2023.09.04
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記述式問題の指導法を考える~換言型問題~

小学校では多くの学校で業者が作成したテスト、いわゆるワークテストというものを利用しています。ワークテストには、空欄補充の問題や素材文に書いてある内容を選択肢から選ぶ問題といった短答式の問題がある一方で、記述式の問題も用意されています。

こうした記述式の問題に対する解答率の低下が、全国学力・学習状況調査においても指摘されることが多くなっています。記述式の問題の中でも換言型といわれる問題にどうやって取り組めばよいのか、そしてその取り組みが波及する効果について考えてみたいと思います。

浦安市立美浜北小学校 教諭 齋藤 大樹

改めてワークテストの記述式問題を見る

記述式の問題にはいくつかの種類がありますが、代表的なものに因果関係を問う問題があります。「どうして~ですか」と理由を問われることに子どもたちも慣れており、理由を答えるために、語尾を「~だから」にすることをしっかりと理解している子が多いでしょう。 

また、教科書を見ながらワークテストに臨む単元もあります。長い範囲の素材文から出題することができるので、文章の要旨や主題を大まかに捉えて答える問題などが出されます。序論・本論・結論の流れがきちんと理解できているか、クライマックスでの主人公の成長から主題を読み取ることができているかなどが問われることが多いです。 


換言型の問題について

こうした記述式の問題において、特に注目している種類の問題があります。それは、換言型と言われる言い換えの問題です。傍線部の部分を詳しく言い換えることが求められ、主に「どういうことですか」や「どのようなことですか」という文で問われます。 

因果関係をつかむ必要がある理由型の問題や段落構成を理解する必要がある主張や主題を問う問題と比べて、換言型の問題は比較的答えやすい問題です。実際に多くの児童が何らかの文章を書くことができます。ワークテストには模範解答が付属していますが、多くの子がその模範解答とだいたい似た部分を書いてきます。 

しかしながら、時折余計な部分まで記述する児童がいます。確かにキーワードとなる言葉は書かれているし、模範解答とほぼ似たような部分をまとめているけれども如何せん無駄な部分が多い場合があります。 

こうした解答を採点する際に、採点の許容をどのようにするかを迷った経験があります。答えは書いてあるのだから丸にすべきか、余計な部分が多いから部分点にするか、いっそのこときちんと言い換えられていないので間違えにするかという悩みが発生します。多くの先生方が、その問題に応じて採点するのでしょうが、子供たちはどうして余計な部分まで書いてしまうのかということに着目することが大切だと考えています。 


問題に正対しない子どもたち

比較的易しいはずの換言型の問題をなぜ言い換えられないのでしょうか。これまで担任した子どもたちの様子を見ていると「そもそも問題文をきちんと読んでいない」という児童が多いことに気づきます。短い問題文ならまだしも、問題文が2行を超えると、とたんに読み飛ばしをしてしまい、何となく問いを理解した気になったまま解答していました。これではきちんと問題に対して正面から向き合っていないまま解答することになります。 

仮にテスト直しをしたとしても、完全な誤答ではない子どもたちも改善する気持ちが起きにくいと思います。教師側としてもついつい見逃しがちになってしまっているのではないでしょうか。 


普段の授業での換言力の鍛え方

傍線が引かれている部分や問題文を正しく言い換えるために、こうした文を部分ごとに分けて言い換えていくことが大切だと考えています。読点ごとや意味のまとまりごとに分け、その部分と似た意味の文を探したり、主語を補ったりしていきます。こうすることで、余計な部分まで書いてしまうことが防ぐことができます。多くの方がすでに行っている指導技術でしょうが、きちんと言い換えるための大切な手法だと思います。 

国語科の学習計画を立てる際に、子どもたちと共に「~はどういうことだろうか」という換言型に似た問いを考えることがあります。こうして子どもたちが自ら立てた学習問題に対して一つ一つ言い換える経験を積むことが換言型問題に慣れる第一歩になります。 


換言する力が他教科へと

筆者の言いたいことを言い換えて要約する経験は、国語科だけでなく他の教科などにおいても重要な力になります。「国語力がある子は他の教科も伸びる」という言葉が小学校現場ではよく聞かれます。社会科の同じ資料を読んでも、きちんと書かれている内容を把握している児童とそうではない児童に分かれてしまいます。こうした差を生むのが、換言する力だと感じます。 

書いている内容を分かりやすく言い換えて理解し、内容理解を深める。感覚や「なんとなく道徳的にこれっぽい」という主観的な見方で文章を噛み砕くのではなく、文章を書いた意図を正しく読み取る力をきちんと育てていくことが大切だと思います。 

終わりに

子どもたちになんとなく解答させるのではなく、一つ一つ言い換える意識を大切にすることが重要ではないかという話をさせていただきました。昨今、文章全体を俯瞰的に読み取ることが流行していますが、時には一文ずつ丁寧に精読する経験も大切にさせてあげたいと思っています。今回もお読みいただきありがとうございました。 

齋藤 大樹(さいとう ひろき)

浦安市立美浜北小学校 教諭


一人一台PC時代に対応するべくプログラミング教育を進めており、市内向けのプログラミング教育推進委員を務めていました。
現在は小規模校において単学級の担任をしており、小規模校だからこそできる実践を積み重ねています。

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