2024.03.15
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先生にとってのなんだかとても大切なこと 付箋紙アプリで一人一人がテキストを扱うことの意味はなんだろう

学校では一人一人が情報端末を扱うことで、それぞれの子が作り出すテキストにふれる機会も増えてきていると思います。興味深いのは、アプリの中に電子データなのになぜかアナログ要素のありそうな付箋(ふせん)形式のものがあること。ふだん教室で使われている方も多いと思います。
その扱いにも先生にとってのなんだかとても大切なことはありそうです。

静岡市立中島小学校教諭・公認心理師 渡邊 満昭

どうやったら自分の気持ちや考えを示しやすいのか

教室で私が心がけている事の一つは、アウトプットの苦手な子たちがどうやったら自分の気持ちや考えに気がついたり示したりしやすいのかを工夫することです。
できれば、自分から動き出してほしいなといつも思っています。
そのためには、それぞれの子の内面の理解は大切です。
分かってくれば、バランスを取りつつさりげなく支援したり時には冒険させたりすることもできるのが、教室そして学校というところだと思っています。

今日では一人一人が情報端末を持つことにより、アウトプットという意味で改善できた部分はあります。その子の思いがけない表れを見せてもらえることもたびたびです。
それでも、なかなか表現に結びつかない子どもたちもいるのです。

自ずと書きはじめやすいのが付箋紙の魅力

そもそも付箋紙は、メモとか目印として使うことが多いと思います。
初めて付箋紙に出会ったのは相当前のことになってしまいましたが、レモンイエローが刺激的だったのと手のひらサイズのミニマムさが心地よかったと思っています。
おかげで付箋紙には、個人的にも教育の場でもずいぶん助けられました。

私の場合、付箋はふと浮かんできたおもいつきのことば(テキスト)を一時預かりしてくれる道具です。
手帳でもメモ用紙でも代わりはできるのですが、付箋の場合何か書こうという意欲がなぜか湧いてくるのがすごいと思います。また多くの文具店の付箋紙コーナーが充実していることからも、みなさん何らかのメリットを感じているのだろうと思います。
実はレシート用紙の裏側も私にとっては同様の効果があり、机上にはテキスト付きのレシートが何枚もたまっていたりします。自分の場合は紙の大きさが何らかの意欲につながっているのでしょう。

情報端末上の付箋であっても、大きさや色によってその子の意欲は向上できるのかもとおもいます。「なぜか書きたくなる」をテーマに付箋紙アプリと向き合うのもおもしろいかもしれませんね。
アナログでもデジタルでも、まずは自分からテキストを生み出す事ができると何かにつながる気がします。
もちろんテキストがすべてではなく、画像でもイラストでも付箋の配置や色でもいいのです。大事なのはやっぱり自分からということかなと思います。その様子がその子の自然な姿なのだと思いますし。

付箋紙の操作はやっぱりその子にもやらせてあげたい

十歳の壁とかいろいろな言い方があるようですが、小学生も中学年ぐらいになってくると、自分のことを客観視できる力がつきはじめると言われています。できればそういった見方ができると自分の行動を自分の意思でコントロールできるようになっていくでしょうし、よりよい自分の動きやあり方、他者との関係作りができるものと思っています。
体や心の発達にともない客観視ができるようになるのかもしれないけれど、小学校に入って数年間の体験や授業の感想、振り返り、日記や友達との関わりもトレーニングとして発達を後押ししていると私は思います。自ずとそうなるものでもないような気がするのです。

付箋紙とは、自分の(考えの)一部をテキストとしてずばり自分の外に出して眺めるところに意味があると思います。複数あれば並べたり組み合わせたりまとめたりの操作もできます。一部始終を自分自身も見ているのですから、客観視を体現しているような感じがします。またひらめきや気づきは自分で操作してこそ生まれるものでしょう。自分は思っている以上の考えも持っていると知るのも、客観視の一つと思います。

付箋紙のアプリでは共同編集も簡単です。ただ共同編集は、他者の考えに触れるという目的は達成できますが、アウトプットの苦手な子には操作に加わりづらいこともあると思います。そのままでは客観視のトレーニングとしてはちょっともったいない気がします。
だから時には、自分の好きなものとか自分はそのお題にどう答えるといった、肩のこらないワークショップを開いてみるのもありかなと思います。アナログな付箋でも付箋紙アプリでもよいのです。テキストと向かい合い操作しつつ自分のあり方に触れる経験を、どの子も充分に積ませてあげたいなと思うのです。

渡邊 満昭(わたなべ みつあき)

静岡市立中島小学校教諭・公認心理師・学校心理士・環境教育インタープリター・森林セラピスト


いつの間にか、小中学校全学年+特別支援学級+特別支援学校+通級指導教室での担任を経験し、生徒指導主任+特別支援教育コーディネーター+教育相談担当経験も10年を超えていました。すると担任を離れたとたんに何かを忘れてしまって、担任に戻ってみると忘れていたことに気がつくということがたびたびありました。それはうまく言えないけど何だかとても大切なもの。先生を続けていくための糧のようなもの。
その大切なものについて、自分の実践と合わせお伝えしていこうと思います。

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