコロナウィルスでの休校期間でオンライン授業を多く行うことがありました。その時に得た、オンラインでも使える問題の見つけ方、子供の自力解決の見取り方、つぶやきの拾い方、発表検討のさせ方など紹介していきます。
「jimbochanのブログ」https://jimbochan.hatenablog.com/
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