新年度に!学級の心理的安全性を高めるアイテム紹介
新年度が始まりましたね。
新しく出会った子どもたち一人一人の様子は見えてきたでしょうか。
ここでは,新年度が始まった時期にこそ使える学級アイテムをご紹介します。
仙台市公立小学校 教諭 齋藤 祐佳
全員が「ここにいていい」と思える学級を
皆さんは,今年度自分の担任する学級をどのような学級にしたいですか?どんな学級にしたいか考えるところから,学級作りは始まります。自分と子どもたちの姿を想像しながら理想の学級を描いてみると,わくわくしてきますね。
私は,1年後に子どもたちも私も,この学級で過ごせて良かったと思える学級にしたいと思っています。そして,そのためには,子どもたち一人一人が,学級で自分の存在を認められていると実感し安心できること,そしてその安心感を土台に自ら挑戦できることが必要だと考えています。
学級の心理的安全性を高める必要性
ところで,心理的安全性という言葉をご存じでしょうか。教育分野に限らず,集団や組織におけるパフォーマンスを向上させる重要な概念として知られており,近年,書籍やメディアで取り上げられることも増えてきました。
学級経営,教育方法等の研究者である大前(2023)は,心理的安全性を,集団の中で,対人的な恐れがなく,安心して発言・行動できる心理的な状態を指すと述べ,社会心理学者のClark(2019)は,学習者の心理的な安全は,質問する,評価を受ける,新しいことを試す,そして失敗するなど全ての学習過程において重要であり,学び成長したいという基本的欲求を満たすと述べています。
加えて,環境が心理的安全性を育むと,自信や熱意,パフォーマンスがさらに高まるとも述べています。先ほど,皆さんが描いた理想の学級を振り返って考えてみると,子どもの心理的安全性を高めることが,理想とする学級の実現への近道となっているのではないでしょうか。心理的安全性を高めることは全ての学級で求められるものと言え,年度初めは特に,私たち教師の働きかけによって意識的に高めていく必要があるでしょう。
求めれば応じてもらえるという感覚を
では,具体的に,心理的安全性を高めるために,私たちには何ができるでしょうか。大前(2023)は,心理的安全性を確保する土壌づくりのひとつとして,児童生徒と教師のリレーションシップを高めることを挙げています。私も,経験則から,子どもと教師の信頼関係の構築は学級経営にとって重要だと考えています。
そこで,私が昨年度に作り,今年度も使用する学級アイテムをご紹介します。それが「先生BOX」です。先生BOXとは,教室に置く郵便受けのようなもので,子どもが担任の先生に手紙を出すことができます。
手紙の内容は指定がなく自由で,子どもが直接担任の先生に言えなかったことや,実は話したかったことなど,内容を問わずに書くことができます。手紙が届いているかは担任が確認し,放課後に返事を書きます。
教師は手紙を通して子どもの話を聞くことができ,教師と子ども個人とのやり取りができるのです。この先生BOXを教室の隅などに常時置いておくことで,子どもが求めるタイミングで教師に気持ちを伝えることができ,それに対して教師も応じることができます。
受容,共感する機会を生み出すことから
ご紹介した先生BOXでは,子どもが話したいことを話す場ができます。担任の先生は,子どもにとって「みんなの先生」でありながらも,「わたしの先生」であるのではないでしょうか。きっと,子どもは自分のことを見て欲しい,認めて欲しいという気持ちを持っているはずです。私たちは日々の授業や業務に追われ,子ども一人一人とじっくりやり取りする時間がないのが実情です。
しかし,先生BOXでは子どもに返事を出すまでに時間の余裕ができるので,日々の業務に合わせて返事を書くことができたり,見えていなかった子どもの一面が見えたり,場合によってはトラブルも見つけることができたりします。それらは,いじめの未然防止や早期発見にもつながります。ぜひ子どもとのリレーション作りに役立て,子どもの気持ちを受容し,共感する機会としてください。そして,高めたリレーションシップを土壌に,学級の心理的安全性を高めていきましょう。
私も学級の心理的安全性を高め,素晴らしい1年となるよう,日々を大切に過ごしたいと思っています。引き続き実践の報告や,学びの発信をしていきます。つれづれ日誌にて再びお会いできますと嬉しいです。どうぞよろしくお願いいたします。
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齋藤 祐佳(さいとう ゆか)
仙台市公立小学校 教諭
宮城教育大学教職大学院にてp4c(子どもの哲学対話)
『初任者教師のスタプロ ハッピー学級経営編』(東洋館出版)にてコラムを執筆。
note(https://note.com/haru_
日本教育心理学会所属。
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